7月28日 午後4時5分 官邸

 佐竹三曹とみさおあかね士長が来邸したので鷺野から少し距離をとっていたサイバーセキリティ関連の社員が大声を上げた。

「やりましたぁ!」

 鷺野にも近寄らず、ずーっとノートPCに齧りついていた社員だ。

「どうした?」

 副総理がスクワットの競争から一転興味を示し尋ねる。

「Torを挟んだ後のIPアドレスを割り当てました」

 おおっと対策室内がどよめく。監督官庁の総務大臣の表情が一気に緩む。

 鷺野と山川はまだスクワットの最中。

 とくに完全に屈伸する山川のスクワットの数の歩みは遅い。

 山川が額に汗を光らせながら、言う。

「先を越されたな、鷺野、やっぱりお前も含めてこの三人は役立たずだ、ひゃあーくにぃじゅういち」

「まだ、始めてもいませんよ。167」

 流石に鷺野のペースは落ちてきた。

 IPアドレスを割り当てた社員がよどみなく、4つブロックに分けられた0から255までの数字を意気揚々と高らかに謳い上げる。

 警察庁長官が突っ込み気味に意気込んで吃りながら言う。

「早く、住所を調べろ」

 IPアドレスでサイトを使えば、一般人でもほぼ大まかな住所市区町村あたりまで、警察や公的権力を使えば、その家のその一台まで割り当てられる。

 よくあるIPアドレスを調べられるサイトだけで住所を調べた社員が続けざまに叫ぶ。

「埼玉県東松山市の付近です」

「直ぐに埼玉県警本部、所轄の警察署に連絡、警邏中、一番近い交番、駐在署の警察官の嫁でもいい、だれでもいいからとにかく走らせろ。最優先だ」

 と立ち上がって警察庁長官。

「ハイ」

 警察庁関連の官僚が対策室から飛んで出る。

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