第三話

 違和感で目を覚ました。


 手足は動く、仕事でパイプ椅子3個で寝た時のような疲れではない。


 起き上がると、二匹の猫?が、足に絡みついていた。

 魔物!?猫?は、寝ているようだ。火に、誘われてきたのだろうか?


 茶トラと言われても納得してしまいそうな猫が二匹。短毛と、長毛の違いはあるが、顔立ちや体格が似ている。兄弟なのかもしれない。

 そうだ。眷属化を試そう。できてしまった場合には、食い扶持が増えてしまうが、なんとかなるだろう。


 短毛の猫に優しく触れて。”眷属化”のスキルを発動する。

 短毛の猫が、目を覚まして、アイスブルーの目で俺を見つめる。何も起きないまま数秒が経過した。


 ん?”眷属”になったのか?

 短毛の猫を鑑定してみた


// 名前:---

// 性別:オス

// 年齢:3

// 種族:フォレストキャット

// 称号:カズト・ツクモの眷属

// 固有スキル:---

// 固有スキル:---

// スキル枠:----

// スキル枠:----

// スキル枠:----

// スキル枠:----

// スキル枠:----

// レベル1:

// レベル2:

// レベル3:

// レベル4:

// レベル5:念話(3)

// レベル6:

// レベル7:

// レベル8:

// レベル9:

// レベル10:

// 体力:D

// 魔力:F


 眷属化した猫?が、目を開けてこちらを見ている。

『ごしゅじんさま』

「え?」

『ぼくです』


 ”にゃー”と可愛い声で眼の前の猫が鳴いた。


「お前か?」

『はい。ごしゅじんさま。僕に名前を付けて下さい。そして、妹とも契約して下さい』

「あぁいいよ。お前は、”カイ”だ。それから、俺の事は、カズトと呼んでいいからな」

『ありがとうございます。僕は、カイです。ごしゅ、カズト様。これからよろしくおねがいします』


 妹と言われた猫にも眷属化のスキルを発動する。

 ”にゃー”と、ひと鳴きしたので、鑑定を行ってみる。


// 名前:---

// 性別:メス

// 年齢:3

// 種族:フォレストキャット

// 称号:カズト・ツクモの眷属

// 固有スキル:---

// 固有スキル:---

// スキル枠:----

// スキル枠:----

// スキル枠:----

// スキル枠:----

// スキル枠:----

// スキル枠:----

// スキル枠:----

// レベル1:

// レベル2:

// レベル3:

// レベル4:

// レベル5:

// レベル6:

// レベル7:

// レベル8:

// レベル9:

// レベル10:

// 体力:G

// 魔力:D


 妹は、スキルは持っていないようだ。

 そうだ、固定化できないか?


「カイ。この会話は念話を使ったのだろう?」

『はい。そうです』

「あと二枚あるよな?お前たちは、固有スキルを持っていないようだけど、そこに念話を固定していいか?」

『え?あっはい』

「念話のカードを出してくれ」

『わかりました』


 カイから、念話カードを二枚受け取って、鑑定してみる。俺が、思っている事と、違っても困ってしまう。


// 対象との間に、話ができるようになる。

// 魔物と人族の場合には、魔物の意識の問題にはなる。

// 眷属との間では、思念が伝達できる。

// 一回の使用で、だいたい10~30分位


 概ね間違いないようだ。

 さて、剣にはできたが、生き物にできるのか?


 カイに念話カードを押し付けながら、固定化スキルを発動する。抵抗なく、カードがカイの中に入る。

 できたか?


 妹猫が、心配そうな雰囲気を出しながら、カイを見つめている。

 二匹で、”にゃーにゃー”言い合っている。その間に、カイを鑑定してみると、


// 固有スキル:念話(レベル1)


 と、出てきた、名前も、カイとなっている。


 話し合いが終わったのか、二匹揃って、俺に向かって頭を垂れる。


『カズト様。妹にも、名前と念話を与えて下さい』

「あぁ」


 まずは、念話を与える事にする。同じ要領で、固定化した。


「お前は、”ウミ”」

『ありがとうございます。カズト様。ウミは、嬉しいです』


 ウミを鑑定して、名前と固有スキルが付いている事を確認した。

 俺のステータスも確認しておく


名前:カズト・ツクモ

性別:男性

年齢:10

種族:フューム

パーティ:なし

称号:---

固有スキル:眷属化

固有スキル:鑑定

体力:H

魔力:A-

眷属:カイ/ウミ/空き(7)


 眷属化できる数に限りがあるのか?

