第1章 最終話 エクレツェアへ
予章 さあ、行こうか。最高の世界へ
ここは正方形のお城の上。南の塔の上は平らで真っ白だった。
よしきたちが荒らしたお城も見事もとどおりになって、結局、この国で起きたことはほとんどがなかったことになってしまった。
でも。一つだけ収穫がある。
ミーティアがスミレに声をかけた。
「本当にエクレツェアに行くきっすか?」
「ええ、だって私ってまだまだ弱いから、あんたたちのことろで修行させてもらうわ」
彼女を心配して、ハルトとクロカズが彼女の前に膝間つく。
「ひゅ〜、本当に行ってしまうのですね……」
「ウザいことは言いません、どうかご無事で」
アカリが大きな着物をきて歩いてくる。
「わしもいつかエクレツェアに行くからな、楽しみにしているがいい」
「お見送りに来てくれて、ありがとう」
でも、彼女が一番来て欲しい人が来ていなかった。
「お鷹の胸さまは?」
やはり、彼女はこない。もうスミレは一人で生きていけるはずだから。
少しだけ待ちたかったが、彼女は振り向いた。
「さあ、いきましょうか」
アカリは心配そうに、
「お鷹の胸を待たなくていいのか?……」
すると、彼女はにっこりと笑った。
「いいのよ、べつに。また逢えるんだから」
そこにコーデルの声がかかる。
「準備できたよ、集まってね」
彼の前には巨人の服が入るくらいの大きなクローゼットがあった。
向こう側には電流が渦巻き、光で満たされた、行き着く先がどこかまるでわからない世界。
『クローゼットは旅の扉』その言葉の所以だ。
その前にはサカ鬼や龍矢、スミレ、ミズキ、も集まっていた。
二人もそこに集まると、スミレがミーティアに尋ねる。
「鏡さんは?」
「また影武者が必要だって先に帰ったっすよ」
すると、気がつけばよしきが皆の前に大きな仁王立ちをしていた。
彼は大きく息を吐き、みんなに伝える。
「今回の任務、みんなよくやったな。これでこの世界ともエクレツェアが接続され、大きな力となって発展していくだろう。皆のおかげだ」
コーデルはそのことに慣れた様子だったが、他の皆は嬉しそうに少しだけてれ始めた。
しかし、よしきはそこに喝を入れる。
「だがしかぁーし! まだまだ成長の余地はある。それはわかっているな?」
その場の全員が頷くと、よしきも頷いて、
「よし、じゃあかえろう」
あっさりしすぎだろ。
と、言ってみても誰も気にしていないようなのでいいか。
皆がクローゼットの中に入ろうとした。
「待ってくれ!」
そこにキシヨが慌てて駆けつける。
「ま、待ってくれよ! 置いてかないでくれ!」
スミレが彼を叱った。
「急に何よ、あんたはこないんじゃないの!?」
「俺も連れて行ってくれ!」
コーデルが、ほぅ、と感心してよしきを眺め。それをよしきは手で払いのけるように動かす。
後ろからマリが駆けつけて叫ぶように言う。
「キシヨ! 帰らないっていうの?」
よしきは息が上がっていたのを抑えて、みんなに伝えた。
「おれ、間違ってたんだ! おれの名前はキシヨじゃなかった!」
スミレが理解できずに、
「何言ってるの? じゃああんたは誰よ!?」
「おれは、キシヨじゃない、白堂太一だったんだよ!」
マリが驚いて口を隠した。
太一は必死で訴える。
「おれ、何でもするからさ! 一番弱い世界の出身でも絶対に負けないくらい強くなるから! だからお願いだ! おれをみんなの仲間にしてくれ!」
太一は大きく頭を下げた。
「頼む!」
よしきは鼻から大きく息を吐き出すと、少しだけ仕方なさそうに言った。
「何言ってるんだ。お前はもう仲間じゃないか」
コーデルもクローゼットに足をかけて、
「そうだよ、君がよしきに行ったセリフはかなり楽しかったけど、あれくらい僕らの世界じゃ日常茶飯事だからね。気にしないほうがいいよ」
サカ鬼と龍矢も頷いて、「「うん、気にしないほうがいい」」と合わせると互いをにらみ合った。
よしきが手を広げるとどうでも良さそうに、
「ま、気にしなくていいってことさ」
そして彼はクローゼットの先に踏み出すのだった。
「さあ、行こうか。最高の世界へ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます