第12話 または263-2
「んー?あれ、伝わらなかったかな?」
青年は困ったように、頬を掻く。
「ああ、そうか、先に言うべきはちがったね。」
そして、どこか真剣な雰囲気をだす。
「まず、君に謝罪を。」
「君が出会うであろう辛い思いも、僕は許容して、流してしまった。」
彼の話は、まとめると、私の世界渡航、不老不死、そういったものの元になったあの青い玉。
それは、彼が作り、世界を渡したらしい。
その当時の彼は、異世界への探求、とくに、下位世界への調査が目的だったらしい。
下位世界そのものへの興味、そして、下位世界のものの変化。
これが理由。
しかし、世界を渡してしばらくし、ふと、考えてしまった。
下位だろうと、ヒトを動かすのだ。
故に、それら機能を変化させる手段の構築をしていたらしい。
そして、それが完成し、あとは私が。
いや、私の持つものが来ることを待っていたそうだ。
それを聞かされ、わたしはただ、過去に渡った世界を、全部ではないが思い浮かべていた。
ただただ殺され、内蔵を引きずり出され続けた世界。
不死を知られ、殺されることもなく痛みを与え続けられた世界。
目の前で殺されるヒトをただ見続けさせられた世界。
そんな、嫌なことだらけの世界。
でも、それだけじゃなかった。
再び出会うことを約束した世界。
手伝い、共に笑いあった世界。
そして、人探しを約束し、相棒と出会ったあの世界。
「・・・続ける。」
そう答えた私に、彼はにっこりと笑い。
「わかった。なら、君のそれを調整するとしよう。」
「その間に、君たちは次の世界を決めておくといい。」
「本当なら、決めて渡ることも可能なんだ。」
「ただね、それには観測者が必要で。」
「だけれども、僕たちは下位世界に渡ると、下位世界そのものが壊れてしまう。」
「だからこそ、一度だけの奇跡の渡航。」
「まあ、お詫びみたいなものさ。」
そう言われて、直ぐに私の心は決まっていた。
「 」
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