第31話 序章 リプレイ2
序章 リプレイ2 親愛なる友へ
『記録データを再生しますか』
yes no
yesyesyesyes! イェス以外ない。
『スタンバイします』
太一の脳裏にはモダンな都市が描かれ始めた。
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ここに来てようやく新しいキャラクターが出てくる。
キャラクターの名前はキシヨ。この世界で最も勇敢な男さ。物語によると、グレンシアと戦おうと言い出したのもこの男らしい。
彼もまた主人公であるのだが、この辺がまた旧約聖書をラテン語で朗読するくらいにややこしいため、明らかになるのを待つとしよう。
そんな彼に、先ほどの青年に太一はどのように感化されるのか。楽しみでならないね。
時は進み、瓦礫だらけの街は変わった。
太一の顔は希望に満ちていた。
この頃いいことばかりだ。
極東の国を支配下に置いたグレンシアはこの国に最先端の技術をもたらし、どの先進国よりも発展した国に育て上げたのだ。
街並みは一年前の診療の時が嘘のように整備され、カラフルな壁、清潔な道路、ユニークに満ち溢れた極東の国の首都は簡単に以前以上の活気を取り戻していった。
青年も身なりも整え、汚れていた白のシャツは新しいのを買い、黒のスーツパンツで清潔感をアピールする。これが今のトレンドだ。
そんな時、彼に出会った。
「よう、太一。遅いじゃないか」
声をかけた彼は、白が基調のモダンなカフェテラスに腰掛け、上品さを顔にたたえていた。
その顔全体のしなやかな曲線が、垂れがちな眉とともに少し情けなさも感じさせたが、目つきだけは芯の通った力を宿していた。
青のナプキンや、白のワイシャツ。いたるところにブランド名が刺繍された安定したセレブでおしゃれな姿。
だが、そんな彼も太一が声をかけると、いとも簡単に幼さを飛び立たせる。
「ようっ、キシヨ。待たせたな、5分ほど遅刻した」
「そんなのどうでもいいんだよっ! これ見てくれ!」
キシヨが大喜びで見せびらかしたのは、ロボットが描かれた青いハンカチだ。
「これは人気アニメ『バーストアップ』と『オメガバースト』のコラボ作品! 二つのロボットアニメが手がけた最新鋭のハンケチーフだ! みよ、値段一枚千円!」
太一は呆れて、
「おいっ、千円のハンカチなんて聞いたことないぞ」
キシヨは大声で見せびらかした。
「ハンケチーフだ! これだけは譲れん! それに、見よ! このハンケチーフはグレンシア最大の科学力をもってして生まれたんだ!」
そう言うと彼はハンケチーフをフリスピーの要領で空高く投げ飛ばし、そして説明を始める。
「これはな、表と裏の生地の間に精密な部品と高度な刃を仕込むことによって生まれた、日本の忍者に感化されてデザインされた最新ハンケチーフ型手裏剣なのだよ! これさえあれば、テロに備えて個人的な防衛が簡単に可能! なにせ、無差別に対象を切り刻んで破壊するものだからね!」
そうこう説明している間にあたりは切り刻まれていった。
太一がおののいて、
「おいおい……その辺にしとけ」
キシヨが右手をあげる。
「回収するときは右手をあげるだけだ」と言っては戻ってきたハンケチーフを掴み取った。
ドカンと大爆発。
キシヨはビクッと驚いた。
あたりはズタズタだ。
近未来的な東京一角は巨大なビルすらもう傷つく場所がないほど切り刻まれ、先ほどの清潔な姿は何処へやら。
近くに駐車されていた原子力を利用したエコカーが爆発を起こした。
これはまずい。
「——逃げるぞ」
「ああ——」
キシヨは太一を連れて逃げていった。
彼と出会ってからの生活はこのようにいつも賑やかで、穏やかなことは全くなかったが、そんなちょっとスリルで気兼ねなく話せる友ができた生活は、太一にとって、とってもとっても幸せな毎日だった。
これが一つ、過去の自分から立ち直るきっかけになったのだ。
ああ、楽しかったなぁ。
ギコー、ギュルギュルギュル。
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『再生を終わります』
楽しかったよ。実に楽しかった。このころは本当に楽しかった。
知っているかい? リプレイ以外にも世界を調整する技術があるんだ。
それを人はキャスティングという。
主要キャラクターに異世界人を抜擢して、世界の進み方を確かめるのさ。
つまり、だ。リプレイ映る人物は入れ替わっていなければいけない。なのに、君の親友はそのままだよね。どういう意味だと思う?
わかっているはずだ。
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