第11話 または90-1

私が世界の移動に慣れ始めた今、私にとって珍しい世界へと降り立った。

人は沢山いるが、話している内容がわからない。

時折聞こえる、私に意味が分かる言葉は、どうやら彼らから発せられる言葉ではなかった。

彼らの周囲にいる、私の認識では犬、それが喋っている言葉がわかるのだ。

彼らの、その言葉から分かるのは、この世界において人は彼らの家畜であり、ペットである、ということか。

しかし、人でもなく、犬でもない私は彼らの中において異質である。

故に私は彼らとの交流を求めた。


幸いなことに、彼らは異質に対して友好的であり、多くの話を聞けた。

曰く犬、この場合我々のいう人間だが、は昔から人、つまり彼らの世話をする種族らしい。

曰く彼らの暮らしは王政であり、犬たちには犬のコミュニティがあり、そこは不可侵らしい。

この話を聞いて、翻訳機能と言うべきものが、どういった基準なのかがようやく分かった。

その世界における支配階級の言葉を解るようにするものだったのだ。

彼らの話は私の世界観を変えるものと言えよう。

話を聞きながら、どう彼女のことも説明するかを、思考する。

だが、きっと彼らはすぐに信じるだろう。

私の言葉に耳を傾けてくれるのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る