第52話 孤独苦

 手術はしたものの、元々体が弱い事もありまたもや高熱を出した、みーたん。


 それでも上司に見限られたくないと、無理して出勤しようとする彼女を私は止めた。


 1〜2日ぐらいでは症状が良くならず、会社に行きたいけど行けない日々が続いた。


 今にして思うと、何故無理矢理にでも病院に連れて行かなかったのだろう。

 みーたんが病院を嫌う人だったのもあっただろうが、私は会社を休ませる事ばかりを考えて病院に連れて行く事はまったく頭に無かった。


 一週間経っても、良くならないがさすがにこれ以上は会社を休めないと、無理して行こうとする彼女を止めるために私まで一緒に休む事になった。


 私は、みーたんが会社に行こうとするのを止めて欲しがっていると思い込んでいた。


 だから何がなんでも止めようと、私まで休んだ。


 それが間違いの元だった。


 やっとみーたんの症状は良くなってきたが休み過ぎた事によって、今度は会社に行きづらい、行きたく無いと駄々をこね始めた。


 無理矢理休ませた負い目もあり

「これからは私が、みーたんの分も稼ぐから」

 と二人して会社を辞めて私は一人、別の会社に行くことにした。


 彼女の全てを背負おうと思い動き始めたのに彼女はますます私に冷たく当たり、プリッツさんとは仲良くした。


 いつもは盛大にご馳走を並べていたクリスマスだったがこの年は転職したばかりな事もあってショボいものだった。


 その事で、みーたんは更に私を見限ったように感じもう、この生活は限界を超えているんじゃないかと私はふらりと家を出た。


 と言っても、四年近く暮らしたこの街に友達らしい友達もおらず行くあてもなく、近所の駐車場で野良猫を抱いて夜中まで過ごした。


 その後、こっそり家に帰った私は寝室から一番遠い部屋の押入れに隠れて気配を消した。


 二人は私の事を心配するよしもない。


 顔を合わせて、みーたんに怒りをぶつけられるのは避けたかった。


 行くあてもない、どうしていいか分からない。


 そんな年末を過ごそうと思っていた12月30日。

 私は衝動的に小さなカバン一つで東京駅にきていた。

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