花冬月見の神頼み

つちろー

プロローグ

 友達百人できるかな、なんてガキの頃よく歌わされたものだが、改めて冷静に歌詞を見てみると子供なんかには到底不可能な内容であることが分かる。そりゃ童謡なんだから、多少理屈に合わないところがあっても見なかったことにするのが普通の対応なのだろうが、実際に友達百人つくるなんざ大人でも難しいことを物心ついたばかりのガキがいっちょ前にこなそうなんてまあ生意気なもんである。


 子供にいわゆる「夢」を見せるための歌詞なんだろうな、と大人の視点から見ることも多少成長した今ではたやすいが、この歌を歌っていた当時、本気で右も左も分からなかった俺にそんな意図を察することはできなかった訳で、その歌に「夢」を持たされたまま中学、高校と来てようやく現実の過酷さと孤独の絶望感を味わっている訳である。


 友達というのは、想像以上につくりにくいものであった。努力なんかしなくてもやすやすと交友関係を構築していく同級生を尻目に、いくら努力しても一人として友好的な人物を見つけられなかった俺はそろそろ諦めようと高校2年の夏にクラスメイトと話すことをやめてしまった。


 これまで努力で業務的な会話は何とか出来ていたところ全く話さなくなったので、不審に思われたのか自然と人に避けられるようになり、こちらも意図的に人を避けているためいよいよ孤独になる。


 半分は自分が諦めた結果なので受け入れようと必死に自分に言い聞かせる日々だが、人と話す機会が極端に減るというのは人間にとって精神的にくるのか、最近大分痩せてきた。いっそこの方法を名付けて「会話減少ダイエット」として世に広めるのも悪くない気がするが、人々の体重が減るのと比例して寿命までダイエットされては考案者の俺としても心苦しいのでこの案は自分の中でとどめておくことにする。


 どうしてこうなってしまったんだろう・・・とらしくもなく後悔したりしてみる。よく考えるとガキの頃あの歌に夢を与えられなければこの現状を嘆くこともなかったのではなかろうか。俺に友達がいないのは当たり前で、俺が一人でいることも普通なんだと納得することもできたのではないだろうか。なんて思って当時の音楽教師を呪ったこともあった。しかし人をいくら憎んだところで現状は何も変わらないし第一俺がこうなってしまった大きな責任は俺自身にあるのだ。


 ・・・俺の中では、もはや万策尽きたという状況だった。


 そんな時――


 あいつはやって来た。

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