第2話  唯子と周船寺

「なるほど、よくまとめたノートだ」


  周船寺は、唯子が作った、この一連の窃盗事件についてまとめてあるノートを、部室のソファにふんぞり返りながら眺めていた。実は唯子も、教師に相談する前に自らでこの問題を解決してみようと躍起になったのだが、その気合と根性もむなしく、結局謎は解けずに犯行が続くという結果になっていた。

 実は唯子、一見、大人しそうに見えるが好奇心旺盛で、密かに名探偵というものにあこがれていた。

「犯行は月曜日から木曜日の間までに行われて、いずれも翌日には、こっそり返されている。事件が始まったのは約一か月前からで、犯行は今もなお続いている。最後の事件は昨日。一連の事件は、取られる時間も返される時間もばらばら。返される場所は、その被害者の机や下駄箱の中、こっそり鞄に返されていたこともある……。いずれも、現金やカードが抜きとられた様子は無し。被害者はいずれも一年の女子生徒……か、ふむ」


 神代高校連続盗難事件!

最初の被害者 安藤紀香(一年三組 バレー部員) 

二番目    吉岡夏美(一年五組 書道部員) 

三番目    山田なな(一年三組 バレー部員)

四番目    寺田めぐみ(一年二組 空手部) 



「どうです? 変態探偵さん、なぞは解けそうですか? あなたがこの学校にまともにいられるのも、あと一週間ですからね。今のうちに、残りの学園生活をご友人と楽しんだ方がいいのでは? あっ噂で聞いたところ、ご友人はいないんでしたね。これは失礼しました」

 クスリとからかうように唯子は笑う。実は唯子、胸が足りないという周船寺の発言を根に持っていた。

 しかし周船寺はそんな唯子の皮肉にも応じず、超然とした態度を貫いた。

「まあそう焦りなさんな。僕ならば一週間、いや、三日もあれば、犯人に辿り着くだろうよ」

「まあ。ずいぶん自信がおありなんですね」

「ふふ。まあね。じゃあさて、出かけますか」

 よいしょと腰を上げて、周船寺は唯子のノートを持ったまま、立ち上がる。

「どこに行くんですか?」

「決まってるでしょ……被害者たちの所です」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る