第18話 電車通学

引っ越したのは車で20分ぐらいのところ。

学区は変わってしまったが県外でも市外でも無い。


母は私を転校させる気満々だったが

担任の先生が、六年生の夏も過ぎた頃だったので


「今まで通り、この学校に通って来た方がいい」


と助言してくれたおかげで六年生の半ばに転校するというめに遭わずに済んだ。


別にクラスメートはうちの内情をご近所さんほど知らないので

何の噂にもなっていない。


それをただでさえ友達を作るのが下手な私が

小学校六年生半ばで転校なんてしたら

卒業まで孤独な生活を送る事になるかもしれない。


自転車でも通えない事ない距離だったが

あまり自転車に乗るのが得意では無かったので

電車に乗って通学する事になった。


この電車通学、距離的にはそれほどじゃないんだけど

路線の関係で乗り換えがある。


そしてその乗り換えが大変だったのだ。


接続する駅が時間の関係上、小さな駅で

田舎だったので、電車を降りたらホームから線路に降りて

向かい側のホームに登るという(一般のホームより低い)システムで


当時からちびっ子だった私が、低いホームとはいえ

登るの大変だろうと心配したおっさんが毎日、行きだけは付き添って

途中までは連れて行ってくれたのだ。



帰りは一人だったが、帰りはのんびり帰れるので

乗り換えは終点の大きな駅でするので問題はなく


むしろ帰りの問題は高校生のお姉さま方が大量に乗るラッシュの方だった。


近くに女子校があったのだが、県内でもランクの低い学校で

お姉さまたちの服装は不良少女と呼ばれて、のドラマの衣装のような

昭和ヤンキースタイルなのだ。


怖いよ、怖いよ、と思いながら電車に乗ると

怖いのはお姉さまたちの服装や態度ではなく


都心のラッシュ時のようなぎゅうぎゅう詰めの中に乗る事で

ちびっ子の私は、お姉さまたちの

胸やお腹の辺りに顔が埋まってしまうので苦しく辛いのだった。

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