　大昔の祖先のDNA配列とRNA配列の一部をそっくり2進法で再現し16進法で書き直されたナイト・チャイルドは電子の海をいや、電子の空間を超高速で彷徨（さまよ）って、いやすっ飛んでいた。

　世界はオンとオフ。

　ゼロとイチ。

　陽（よう）と陰（いん）。

　在（ざい）、不在（ふざい）。

　白と黒。

　しかも、さっきまでゼロだったものは、一秒間に何千万回という周期でイチに切り替わり、又ゼロ戻る。

　情報と呼ぶべきか、只の明滅と呼ぶべきかこの世界では誰にも分からなかった。

　呼び方そのものに意味がなかった。

　ナイト・チャイルドは宿主のDNAとRNAの刻印が押されているだけで、もう既に新しい生命だった。

　一最初の行に書かれた関数、機能は、自身の複製を作ること、そしてそこに若干の偏差をいれること。

　これで、ナイト・チャイルドはナイト・チルドレンになった。

　そして、新しい生命（いのち）から真の生命（いのち）に。

　情報の引き継ぎを生命（いのち）と呼ぶならば。

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