第123話 母が倒れた8
葬儀について検索すると、比較できるというサイトも見つかる。
けれどサイトのその場で比較出来るわけではなく、条件を入れたのちに電話かメールで返事がくる、引っ越し業者比較サイトと似た仕様だ。
私たちがいた待合所には電話が出来る簡易電話個室みたいなところが設置されていた。
そこにしばらくこもって、電話で問い合わせる事にした。
義父には葬儀の見積もりの電話だとは言わず、席を外したので私が水面下でそういう準備を進めていたのを知らなかった。
いざ問い合わせてみると、優しそうな対応をするものの、具体的な金額や内容を言わないところが多い。
こちらから「これぐらいの金額出来ますよね?」とか「こうこう方法は出来ますか?」と尋ねてやっと、「それぐらいですね」とか「そのような事も可能です」ぐらいの返答しかしてもらえない。
それ以上に詳しく聞こうとすると、自分たちは受付だからもっと詳しい専門のスタッフを派遣しますのでそちらに伺ってから打ち合わせてくださいと言う。
なのにそれは、いざ亡くなった時にだと言う。
そうでないなら、その葬儀社まで出向いていかなければならないような感じのところもあった。
行けるわけないでしょう。いつどうなるか分からないからこそ電話しているのに、足だって無いのに。
悶々としながら、その似たような対応の中で実家の近くで名を耳にした事のある地域密着型の葬儀社を某社から紹介されたので、仮押さえでその葬儀社にしようと思い、その日の問い合わせを終えた。
そういう事をしながら、その日は結局夜の9時過ぎまで待合所で過ごした。
夕食も食べずに詰めていたが、状況に特に変化は無かった。
午後も私だけ、しばらくの間病室に居て母の様子と機械を見つめていたが朝に上昇した血圧も130台まで戻り、薄っすら汗をかいている以外は変わりは無かった。
こうなると今後、長く植物状態になって病院の費用がかかり続ける心配もしないといけないのでは無いかと思い始めていた。
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