第11話 唯子の新しい日常
放課後、授業が終わると唯子はルンルン気分で、寂れた特別棟の廊下をスキップしていた。これからあの部でどんな出来事を経験していくのだろう。そう思うだけでも、好奇心満ち溢れる少女の胸は弾んだ。
いや、それだけでない、もっと別の感情が、自分の気持ちを高揚させていることを、唯子はまだ、理解していなかった。
特別相談部の部屋の前まで来ると、その気持ちはいっそう増し、それと同時に、緊張に似た何かが胸の中に生まれた。
コンコンと、控えめなノックをすると、「どうぞ」と、すぐさま淡泊な返事が返ってきた。
ゆっくりと戸を開くと、正面奥の高級なデスクを前にして座っていた周船寺が唯子の姿を見るや、顔を歪める。
「ちっ、ほんとに来たのか」
「なんですかその言い方は、私だってもう、れっきとしたここの部員なんですからね」
「ふん」
肘をついてそっぽを向く周船寺を意にも介さず、唯子は鞄を置いて、ソファに座った。
「今日はお客さんがくる予定はあるんですか?」
「ない」
「いつもどのくらいの頻度で来るんです?」
「滅多に来ない」
「ええ? じゃあなんのための部活なんですか」
「僕のプライベートルームを作るために作った部活なんだここは! 仕事なんて二の次だよ! いわばここは僕の家なんだ。そこに君はづかづかと……」
周船寺の不満たっぷりの態度など気にせず、唯子は尋ねる。
「え? この部は先輩が作ったんですか?」
「ああ。そうだよ」
「でもどうやって作ったんですか、確か部は五人以上いないと……」
唯子の言葉途中で周船寺は手を振って割り込んだ。
「ああ。そんなものは僕には関係ない。ここではなんでも僕の自由にできるんだ」
「自由って……」
「なら、証拠を見せてやろう」
続く
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