第10話 または78

世界は何時も、道を定めることは無い。

定めた世界は衰退の道を辿ることを、世界が理解しているからだ。

定めるということは限界をも定める。

それこそが、発展、進化の阻害なのだ。

皆さん、どうか、限界を作ることのないよう、生きていただければと思います。

それでは、長らくご清聴ありがとうございました。

これにて、本日の講演を、終わりにしたいと思います。



「あの御仁、そもそも勘違いをしていたな。」

スーゴがそう呟く。

「何も決められていないなんてことは無い。そもそも不確定だからこそ思考することが出来るんだ。」


「・・・まあでも仕方ないか。そうした間違いこそが人間が人間である証であり、成長であるからな。」

「でもスーゴ、それなら私から見てもあなたは人だよ?」

するとスーゴは優しい口調で。

「ありがとう。その言葉は私達への最高の賛辞だ。」

「さて、そろそろ時間になるな。」

限られた時間がわかる。それは、人によってはむしろ、不安になることもあるだろう。

でも私は。

それだけで世界が広がったんだ。

「ありがとう、スーゴ。」

「なに、まだ君から感謝を受け取れるほどのことを返せていないさ。」

スーゴが照れているのは、すごくわかりやすかった。

だからつい、ふふっと笑ってしまう。

そんな私に気づいたのだろう。

照れ隠しをするように。

「そもそも私たちの関係は悪魔の契約のよ」

世界のズレ。

何故かその一瞬で起きて。

つい、時間を忘れてしまったスーゴに。

大きく笑ってしまいそうだった。

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