4話目
「人間かどうかわからない……? あはは、変ですね。自分が何かわからないなんて」
ディスプレイの画面を切り替えて、サーモグラフィの画面を開く。
球体関節人形がこの遊園地で動く程度で生まれる熱と比べて人間の体温は高いことはデータを見てわかっている。
「……人間ですね」
(ではなぜ彼女はわからないと言った? 後遺症? 他の人間と関わったことが無い? いや、そうしたら言語を習得できていることが矛盾する。第一彼女が着ていた服は汚れていなかった。記憶が混乱しているというなら説明がつくか……?)
悶々と考えるけれど、結局は人間だろうということで片を付けた。
気が付いたら彼女は何処かへ移動していた。
監視カメラの映像を見て探してみると、すぐに見つかったのだが――
(あれ、これはマズイ状況かな?)
人間を殺す機能がついているのだから、反応するとは思っていたが。厄介なことに周りの球体関節人形たちに信号を送って停止したらしい。
何事もなく壊れてくれれば良かったのに。
「あーあ、まぁ、彼女が敵と認識されるとして? さすがに得体のしれないものに近づくなんて……あれー?」
予想と反して“サーカス”テントに入っていくではないか。
演者、観客すべてが球体関節人形という、もう人間の身で入るなら自殺しに行くとしか思えないくらいの場所をチョイスするって中々運がない。
「殺されちゃうよね……。うーん」
彼らにプログラミングされた敵識別のように、僕にプログラミングされているのは人間を生かすことだ。彼らを守り、その中で壊れることも厭わない。
何が正しいのか、僕にはわからなかった。
しかし、後でつかえるかもしれない。
そう考え、僕はテントへ向かった。
幸いなことに、僕からしたら目と鼻の先くらい近い位置にある。
❄❄❄
僕がついたころは、ちょうど彼らが敵を感知したときに立てる起動音みたいなのがテント中に響き渡ったころだった。
敵意を向けられている当の本人はどこ吹く風で、さして気にした様子もなくテント中を見回していた。
一体の球体関節人形が殴りかかると、漸く状況を理解したのか、焦った様子で後ろを振り返るも既に入口はふさがれて囲まれていた。
「さてはて。警備システム起動」
『電流を流す目標を選択してください』
監視カメラの映像みたいな画面に映る、彼女の周りにいる球体関節人形を選択し、決定。
落雷のような音……といっても原理が同じだからさして変わらない。一瞬にしてマルコゲになって転がった球体関節人形たちを唖然とした様子で見る人間の女の子。
「あなたは、誰?」
一瞬だけ、僕と目が合ったけれど二コリと笑ってから僕は踵を返して舞台裏へと歩いて行った。
面白くなかったら、彼女を殺そう。
たとえ最後人間だろうと、何れ滅びる存在。僕の知ったことじゃあない。
見た所弱そうだし、見どころがあるとしたら人間特有の“感情”というやつだ。
ここのラスボス的な存在のヤツを倒せそうもなし。暫くの間の暇潰しくらいにしか使えないだろう。
ま、途中で死ねばそれまでだけど。
☩☩☩
お久しぶりです……。更新が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。_(._.)_
人間の女の子の口調が分からないです……。イメージ的に某アニメのレイ○ェル・ガードナーな感じで書いてしまっていますね。
合同作品というわけで作者オリジナルのキャラと口調が変わってしまうことも多々あると思いますが、そういった場合は教えていただけると幸いです(;'∀')
行き当たりばったり ~偶数話~ 雪城藍良 @refu-aurofu2486
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