恋さき クリスマスss 新暦28年

※このお話は本編と通じていたりいなかったりします(2018年記載)。





「クリスマスイブとは、そもそも"クリスマスの前夜"ではなく、その言葉通り"クリスマスの夜"なのよ。12月24日の日没から始まり、翌日12月25日の日没まで続くもので、その側面からのみ見れば私たちは今ちょうどクリスマスを迎えていることになるわ」

「へー、どうして日没?」

「ヨーロッパでは昔、一日の始まりは日没からとされていたそうよ」

「なるほど…。でも現実的にはみんな24日そのものをイブイブ言って楽しんでるでしょ?」

「そうね。だから私は側面と言ったのよ。自国の文化や伝統が他国に渡ったとき、そっくりそのまま受け入れられるわけではないもの」

「…お寿司とか?」

「ふふ、わかりやすいわね。アジアやヨーロッパ、アメリカに渡った寿司文化は大きく変化したわね。みなさん、どうですか?外国でお寿司を食べたことある人いますか?」


舞台はオレンジホール。キャパシティは2500人で、時刻は8時。夜の8時ではなく朝の8時。

こんな朝早い時間から日曜日にイベントだなんておかしいと思う。しかも満席って…物好きな人たちがいるものね。"あおさき"のリスナーだけど。

知宵の問いかけに様々な返事が返ってきた。


『ありますー!』

『ないですー!』

『外国行ったことないですー!』

『カリフォルニアロールですね!!』

「ふむふむ…割と色々ね」

「ええ。これだけ人数がいると回答も面白いものがあるわ」


広い舞台で知宵と二人立って話を続ける。

今日はクリスマスイブ。知宵情報でいえばクリスマスイブでもなんでもないけど、みんなそこまで気にしていないのであたしも気にしない。どうせ"フィオーレラストショー28"とかいう恒例イベントやってるのには変わりないんだし、気にするだけ無駄よ。


「え、なんか面白い回答あった?」

「インドで食べたカレー寿司は美味しかったらしいわよ」

「ええ…カレー寿司って、なにそれ。酢飯のカレーってこと?」

「私が知るわけないでしょう?会場に聞いてちょうだい」

「ん、じゃあ聞くけど、はいカレー寿司食べたことある人ー。挙手!」


さらっと流されたので会場に聞いてみた。


『はーい!』

「あ、いたいた。カレー寿司ってどんな感じでした?」


元気よく手を挙げてくれた人は会場の前方にいた。前の方の席で背筋をピンと伸ばして座っていた。隣には金髪の綺麗な女の人。見た目からして日本人じゃない。

プラチナブロンドな外国の人なんて珍しい…。


『いろんなカレーにシャリをディップする感じでした!すっごく美味しかったです!』

「それは美味しそうだけど…」

「…わざわざシャリとして形を整える必要がないわね」

「うん。あたしも思った。とりあえず、ありがとうございましたー。今度縁があったら食べに行ってみます」

「絶対行かないわね。断言しておいてあげましょう」

「べ、べつに行くかもしれないでしょ?いつかよいつか」

「そうした物言いをした人で実行に移した人を私は見たことがないわ」

「ぐ…インドカレー屋さんなら行くからいいの!とにかく!今日がクリスマスイブって話でしょ!?」


カレーの話をしている暇はないわ。クリスマスの話をしないと。


「そうね。…いったいなんの話をしていたのかしら?」

「え、だからクリスマスイブについてでしょ?」

「そのクリスマスイブだけれど、どうして私が解説をすることになったの?」

「そんなの…」


…なんでだったっけ?なんか、今日のイベントがクリスマスイブの日だからどうこうって話だったような…。


「ええっと、今やってるイベントが朝からで大変って…話?」

「ふむ…確かに元はそうした話だった気がするわ。なら、改めましておはようございます。青美あおみ知宵ちよいです」

「え!ここでっ?改めましておはようございます。咲澄さきすみ日結花ひゆかです」


いきなりの挨拶になんとか続けて挨拶ができた。椅子に座って向かい合うのはいつもの"あおさき"と同じだけど、場所は大きい舞台で横は観客だらけ。緊張は…あんまりしてないかも?もう慣れちゃったかな。


「突然導入入れるのやめない?一瞬焦ったじゃない」

「きちんと言えたのだからいいでしょう?」

「…まあ、いっか。もう終わっちゃったことだし」

「ええ。それより、現状の紹介はあなたがする?」


あたしと同じで特に緊張を感じさせない知宵。真面目な顔の中に緩く気を抜いたものが見えている。あたしと同じどころか、あたし以上に気軽に話しているらしい。

ていうかこの子、朝早くて眠いんじゃ…。それでもいいか。どうせフリートークばっかなんだし、適当に話し繋げばいいもの。ネタなんかいくらでもあるし。


「いいわよ。あたしがする。じゃあ…こほん、"あおさきれでぃお"特別編。今回はオレンジホールにて、新暦28年の12月24日朝8時からお送りしています。"フィオーレラストショー28"に来てくれた"あおさき"リスナーのみなさんと一緒に朝から二時間続けての放送となりますので、長時間のお付き合い」

