第12話 または263-3
「ありがとう。」
その一言にはきっと、いろんな何かが含まれてた。
「任意での転移、能力の持ち越し、それから同行者の任意での追加。これは彼の方に権限を与えておこう。」
「それからこれは、あくまでも個人的なお願いだが、君の記憶を任意で送る機能をつけさせて欲しい。もちろん、自動収集機能を消して、だ。」
少しだけ、疑問に思う。
「あとはそうだな、必要な機能はあるだろうか・・・」
「少し要望を言ってもいいだろうか。」
ほんとに些細な疑問。
「ああ、構わないよ。」
「それらの機能に私自身が弄る権限を。」
「そうだね、そのほうが対処しやすいか。」
だから、聞いてみる。
「それとそうだ。適応も必要か。」
「ひとつだけ、教えて。」
「うん?」
「あなたはどうして、下位なんて呼ばれてるものに興味を持ったの?」
少し気まず気な顔をする彼に、聞くべきじゃなかったと思った。
でも、彼はそんな私を見て、慌てて訂正する。
「あ、すまない、下位世界なんて呼んでるけど、決して見下すとかそういう意図はないんだ。」
「君たちの世界、君たちが渡ってきた世界。僕らの世界には無いものも沢山ある。」
「それはね、なにも技術だけじゃあ無い。」
「制度だってそうだし、コミュニケーションだってそう。」
「僕らの世界に無いってことは、それだけ学べるってことさ。」
「学ぶのはどんなものにも当然備わる権利だ。」
「それを広げるため、さ。」
もちろん、それが迷惑をかけているんだから、どうしようもないけどね、と言って、顔を手元に向ける。
だから私は。
あえて言う。
「これ以上申し訳ないとか言わないで。」
目を開き、こちらを向く彼。
「あなたのおかげで私達は出会えた。」
「あなたのおかげで、スーゴは足掛かりを掴んだ。」
そして。
「あなたのおかげで、私は生きてる。」
出会わなければ、私はあそこで殺されてた。
故に。
「ありがとう。」
きっと、満面の笑みを、私は浮かべてる。
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