第7話 または22-5 あるいは第4話

―――――それこそが蛙である。

フラスコの中を覗いていた男は、中の実験動物をそう評する。

「ばっかだなぁ、こいつも。裏でホントの秘密結社が潰しに来るのにも気づかないでやんの。」

そう零した男に、もう1人の男がそばにあったクッションを投げつける。

「うわっあぶな!」

投げつけられた男は、投げてきた男を睨みつけ。

「っぶないじゃんか!コレがこわれたらどーすんのさ!」

しかし既に男は顔を見ていたものに戻して。

「いいからとっととレポートにまとめろ。とっとと帰りてえんだ、こっちは。」

「ちぇー」

フラスコを戻した男はしぶしぶと、機械へと打ち込み始めた。

この研究をまとめることは、全ての子供たちへの教材を作ることにほかならない。

彼らはいずれ来る人類の道を、実験し、知ろうとしているのだから。

「ほんと、あいつらって愚かだよなぁ・・・」

「いいからとっととやれ。」

「はいはい、にしても、あの特異生物、不思議だったなぁ。」

ふと、突然現れ、そして何も残さずに消えてしまった生物を思い出した。

「・・・まさかこっちの言葉しか分からないなんてねぇ」


男達は絶滅危惧種であった旧人類の培養に成功、経過を調べているのである。

その後の彼らは人類の未来を救いし英雄とされた。

そして、あえて語るのならば。

フラスコの中は、全て焼却処分であった、とだけ。

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