7月29日 午前4時47分 北関東上空
前席の
「霞ヶ浦ですよ」
無線で
「琵琶湖に次ぐ日本第二位の広さを持つ湖ですよ」
樋渡の声は続く。百里基地は霞ヶ浦のすぐ北に存在する。現在
「拉致されて陸自のUH-60Jに載せられて百里に来た時に真っ暗な中見ました」
と鷺野はわざわざ、マスクを口に寄せて答える。
「あっそうか、、」
と樋渡。
「冥土の土産に遊覧飛行でもと思って」
「・・・・・・」
「酔いましたか?」
「大丈夫です。その手のジョークはもうジョークではありません」
「高度計の見方はわかりますぅ?」
「さっきはくるくる回ってましたが、なんでしたっけ、左から速度のVで、真ん中が方位の方向で、右のが高度フィート表示でしょ」
「そうです、そうです航空業界全世界共通の計器の配置です」
「フィートだと、メートルと違って感が狂いますね」
「最初はね、慣れるとどってことないですが1/3にして考えてください。何が言いたいかと言いますと、高高度の減圧は問題ないと思いますけど、3000メートルでマスクつけないと高山病になったり酸欠で失神しますよ」
「えーっと一万フィート」
「そうです」
鷺野は無言になりがちだ。様子見がてらに樋渡が話しかけているのがわかる。
「丁度地平線上に太陽が出てきて朝焼けが綺麗ですよ」
と樋渡。
「そっちは前が見えるかも知れませんが、私の席からは横しか見えませんので」
「横からでも見えるでしょ」
「冥土の土産にします」
「ちょっと進路を変えて、富士山を見てきますか?」
「止めときます、それほど愛国者じゃないので」
お互い変なテンションだ。減圧のせいかもしれない。予圧されていない戦闘機に乗るパイロットは定期的にこのテストを受ける。
「東京湾をかすめて相模灘に出ます。右手に大都会東京と富士山です」
「国を守るとか言って東京だけ守るのは民主主義に反してますよね」
「人口比だと民主主義かもしれませんよ」
と樋渡の返事
「あぁなるほど、、、やっぱり私はリベラルすぎるかもしれません」
「陸自の第一連隊?。練馬でしたっけ?」
「そうです。出身、東京ですか?」
「ゆ、ゆ、ゆ、USAです」
と樋渡。
「えっ」
驚く鷺野。
「宇佐、九州の大分県です」
「・・・・・・・・・・・・」
「昔は、旧海軍の宇佐空って言って、宇佐海軍航空隊ってのがあったんですよ、自衛官ならだいたいご存知かと思いますが、目視だけの近接戦闘だと二人できっちり索敵したほうが有利です」
「わかります」
「時計に見立てて前方から12時で真後ろが、、」
「6時、了解です。敵機はバンデッドですか?それともボギー?」
「どっちでも、多分
「じゃあ、フランカーで、第4世代最高の戦闘機ということで敬意を評して」
「了解、千葉の端っこですよ」
と樋渡。
「意外に戦闘機も結構揺れますね」
「まぁ旅客機に比べると小さいですからね。そろそろ、ルックダウン能力が足された”改”のレーダーAN/APG-66Jの能力を発揮しますか、、」
レーダー画面は後席の鷺野のほうが画面は大きい。
鷺野は全然弄れないが、樋渡が索敵高度のモードを変えているらしい。
後席の鷺野の眼の前の画面にブリップが三から四個付いていた。
敵意とか、死を思うとか実感があるのかないのかわからない。それぐらい緊張している。
数字も横に出たがマイルかノットかフィートか鷺野にはわからない。
「レーダー・コンタクト。距離およそ、70キロ、相対してます」
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