第3話 または24-3

 嬢ちゃんから聞けた話は、正直何もなかったの一言に尽きる。

 嬢ちゃんはどうやら記憶喪失らしい。


 ・・・もちろん、そんなことは信用できるわけはない。

 明らかに嘘だってことはわかる。

 風のことも聞いて見た。

 結果はもちろん、知らないの一言だ。

 だが、嬢ちゃんはそのことに関して嘘は言ってないだろう。

 ・・・だからこそ記憶喪失が嘘だっておもったんだがな。


「なあ、うちで保護させてもらうって話、受け入れてよかったのか?」

 嬢ちゃんにそのことを言っても、答えは変わらなかった。

「べつに、いいんだよ。私は後ろだても何にもないから。それに・・・」

 後半はまるで自分に言い聞かせるように言ってて、俺には聞き取れなかった。


 そして彼女を乗せようとした時、再び特異点反応が、この場で発生した。

 急なことが起きようとも、優先順位だけは忘れるわけにはいかない。

 目の前の少女を連れて離脱する。

 それがいま最もするべきこと。


「嬢ちゃん!はやく・・・!」

 乗れ。


 そう言おうとするも、嬢ちゃんは首を横に振る。

「優しくしてくれてありがとう。優しいお兄さん。」

 そう言って嬢ちゃんは・・・笑顔をこちらへ向けると、その場から消えていた。

 暫くその付近を捜したが、嬢ちゃんはついに見つからなかった。

 諦めて報告に戻ったが、上層部にはただ、

「君が見たのは夢だ。この一件は忘れたまえ。」

 とだけ言われ、多額の金を渡された。




「・・・これがその時に起こった全てだ。」

「そう、なんか・・・」

 目の前の馬鹿弟子は、何かを考えてるみたいだ。

「捜そうとはするなよ。俺から渡せる技術は全部お前に教えたんだ。」

 それに・・・

「あの力は、この世界にあっちゃいけねーんだよ。」

 そこまで言って、馬鹿弟子が泣きそうな顔をしていることに気づく。

「泣くんじゃねえ。・・・俺は満足してんだ。」

 その後に言葉はなかった。

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