第6話
「おまえの強さはもろい事も分かる。耐える半面で誰かに縋りたいだろ」
「その通りです。頼る人はいなかったので」
もう髪がぐしゃぐしゃだぞ、これ。
「素直だな。よし、決めた」
「はい?」
ようやく頭から手が離れたと思ったら、顎を掴まれた。
「よく聞け」
近いんですけど。
「俺でいいなら、甘やかしてやる」
はい?
「傷の舐め合いはしないが、何かのめぐり合わせだ。面倒、見てやるよ」
はいいい?
「パン屋で必死に俺をナンパした時に薄々勘づいたから、乗ってやったんだ。同じ匂いがするなって」
口元に笑みが浮かんでいる、何か企んでる?
「耐えた分、これから好きに生きればいい。その助けをしてやるよ」
え? もしかして?
「それって、口説いてます? オレ、まだ高校生なんですけど!」
手を払ってテーブルを叩きつけた。
「……うるさい、落ち着け。子供を口説く程、俺は飢えてない。今のおまえに万が一でも手を出したら淫行だ。誰が好き好んで人生の選択を見誤るもんか」
「でも、どうしてですか」
「俺はおまえと逆で、ねじれて曲がったからな。そうならないようにしたいって思うのは普通の感覚じゃないか。それに」
ねじれて曲がった? 性格に問題ありなのか。自分で言うから本当なんだろう。
それに?
「おまえ、身長あるだろ。部屋の照明器具の取り換えに便利そうだ」
脚立扱い。
え、でも、それって。
「1人暮らしも困窮だよな」
「ええ、正直ゆとりは無いです」
「贅沢はさせないが、うちに引っ越せ。未成年後見人になってやる。おまえが気に入った」
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