 後悔は、一切ない。前世?で叶わなかった、もふもふ・ペットライフを夢見る事にする。


 カイとウミが、俺の所に来た理由を聞きながら、これからの事を決める事にした。

 二匹は、森の中で生活していたが、ダンジョンから出てきた魔物人族に襲われて、逃げてきたのだと話してくれた。森にも帰られないし、安全に眠れる場所を探していたら、俺が寝ていたという事だ。俺が安全かは、”賭け”だったようだ。


 森の中には、予想通り”水源”が存在している。ダンジョンと呼ばれる場所も存在しているようだ。他にも、カイとウミは、(猫目線で)食べられる草や果実が有る場所も知っていた。


 話を聞いて、まずは、水源を目指す事にした。

 カイとウミを襲った魔物人族も気になるが、水分と食物の確保が、喫緊の課題だ。


 カイとウミに、先導してもらいながら、森の中を30分位進んだ所で、水が流れる音がし始めた。それから、さらに10分位進んだ所で、小川が見えてきた。清流と言ってもいいのかもしれない。


 生水を直接・・・飲むしか無いようなので、先に鑑定を行う。


// 水:飲料


 カイとウミも、可愛い舌を出しながら、水を飲んでいる。

 まぁ大丈夫だろう。最悪、腹を壊す位なら、喉の渇きを潤す事を優先したい。


 手で掬って口に含む。

”うまい!”

 顔を小川に突っ込んで、喉を潤す。


”ゲフッ”

 俺が、顔をあげると、カイとウミも、川から顔を上げていた。

 二匹とも、なんとなく心配そうな雰囲気を出している。大丈夫といいながら、交互に頭をなでてあげると、安心したようだ。


 まったりとした時間が過ぎていた。何も解決していないが、喉の渇きを潤せただけで、こんなにも気持ちが楽になるとは思っていなかった。

 カイとウミも、俺の膝の上で丸くなって寝始めた。安心してもらえるのは嬉しいが、魔物が襲ってきたら、逃げる一択なのだけどな。


 しばらく、カイとウミをなでながら、小川の流れを見ていた。


”ウゥーウゥー”

「カイ。どうした?」

 カイが身体を起こして、小川の先の茂みを睨んで、警戒する声を上げている。


『カズト様。何か来ます』

「敵か?」

『『はい』』


 カイとウミも臨戦態勢になる。

 二匹の頭をなでて、少し落ち着かせて、剣を構える。剣道の経験はあるが、そんな物が通じるのか?


 逃げるほうがいいのではないか?逃げられるか?


 茂みから出てきたのは、いわゆる”ゴブリン”と呼ばれる魔物のようだ


// 種族:ゴブリン

// 体力:G

// 魔力:H


 なんとかなるかもしれない。

「カイ。ウミ。あいつ一匹だけか?」

『カズト様。あいつだけです』『カズト様。アタシたちも』

「カイ。ウミ。周りを警戒していてくれ、あいつは俺が相手する」

『だめです!』『はい』


 ウミは納得してくれたようだ。カイは、俺の足元に居たが、ウミに連れられて、一歩下がった所で、辺りを警戒してくれる。


 茂みから現れたゴブリンは、本当に一匹のようだ。

 そして、手に棍棒を持っている。ゲームで見てきた姿とさほど変わらないが、より”魔物”という感じがする。


 こちらを見据えている。小川の手前で止まって、足に力が入ったように見えた。”来る!”


 そう思った瞬間に、ゴブリンは、棍棒を振り上げて、俺に襲いかかってきた。

 剣で棍棒を防ぐ。腕に衝撃が走るが、耐えられる。剣に力を入れて、そのまま押し切ろうとするが、ゴブリンが一歩下がる。

”ここだ!”

