第36話 出会い
正社員と言っても、それは派遣会社の正社員でちょっと特殊なものだった。
福利厚生はあったが、働くスタイルはアルバイトの人たちとほとんど変わらない体制なのだ。
短期間のアルバイトの経験はあったものの、ちゃんと社員として勤めるのは初めての事。
人見知りが激しい私は他の人たちと上手くやっていけるか不安だったのだが、前半の部で配属された作業場の一人の年の近そうな女性が、とても人懐っこい感じで話しかけてきてくれたので、そこで前から働いている人たちに混ざれそうな感じで安心した。
私の勤務時間は午後1時から夜の10時まで。
前半の夕方5時までは女性5人だけで内職のような手作業を座って行い、夕食を挟んで6時から10時までは立ち仕事のライン作業だった。
前半の仕事は私と同じ派遣でありながら社員の女性との仕事で、後半は色んな派遣会社から集まったアルバイトの人たちが大半の仕事だ。
作っていたのはパソコンのディスプレイで、この工場は国内の大手メーカーだったが、ライン作業で作るディスプレイはこの会社の製品だけではなく、海外の聞いたことのある名の物も多かった。
前半の作業時に人懐っこい女性、五島さん以外の年下の女性佐藤さんと、うんと年上の女性井上さんも話しかけてくれるようになっていた。
けれど最後の一人、佐藤さんと同じ歳の増田さんだけは、ほとんと口を聞いてくれなかった。
とは言え、五島さんと佐藤さんがかなりフランクに話してくれたので、増田さんだけ避けるのもおかしいかなと思って極力普通に接しようとした。
私以外の人たちは全員、近くにある会社の寮(と言っても一般のアパート)に住んでいて、しかも同じ家に住んでいた。
これぐらい連帯感の強いグループの人たちだったので増田さんからしたら、よそ者の私が突然入ってきたのが面白くなかったのかもしれない。
寮生活をしている彼女らは、九州や関西から出てきているためこの辺りの地理や観光地などあまり知らなかった。
そこでお節介な私は、観光地情報とショッピング情報を紙に書いてきて。特にそういう事に食いつき気味だった佐藤さんに渡した。
とても喜んでもらえて、更に仲良くなっていけそうだったのだが佐藤さんとそういった親交を深めていたある日、増田さんがいきなり泣き出したのだった。
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