第4話

「えっ?」

「どうした」

早速LINEしたはいいけど、待ち合わせの駅前にスーツ姿で現れたから仰天した。

「今日、何か法事でもあったんですか?」

「何が言いたいか分からない」

「だって、スーツにネクタイって」

でもネクタイが黒じゃないから法事では無いか。

あと、何がある? ピアノの発表会? 似合いそうだ。

「ああ。そうか、分かった。おまえの勘違いだ。俺は社会人」

「えっ? その顔と背丈で? あり得ないですよね」

「は?」

あ、やばい。思った事をすぐに口に出すなと昔、親にも言われていたのに。

怒らせたかな、プライドとか傷つけたかな。

でもしかめ面をしていないな。どうなんだろう。

「俺は23才。身長は高校生の時から伸びなくなった、別におまえが気遣う事は無い」

「あ、でもすみません」

「顔は知らないけど。俺みたいなの、ざらにいるだろう」

「いませんよ! 初めて見ましたよ、こんな可愛い社会人」

「はあ?」

何か泥沼。

引きずりあげて貰ったのに、自らまた勢いよく沼へ飛び込んだ。

「何が誰が可愛いんだ」

「いやいや、あのですね。自覚とか無いんですか? 鏡見てます?」

「鏡を見ない人間はいないだろう」

もう、オレ駄目かも。

呆れ顔されてるし。

「おまえが何を言おうとしているか理解出来ない」

「すみません。オレも自分を見失いました」

「迷子か」

あなた見てると挙動不審になりますよ。

少年にしか見えない容姿で、スーツにネクタイって違和感あるから。

「何か面倒だな。おまえ」

ため息交じりに言われた。悪手だ。

「さっさと店に入ろう、帰りが遅くなるぞ、高校生」

踵を返して背を向ける様が昨日の雨に打たれるそれと重なる。

だけど、あの少年のような指穴パーカー姿とのギャップが激しすぎる。

でもフードで隠れていた黒髪が見れて得した。妙に艶がある人だな。


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