第15話

ようやく脚が痛くなくなった。

だから運動も少しずつしていいっておじさんが許可してくれたみたい。

早速、お兄さんに乗ってもらって運動しに行く。


広い建物の中で少しずつ。

いきなり走り出さないよう、お兄さんが手綱で注意してくれる。

うん、わかってるよ。

急に走ってまたどこか痛くなっても嫌だもんね。

それでも、今までのモヤモヤがどっか行っちゃったみたいだ。

なんだか、スッキリした気分だよ。


部屋に戻ってご飯を待ってる間、外を見ながら考えてたんだ。

畑のこと。

ボクだけでやるんじゃ大変らしい。

誰かに手伝ってもらった方がいいよって、他の馬に言われたんだ。

そいつの生まれたとこにも畑があって、たくさんの人間がやってたんだって。

だから、ひとりでやるんじゃ大変なんじゃないかなってね。


部屋の中には鳥さんたちが時々入ってくる。

ボクたちがこぼしたご飯とかもらいに来てるんだって。

ボクたちの邪魔をすることはないし、今までは気にしたことなかったんだけどね。

改めて見てみたら結構な数で入って来てるんだ。

もしかしたら、畑の手伝いしてくれるかなーって、聞いてみたんだよ。

そしたら「食べ物くれるならいいよー」だって。

「ボクらは畑でも邪魔にされて追い払われてるから、手伝いさせてくれるなら喜んでやるよー」

鳥さんたちは口々にこう言ってた。

じゃあボクが畑やったら邪魔にしないから手伝いに来てよ。

ご飯も用意するからね。


お昼ご飯をもらって食べるときに、わざとこぼす。

ボク、知ってるんだよ。

ボクがいない間に鳥さんたちがこぼしたのを食べてるのを。

だから、わざと多めにこぼしてみた。

もちろん、後で拾って食べたりはしないんだ。

鳥さんたちの分だからね。


今日も蹄鉄の打ち換えでボクのいない間に、鳥さんたちがいっぱい食べてったみたい。

戻って来たらきれいになくなってたからね。

いつ畑出来るかわからないけど、出来るようになったらお願いするよ。


運動は少しずつハードになってきた。

競馬場でやる練習に近いとこまで来てるみたい。ボクもだんだんやる気が出てきたよ。

だけど、おじさんはなにか不思議な板みたいなのを見ながら「もう少しだなー」って言ってる。

あの板、なんだろうね。何か書いてあるのかな?

とにかく、ボクはもうしばらくここで運動するみたいだよ。


……え?

競馬場に戻るの?

ずいぶん急だなと思ったら、「先生が厩舎に空きが出来たから戻っておいでって」ってお姉さんが教えてくれた。

ボク、また競馬場で走るんだね。

今度こそ頑張らなくちゃだ。


今度こそレースに出られるように。

そしていっぱい頑張ってお金稼いで、畑やるんだ。

頑張ってくるからねって、お姉さんやお兄さんたちに挨拶してから車に乗ったんだ。

今度はいっぱい勝って、お休みもらって戻ってくるからね。

じゃあ、行ってきます!

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