 一歩踏み出して、剣先をゴブリンに向けたまま一歩踏み出す。全体重をかけて、剣をゴブリンの首筋に突き刺す。


 嫌な感触と共に、緑色の液体が飛び散るのが目に入る。


 横たわる。ゴブリン。絶命しているのが解る。

 緊張で声がでない。初めて・・・の、命のやり取り。


「カイ。ウミ。もう大丈夫だ!」


 二匹が寄ってくる。ゴブリンを見ている。


「どうした?」

『カズト様。死体はどうするのですか?』

「ん?捨てていくけど?ゴブリンは、食べられないだろう?」

『はい。人族は、食べないと思います』『カズト様。食べていいですか?』

「ん。カイ。ウミ。お前たちは食べられるのか?」

『はい。正確には、魔力を食べます。いいですか?』『いい?』

「あぁいいぞ」


 二匹が、ゴブリンに近づいて、”にゃーにゃー”言っている。魔力を食べているのだろう。


「もういいのか?」

『はい』『うん』


 カイとウミが、ゴブリンから離れたのを見て、声をかけた。

 本当に、すぐに食べ終わるようだ。


「さて、行くか。カイ。果物がある場所に行ってくれ」

『わかりました』


 カイは、俺の側を歩いている。ウミは・・・俺の、肩に掴まっている。魔力を吸収して眠くなったと言っていた。


 移動しながら、カイに聞いてみた、ゴブリンの肉は硬くて美味しくないから食べないらしい。死体は、スライムや蟲が始末してくれるらしい。

 カイやウミは、魔力を吸収する事で、力が付くらしい。


 人族はどうするのだろう?

 ステータスにも、鑑定でも、レベルが有るのは、スキルカードだけのようだからな。


 そう言えば・・・

「カイ。俺の種族は、”人族”だと言っていたよな?」

『はい。違うのですか?』

「あぁ俺は、”ヒューム”という種族らしいぞ」

『え?聞いた事がありません。長老とかに聞けば知っているかもしれませんが・・・。申し訳ありません』

「いいよ。いいよ。そのうち解るだろうからな」

『はい!』

「カイ。それよりも、長老って?」

『え?あっフォレストキャットの長老です』


 うーん。なんか、噛み合っていないけど、いいか・・。機会があれば会えるだろう。


『カズト様。僕たちが根城にしていた場所は、あの辺りで、食べられる果実があります』

「そうか、ありがとう」


 さすがに空腹感も出てきたし、何か食べたいと思っていた所だ。

 カイとウミが襲われたと言っていた魔物が居ないことを祈りつつ、指定された場所に急いだ。


 幸いな事に、魔物はすでに居なくなっていた。

 木々に囲まれた場所で、小川から5分位の距離にある。


 カイが言っていたとおり、周りに果物がなっている


// 名前:アプル

// 食用:可能


// 名前:ピチ

// 食用:可能


 2つの果物。”りんご”と”もも”だ。形も匂いも俺の記憶にある物と違いはない。

 魔物が来なければ、”ここ”をしばらくの拠点にしてもいいかもしれない。


 まずは、腹を満たす事にする。

 ナイフがあるので、カイとウミにも切り分けてやる。調子に乗って、りんごを、6個も?いてしまった。一人と二匹で食べるには多すぎた。剥いた皮や芯が、山のようになってしまった。


 一息つけた。”りんご”も”もも”もまだ沢山ある。

 しばらくは、食べるのには苦労しないだろう。こういうときに、IT土方で鍛えられた精神力が嬉しくない効力を発揮する。3食”同じ”カップ麺を1ヶ月続けても飽きなかった精神力が・・・悲しくなってきた。


 辺りを見回す。広場にはなっているが、直径10m程度の広さしかない。柵もなく寝るのには勇気がいる。交代できる人がいれば多少は違うだろうけど、カイとウミと俺だけでは少し心許無い。


 さて、どうしようかな・・・。

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