第8話 または88
そこには、地球上ではおおよそ見られないだろう、異形の者たちがいた。
ファンタジーな世界にいるような獣人やオーガのようなもの、触手の集合体のようなもの、いわゆるロボットや岩、しまいには人間に見えるが、周りが凍っているようなものまでいる。
そう、ここは異星人居住区である。
そこに住むボクにはひとつの悩みがある。
今日もその悩みを考えながら、ボクの前を通る人を眺める。
これがボクの日課だ。
ふと、気になる人を見かけ、つい声をかける。
「そこのお嬢さん、少しいいかい?」
彼女は驚いて、ボクを見てもう一度驚いていた。
「君はどこの星から来たんだい? あ、言いたくなかったら言わなくていいよ!」
彼女は答えなかったけれど、ボクは気にしない。
「うんうん、答えたくないんだね。 そうそう、お嬢さん。ひとつボクの話を聞いてもらえないかい?」
「ありがとう。キミも知っての通り、ここは異セイ人が住む場所だ。 ウルバユタセイのュルツェントくんはあそこに住んでるし、アラキミテイル・ソルミネンネセイのペくんはあっちだ。」
「まあ、それはどうでもいいだろうね。 でもね、ボクがドコのホシの人かわかるかい?」
「みんなキミみたいに言うよ。 けどね、ボクの出身はキミも知ってるし、みんなも知ってるんだ。ここに住んでるんだもんね。」
「わかったかい? そうなんだよ、ボクはここのホシで生まれたんだ。」
「ボクの姿が何に見える? うん、そうなんだ、人形だ。みんなはボクのことを人形型人間だとかウェルヘルヅュジセイ人だとかいうんだ。」
「町中にいた頃のボクを見つけた人はしゃべったボクを異セイ人だと思い込んじゃってね。 そしたら国までもがボクが異セイ人だとか言っちゃうんだよ。 信じられるかい?」
「ちょっと背中を見てもらえるかい? ああ、上から見ていいよ。」
「ほら、ここに製造番号があるんだ。 ね? これを見たらイッパツでわかるはずだよね?」
「なのにさ、いくら言っても誰も聞いちゃくれないのさ。 ひどい話だよ。」
「とにかく、ボクはこのホシ出身なんだ。」
聞いてくれてありがとうと言って、彼は静かに最初見た時みたいになった。
彼には悪いけど、製造番号なんてなかった。
だから、彼が本当のことを言ってるのかなんてわからない。
なんで生まれた場所を気にしているかも理解できない。
私からしてみれば、みんな同じだ。
等しく、人だ。
そこに差なんてないのだから。
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