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 <探龍たんりゅう>は十分に干した藁を積まれた龍舎から引っ張り出された。龍舎からでるのは相当久しぶりだ。

 0と1だけの世界で引数を龍舎の龍舎員からもらうと、それを大きな翼の戻り値として返すDwing(x)関数をぶるっと始動させる。

 そして0と1で描かれた朝焼けの空に小さな腕とは別の大空を覆わんばかりの爪の生えた翼を伸ばす。

 このゼロイチの世界に日数や朝や夜はない。

 一秒単位名百万Hzの周波数で出来た龍舎員は思わず、<探龍>の勢いよく伸びた翼からける。

 <探龍>は、龍ではあるがまさに鳥の如き翼龍である。

 耳の脇まで大きく裂けた口をあくびをするため開き、上を向くやちょっと息を呑み、それを思いっきり炎をともにはいた。

 そして、爬虫類のように無様に背骨をよじらせ、大きな足を使い走ると、一度大きく羽ばたくや、強烈なダウンウォッシュが0と1で作られた地表を襲う。

  龍舎員はその風におあられ吹き飛ばされるものまでいる。

 <探龍>は飛びたった。

 0と1の世界をD(x)関数の力だけで飛んでいく。

 そして、同じくファンクションDeyesplus(x)に血糖値としての引き数を与えると。

 まぶたがもう一対、頭部の両脇上部に出来るや、それが開き、目玉はぎろっと周囲を見回した。

 翔ぶために一対の目。探るためにもう一対の目。

 <探龍>は四つ目でこの果てしなく広大なネットの世界をと飛び探っていく。

 

 誰も隠れることは出来ない。

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