第2話 または10-3

 始まりが突然なら終わりもまた突然だった。

 いつしかその少女は消えていた。

 彼女がいなくなっただけで、こうも戦況が苦しくなると、彼女が幸運の女神だったのだとさえ思ってしまう。

 もちろん、そんなはずが無いことは百も承知だ。


 今日、俺もこの部隊から去る。


 彼女がいたから、ここにいたのだから、当たり前ではあるだろう。

 俺が去るということを知ったあいつらは、なんとか引き止めようとしていた。

 簡単に留まるつまりはさらさらないが、あいつらが寄ってくるのはうっとおしい。

 ・・・彼女が最後に俺に言ったこと。

 冗談だったらどれだけいいかとも考えた。

 でも、いなくなってから、真実だと理解させられた。

「・・・本当に行ってしまうのか?」


 今更留まるつもりも無いことはすでに伝えた。

 そのことをやつに伝えると、珍しくも顔を歪めている。

 それに少し驚きつつも、同情なんて出来るわけがない。

「・・・俺は探さなきゃいけねぇんだ。」

 どうしてか、懺悔をするかのように、あるいはたんたんと、話していた。

「だから、いられねぇ。たとえ、あいつが待ってなくても。」

 それだけを言って、俺は背中を向ける。

 ・・・どうやら彼女に相当影響されていたらしい。

 一言だけ、あいつに伝える。

「・・・だがな。これは決別じゃあない。またな。」




 692の年、英雄レアは孤児院を開き、戦場から退いた。

 後年彼に対する研究は絶えず、様々な説がある。

 しかし、ある一つの共通点がある。


 "彼が戦から離れたのは、研究のためである"


 なぜなら、彼の研究こそが、われわれの"科学"に多大な影響を及ぼしているのだから。

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