第4話 または22-3

 少女が現れたことに、世界は揺れていた。

 宇宙人である、異世界人である、未来、もしくは過去の人物である。

 そんな噂が世界を駆け巡る。


「・・・まったく、世間のやつらも適当なことを流してくれる。」


 国連の暗部である異能隠蔽国際機関では、件の少女について、会議が行われていた。


「で、フリード、思考解析はどうなったんだ?」

「感情だけ感じとることができました。ご報告しても?」

「当然だ。」


 フリードと呼ばれた男は、笑みを張り付かせたまま、その場に立ち上がる。


「対象は恐らく・・・」

「君の考えは不要だよ、フリード。簡潔に、手早くだ。」

「失礼。・・・興味、呆れ、諦め、そして、憐れみでした。」

「言葉さえ通じることが出来れば良いのだが・・・」


 彼らには、少女の声は届かない。


 そのせいで、少女が思う気持ちの理由は想像しかできないのだ。



 ・・・幸福であり、やはり憐れな存在でしかない。

 無知とはまた、幸福な存在なのだから。

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