第13話
とうとう育成場に着いちゃった。
どんな顔して車から降りたらいいんだろう……。
悩んでる間にドアが開いて降ろされた。
「おかえりー!」
お姉さんの声だ。
見たらすごくうれしそうな顔をしてた。
そしてまぶしいおじさんとボクの体を調べてくれる。おじさんはすごく真面目な顔をしてる。
普段からこうだと、わかめもきっとなつくと思うんだよねえ。
言わないけどさ。
そうして、おじさんたちはお兄さんを呼んできてくれた。
少し会わなかっただけなのに、すごく懐かしい気がしたよ。
お兄さんも「よく帰ってきたなー」ってニコニコしながら、ボクの引き綱を持ってる。
そうして連れてってもらった先は、前にいた時とおんなじ部屋。
ただいま!
部屋に入って思わず言っちゃったよ。
ここで痛いとこを治して、また競馬場に戻るまでに少し練習もするんだって。
お兄さんから聞いたんだ。
また最初からやり直しなのかなあと思っていたら、お兄さんはこう言うんだ。
「最初からじゃないさ。今までやってきたものがあるんだ。まあ焦らずやろうな」
少し安心した。
「その前に、まず脚を治さないとだねー」
今度はお姉さんがニコニコしながら言う。ボクが帰ってきたのが本当にうれしそうだ。
脚が治ってまた競馬場に戻ったら、前よりもっと頑張らなくちゃ。
この人たちのためにも。
しばらくの間。
脚の痛いのが治るまでは、外に出られないみたい。
それはそれで退屈しそうだけど、ボクにとってはそうでもないんだ。
外が見られれば、ボクは退屈しないからね。
将来畑やるためにも、今から色々考えておかなきゃいけないし。
何を植えたらみんなに喜んでもらえるんだろう。
その前に、ボクだけでできるのかな。
すこし不安になってきたぞ。
そうそう。お兄さんから聞いたんだけどね。
タッカーくんもボクとおんなじ競馬場に行ったんだって。
すぐ近くにいるなら挨拶ぐらいしてくれても良かったのにな。
でも、タッカーくんもあそこにいるならボクも負けてられないもんね。
この前の試験で一緒だったのもいるんだし、同い年で強そうなのは他にも見かけたことがあるんだ。
あいつらにも負けたくないし、ボクが一番強いんだってどっかできちんと見せなきゃいけないよね。
がんばって早く脚を治そう。
そのためには、きちんとご飯食べないとだよね。
少し少ない気がするけど、おいしいのは変わらないね。
きちんと食べて栄養つけて、早く外に出られるように。
ボクがやらなきゃいけない一番のことだからね。
がんばらなくちゃ、だよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます