第124話 母が倒れた9

 二日目も変化が無く、一日中待合所で過ごした私たちはこのような状態が今後しばらく続くのでは無いかと思い始めていた。


 義父は、明日電話がなければ病院に行かないとすら言う。

 早く亡くなってほしいわけでは無いが、さすがに疲れてきたのだろう。


 この日は木曜日で、私も現実的な問題として日曜日まではいられたとしても、月曜日には会社に戻らないといけないだろうと考えていた。


 変な話、亡くなれば忌引きになるので延長はきくかもしれないが、いつどうなるか分からない状態で休み続けられない。


 近場に住んでいれば仕事に行きつつ、何かあれば仕事を抜けるなり休むなり出来るが、埼玉から岐阜ではそういうわけにもいかない。


 明日は金曜日だし、何が何でも先生に来てもらって状況を伺わなければと思っていたら、またもや翌朝9時ぐらいに病院から電話がかかってきた。


 午前中ならば仕事前だから、電話があれば一緒に行くと言ってくれたAくんのお母さんに連絡して病院に向かった。


 とはいえ、昨日と同じくまた何も変化がなく一日中、待合所で過ごす事になるんじゃないかと思った私は「後で近くの薬局に買い物に行こうかな」などと考えるほど、ゆるい気持ちになっていた。



 また少し病室をのぞいたら、待合所に行くだろうと思っていたところ、母の酸素マスクは昨日よりガッツリした感じになっていおり血圧もガクンと下がっていた。


 その状態にショックを受けたのか、義父はさらに病室にとどまるの嫌がった。

 私は逆に昨日のように、私やAくんのお母さんがしばらく側にいたら血圧上昇してくれるのでは無いかと思い、待合所に行かずに少しそこに居ようと椅子に落ち着いた。


 すると3分ぐらい経った頃だろうか、機械のアラームが鳴り出した。


 昨日もたまに鳴ってはすぐ止まってを繰り返していたので、それと同じで大した事無いのだろうと思っていたら看護師さんと義父が入ってきた。


「これはもう、心臓が止まるということなのか?」


 と独り言のようにして聞く義父。


 それに答えるように、看護師さんは私に母の左手を握らせ、右手を義父に握らせた。


 すぐにテレビドラマなどで見るように、機械の波が軽く動いたものの、よく見かけるあの「ピーッ」という真っ直ぐの状態変わり、そのまま変化が無くなった。


 状態を確認した看護師さんは「先生を呼んできますね」と出て行った。

 義父はすぐに、後ろにあった時計で亡くなった時刻を確認した。

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