第11話
「ベッドが無いか。まあ、家具はその都度買えばいい」
そう言いながらパソコンでネット画面見て何をクリックしているんですか? 家具ですよね。
甘えていいと言われても、困るな。最低限度の家具はバイトして稼いでから集めるのに。
「広軌は身長何センチ?」
うわ、見上げるの反則。それにカットソーが緩いから重ね着してください。
あなた華奢なんだからメンズ着たらダメですよ、レディース着て……あ、あの指穴パーカー。
まさか、今着ているのもレディースとか言いませんよね。
それでこの緩さって、かなり興奮するんですけど。
「身長!」
「あ、すみません。172くらいです……」
「いい脚立になりそうだ」
眼鏡を整えながら言わないで。
やっぱり脚立扱いか。
でもこの部屋、天井が高いからオレで役に立つかな。
「広軌」
ナギさんが画面を見ながら頬杖をついた。
「散々な思いしながら、よく大きくなった。我慢した分、矢張りいい事があるんだ。真摯な姿はちゃんと誰かが見ていてくれるし、これからも自分を信じてまっすぐ生きたらいい」
「はい! ナギさん、ありがとうございます」
胸が熱くなる。理解者がいるのはこんなに有り難いものか。
同じ苦労をしているからか、ナギさんに諭されると、この先は明るい未来しかない気さえする。
施設では差別を感じるより卑屈にならないよう努める日々だった。せめて片親が生きていてくれれば施設には入らずに済んだ。でも、今それを嘆いても仕方が無い。
って。オレが感涙しそうなときにこの人は。
「そんな大きなベッド、いらないですよ」
「育ち盛りが何言ってるんだ。この先身長が伸びる可能性がある以上、妥協する訳にはいかない」
「でも、ナギさんは」高校生で身長がとまっ。
「……は?」
睨まれると怖い。
「いえ、何でもありません……」
気にしていたんですね。これからは矢張り気を使います。
「ああ、言い忘れたけど書類をありがとう。財産目録を作成して、広軌に毎年支給すべき金額の予定も立て、申立書と俺の戸籍謄本を添付して家庭裁判所に郵送したから。異議申し立てが無ければ通る」
は?
「駄目押しで、俺の収支予定表と事情説明書も添付したから、まず問題無い」
「何だかよく分かりませんけど、お手数をおかけしました」
「そんなに難しいか? 進学希望者」
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