第7話
「残さず食べておけよ」と言いながらスマホを操作しているな。
まだ、この人の名前も知らないんだけど、話に乗って大丈夫かな。
詳しく知らないが後見人って親族か司法書士が担当するはずだし。え、まさか司法書士?
それに、自分は何も食べていないし。パン、いらないのかな。食べちゃうぞ?
「ふうん。昔と変わらないな、と言っても4.5年だから大差なくて当然か」
「何ですか?」
「パンくず付いてる。綺麗に食べろ」
一瞥してまたスマホに目を向けた。
「児童福祉法によると社会的養護の対象は18才未満とされているんだ。おまえは?」
「もうすぐ18になります」
「そうか。普通は児童保護施設にいるはずの年だが、今まで親戚に保護されていたのか」
「いえ、施設出身で、そのおかげで奨学金制度を利用しています。授業料全額免除と住宅費の支援6万円、生活費保護で5万円給付されていますが」
喉にパンが詰まるような会話だよな。
味も分からなくなってきたぞ。
「だよな。おまえが大学へ進学希望したからその奨学金を受けられる。だが理解しているのか? その金額ではバイトして穴埋めしても自転車操業と同じだし、進学したら必ず足が出る。現状の生活保護制度では限界があるんだ。不足分は自力で賄うしかない」
バイトを掛け持ちするつもりだったけど、甘いのかな。
「国は18を越えたら、基本、助けないからな。進学より就職を勧めたはずだ」
「はい、確かに」
ただでさえハンデがあるから将来的に少しでも有利にしたくて進学を決めたんだけど。
「財団に借りる事は出来るが、保証人が必要だ。片親でも生きていればの話だが該当しないだろ。それにあくまで『借りる』だから『返さないといけないお金』だ。俺も働く事を勧めるが?」
「ちなみに、あなたは……」
高卒で働いたのか聞きたいけど、名前知らないんだった。
「ああ、順番を間違えた。悪かった」
スマホをテーブルに置いて、向き直った。でも足を組んでる、威嚇?
だけど前のめりになった。圧がある。
「自己紹介が遅れた。五泉(いいずみ)だ。下の名は、ナギ。覚えたか?」
うわ。意識すると半端じゃない破壊力の美人だ。
間近の上に真正面から見ると目が大きく見える、口が小さいから? それに前髪重めで社会人としてどうなんだ? でも、可愛さが倍増だし、名前がこれまた心臓を突くみたいだ。
一笑する様が余裕を見せる。大人だ、少年じゃない。
「面倒だから、ナギでいい」
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