プロローグ

  沖縄本島と宮古島の丁度中間海域上空。


 一機の新聞社の取材ヘリ、"みらい"が現場に到着したのと同時に、どんどん他社の取材ヘリ、公共放送の委託取材ヘリがどんどん群がるように集まってきた。

 一番最初に到着した"みらい"の取材ディレクターは、東京からのキューを待たず、同乗している男性アナウンサーに喋らせ始めた。

 カメラマンはヘリからは身を乗り出し、真下の巨大な空母を撮影しだした。

 空母は確かに大きかった。

 偶然にも午前11時半からのニュースの放送開始と同時だったが東京のキャスターの振り同乗のアナウンサーの喋りだしのほうが早かった。

「現在、私が飛行しています空域は丁度、沖縄本島と宮古島の中間に位置する海域上空であります。今までみたこともない巨大な船が、軍艦が、空母が悠々と中国が第一列島線と呼称するこの沖縄本島と宮古島を結ぶ線を越えて太平洋に進んでいきます。

空母の名前は、遼寧りょうねい。排水量は約5万トン。全長は300メートル、ほぼ大阪の日本最大ビルであります<あべのハルカス>を横に浮かべたのとかわらぬ長さを持ち、艦首には巨大なスキージャンプを思わせる艦載機を上空へ打ち上げる発射台を保持しております。遼寧の甲板には中国がJ-11または、殲撃11と呼ぶ、灰色の大型の戦闘機が私が確認できますだけで、およそ6機確認できます。まさに威風堂々、太平洋の大海に向けて遼寧は進み続けています。周辺海域または空域には、我々取材陣だけで、一切の米軍、米海軍の姿は見えません。又海上自衛隊の護衛艦、海上保安庁の艦船すら確認できません。現在、総理大臣は外遊から急遽自衛隊機で帰還中。副総理ならびに官房長官が緊急対策室を立ち上げたとの情報ももたらせれておりますが、今の所一切のコメントが政府から出されておりません」

 ここで、現場からの映像が切り替わり、画面上では女性キャスターが喋りだした。

「それでは、急遽スタジオにお越しいただいた軍事評論家の糸長いとながさんに伺ってみましょう。一連のこの出来事を私達日本国民はどう受け取れば良いのでしょうか?」

 とそこまで、女性キャスターが言い、初老の怪しげな軍事評論家が喋ろうとした瞬間TV画面はブラック・アウトした。

 それはその一番に到着した取材ヘリのTV局だけでなく公共放送から全チャンネル同じだった。

 QVVCの通販専門チャンネル、教育テレビ、BS放送、CSのペイテレビも同じだった。

 しかしブラックアウトは長く続かなかった。

 画面が復活すると、真ん中には王冠を被った骸骨がたった2コマのGIFFアニメのように首をカクカクさせると、こう言った。

「アイ・アム・ナイト・キング」

 それを、足立区で観ていた無職の家事手伝いが洗濯物を干しながら言った。

「まだ、昼じゃん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る