エクレチアン西部劇編第一幕 エクレツェア本部機構編
第2章 1話 大学演説@エクレツェア
詠嘆のエクレツェアとは、いったいどういう意味だろ。
皆様は、どうお考えになりますか?
ある人は、この世に生まれた悪と説く。
ある者は、この世に生まれた神様と説く。
奇妙奇天烈摩訶不思議。彼にできぬなら悪にも神にもできぬだろう!
さて、今回のゲストはこの方だぁ!
エクレツェアで最も巨大なチームを運営する優れた男の代表格!
我が大学の最も栄誉ある人間に選ばれた、異世界で最もナウい男!
詠嘆のぉぉお、エクレツェアだぁあ!
トントン、ぼーぼー。
スピーカーから奇妙な音がなると、巨大なコロシアムのような講義室の中央にスポットライトが当たった。
『マイクテスト、マイクテスト。お招きいただきまして、ありがとうございます! ですが一つ言っておかなければならない事が一つあります。どうやら私はこの大学で最も栄誉ある人間に選ばれたそうですが、わたしは大学を卒業していませんし、ましてやあなた方がいうような優秀な人間でもございません。ただ、わたしはこの大学に招かれるほど少しばかり有名になっただけにすぎないのです』
そこにいたのは黒一色のこの上なく姿がうるさい男。彼は己を取り囲む階段状の席と生徒たちに視線を送った。
しばし観察すると苦笑って。
『しかし、我々は有名な人間や金を持っている人間を優秀だと言いたがります。それは火を見るより明らかでしょう、今この場にわたしがいるのですから』
すると彼は指をあげて、
『では、まず手始めに多数決を取ります。もし、あなたの前に学歴もなく、職業もなく、金もない人間がいたとすれば。あなた方はどう思いますか?』
『努力を怠ったからだ、という人は手をあげてください』
『自業自得だという人間は手をあげてください』
『そんな人間と比べてわたしは努力しているという方も手をあげてください』
『彼を社会のゴミだと思った方も手をあげてください』
『今まであなたたちが残した成果は全て努力によるものだという方も手をあげてください』
『自分は彼より優秀だと思った人間も手をあげてください』
そう言って手をあげさせると、教室のほとんどが手をあげていた。
『ありがとうございます。もう下ろして結構です』
彼は天井の垂れ幕を指差して、
『あれを見てください。このわたしのスピーチの演目が、成功者の格言・彼はいかなる努力をしたのか? だそうですね』
『そうです、今までわたしのやってきた成果は全てわたしの努力によってなされてきたことです? 今まで健康なのも? 金があるのも? 仕事があるのも? 尊敬されるのも? 賢いと思われるのも? 成功者だと言われるのも?全部わたしの努力のおかげですかぁ?』
『……実に心外だなぁ』
彼は指を鳴らす。するとその途端に垂れ幕が炎上して落下してきた。
目の前に落ちてきた垂れ幕を踏み潰して大きく叫ぶ。
『わたしは、これまで一度も成功の為の努力というものをしてきたことがない! 今までずっとだ! だからこそ言える! 努力したというのは、苦しんできたものが成功しているものを同じ仲間だと思い込むことによって起きただの妄想だと! だが、現実は違う! 成功している人間と、それを努力したからだという人間とでは全区別のジャンルの人間だ! なぜだかわかるかぁ?』
すると詠嘆のエクレツェアは突如として口調ががさつになった。
『俺はなぁ、お前らみたいになんでも努力してきたと思う人間が大っ嫌いだからだよ! そういう奴に限って、人を蔑むクズだからだ!』
『いいかぁ? お前らのやってることはどれ一つ取っても努力なんかじゃねぇんだ! お前らより苦しんでる奴らなんざいくらでもいる!』
『結果がでねぇなら努力じゃねぇだ? だから俺は言ってんだろうが? じゃあお前は努力してその程度なんだな、と!』
『他人を数秒見ただけでよく努力云々がわかるもんだなぁ! だからカスって言ってんだよ!』
講義室は騒然とした。
異世界で有名な、あらゆる情報媒体が取り扱うほど有名な詠嘆のエクレツェアが目の前であれほど激怒している。
しかし、彼の言っていることはそれを聞いている彼らには負け犬の遠吠えにしか聞こえず、成功者と呼ばれる人間が言っているものとは思えなかったからだ。
そこでよしきは言った。
『っさて、冗談はここまでにしようか。みんな、悪かった。今までのは全て演出だ。なにせこの講義はあらゆる所で行う為にエンターテイメントを追求して作られている。だから、悪く思わないでくれ』
すると、彼はリモコンで後ろに巨大なスクリーンを出し、映像を流し始めた。
『今から話すのは、石を運ぶとある男の話だ。俺が思うに父親と母親の次に優秀な人物だが、別に、これを聞いて今までの人生で培ってきた意見を変える必要はねぇ。だけど、これはさっき言ったエンターテイメントだ。楽しんで聞いてくれ』
『なにせ、俺にお前らを救ってやる必要は何一つねぇんだからよ』
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