第122話 母が倒れた7

 呼吸が荒くなったからと病院から呼ばれてきたものの、緊急性が感じられない。

 だからといって、車で30分弱かかる自宅に足が無い私たちは気軽に戻る事も出来ない。


 仕方がないので待合のソファーで過ごした。


 医師も説明にきてくれないので、今後どうなるんだろうね?と義父と憶測で話し合うしか無いのだが


「もう倒れてた時点で、亡くなってるようなものだと思ってる」


 と言うわりに、義父はその後の事については耳を塞ごうとする。


 待合では、テレビを見るか携帯を触るかぐらいしかする事が無いので変に冷静になっていた私は、えげつないぐらいにその後の段取りや手配などを調べたりシュミレーションしたりした。


 縁起が無かろうが、不謹慎だろうが、今のうちにいざという時の事を考えておかなければいけない。


 そう思ったので葬儀屋の事についても調べたのだが、『某公共放送で紹介されました』という広告に繋がるばかりで中々色々な会社を詳しく調べる事が出来ない。


 年金も無い母や義父なので、極力お金を抑えた送り方にしたい。

 私だって保険が出たとは言え、現在進行形でガンや糖尿病の治療に通っているわけでお金の余裕は無い。


 今流行りの家族葬を調べると、それでも40万から70万ぐらいが多い。


 いやいやいや、うちはそれすら無理だから。

 しかも家族たって、私は一人っ子だし親戚づきあいも無いし、もっと簡易的なものにしたいと考えた。


 数年前にS兄ちゃんが亡くなった時は、私の知らないところで事が進められていつのまにか式が無いのはもちろん、無縁仏にされてしまった。


 私はそれにとても心残りがあった。


 いくらお金が無いとは言え、そして毒親で決して好きでは無い母だったけれどS兄ちゃんの時のような無縁仏にはしたく無いと、それだけは思った。


 そうなると私の理想に近いのは、火葬式というものらしい。


 火葬式で調べると、やはり最初に出てきた某公共放送で紹介されたというサイトばかり出てくる。

 もう面倒くさいし、そこが最安っぽような感じだし(それで約14万)そこにしちゃおうかなと思いながら、義父にも意見を求めた。


 義父はまだ葬儀の事は考えたく無いようで、曖昧な返事しかしない。


 うーん面倒くさいけれど、いざとなった時に適当にしておいて払えもしないお金がかかった上に、アタフタするわけにもいかないと


 私がなんとかするしか無いんだろうなと思い、そのまま午後になっても病院での進展は無さそうだったので私は本腰を入れて電話で各社に問い合わせる事にした。

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