「「よろしくお願いします」」


最後は揃えて話し、すぐに会場からぱちぱちと拍手が返ってきた。今日に限ってはOPが流れないので、拍手が鳴りやむのを待ってから話を始める。


「に、しても。いきなり30分フリートークって…なにこれ?」

「私に言われても…適当に誘眠ゆうみんでもかけて30分…いえ、今からだと20分後ね。20分後に起床の"力"流せばいいじゃない」

「いやだめでしょ」


なにを言っているのかこの子は。


「良い案だと思ったのに」

「だめだめ。それだとトークショーにならないでしょ。…だめよね?」


心底真面目な顔で言ってくる知宵に、ちょっぴり不安になった。観客側を向いて問いかけると微妙な反応が返ってくる。


「…もしかして、結構眠りたい人多いとか?」

「…私は冗談で言ったつもりだったのだけれど、朝早いからかしら?」


二人でリスナーの反応をうかがう。話聞きたいって言う人もいれば、ひっそり目をそらす人もいる。見た感じ眠そうな顔をしている人もいて、人数比は半分くらいに見える。

それはそれとして、知宵のが冗談だったというのに驚いた。普通に本気だと思ってたわ、ごめんね。


「んー、ほんとに眠らせるならそれでもいいけど…それだと"力"入れるかどうかだけ違くて、基本はいつもの"あおさき"と同じになっちゃうわよ?」

「そうね……はぁ。これだから台本のないフリートークは面倒なのよ」

「身も蓋もないことを…」


あたしも同意はするけどね。


「まあいいわ。歌も踊りもないのだもの。眠りたい人はそのうち眠るでしょう?私たちはいつも通り話しまよう?」

「おっけー。じゃあ話題提供よろしく」


眠らせる方向はなしにして、普通にお話していく形で。ほんのちょっとだけたまに"力"入れるぐらいはしてもいいかな。


「話題というと、最初はわかりやすい話でクリスマスについてでどう?」

「いいわね。クリスマスどう過ごすかとか?」


悪くない話。"あおさき"本編でも軽くしか触れてないし、当日だからこそ話せることも色々あるわ。


「ええ。今日は24日でしょう?このイベントの後、あなたはどうするの?」

「んー、どうするかなぁ。ラストショーは次の組とのコラボあるし、お昼過ぎまでいなくちゃいけないのよね。そのあとは…普通にうち帰るくらい?」

「そう…。あまり面白くもないわね」

「えー…だったらあんたはどうなのよ?」


理不尽な物言いにむっと言葉を返す。

面白くないのは事実だけど、面と向かって言われるとむかっとした。


「私はどこかのデパートでケーキを買って帰るわ」

「あたしとそんなに変わらないじゃない」

「そうでもないわ。昨日のうちに色々調べておいたのよ。大きなデパートの中に洋菓子店が多数入っていることは知っているわね?」

「え?うん」

「複数の店舗があるのはもちろん、それなりに大きな駅だとデパートそのものがいくつかあるでしょう?そのすべてに多数の洋菓子店が入っているのよ」

「まあ、うん」


駅近、というより駅に併設されているデパートはたくさんあるし。ケーキ屋さんがたくさんあるのは知ってる。あたしも買い物で寄ったりするもの。


「私はお店を回りながらホールケーキを買うつもりよ」

「ふーん…ホールケーキねー」


そう言われるとあたしも食べたくなってくる。大きいケーキ…。


「…ん、知宵さ。一人でホールケーキ食べるの?」

「……悪い?」


あ、ちょっと恥ずかしそう。顔赤くなってる。


「ふふ、べっつにー?」

「な、なによ…別にいいでしょう?」

「いいんじゃない?あたしはいいと思うわよ?」


照れ知宵の可愛さはなかなかきゅんとくるものがある。


「あ、知宵。いいこと思いついた」

「…なに?」


ほんのり頬が赤いまま不機嫌そうに聞いてくる。可愛い可愛い。あたし的にかなりグッドなアイデアだから気に入ってくれると思う。


「よかったらあたしのうち来ない?」

「家に?」


目を丸くしてぱちぱちと瞬きを繰り返す。長い睫毛まつげが揺れる。


「そ。あたしの家」

「それは…ケーキを持って?」

「うん」

「いいわよ」

「あ、ほんと?じゃあケーキの買い物一緒にしましょ?」

「そ、そうね…」


知宵の頬がちょっぴり赤くなる。照れてるみたい。

相変わらずちょろいわね。


「はい、じゃあ完全にあたしたちのプライベートな話でしたが、あたしが何を言いたかったというとですね。どうせならクリスマスパーティーしよう、ということです」

「それなら、ケーキ一つで足りないのじゃなくて?」

「そう思う?たぶんうちのママとパパが作るわよ。二人でイチャイチャしながら家で仕込んでたもの」

「あ、あら。それは…ええ、あの二人ならそうでもおかしくないわね」


ほんとに。うちの両親どっちもお料理好きで特異なんて…。三人じゃ絶対余るわよ。だから知宵とか他の人にも…まあ今はそれはいいわ。


「うちのママとパパはそんなんだから、ケーキは一つで大丈夫。ていうか一つでも多いくらい」

「わかったわ。でもクリスマスパーティーだなんて…日結花、今考えたの?」

「ん?ううん。前から決まってたけど、三人でやるのも寂しいし知宵も来てくれたらなって思っただけ」

「なるほど。一緒にやるのはいいけれど、どうなのかしらね」

「え、なにが?」

「クリスマスパーティーそのものについてよ。リスナーの人たちも今日か明日か、帰ってからやる人が多いのかしら」


んー、どうだろ。あたしは割とみんなやると思うけど。規模は小さいにしても家族でとか友達でとか色々。


「聞いてみる?ええと、クリスマスパーティーやる人手挙げてー。昨日でも今日でも明日でも、なんなら一昨日でもいいわよー」


観客席にぶんぶん手を振って話すと、いたるところから手が挙がる…。


「って多いなぁ…ほとんどみんなじゃない」

「9割ほど…?いえ、わからないわね。下げてくださって大丈夫ですよー。クリスマスパーティーやらない人、手挙げてくださーい」

「いやそれ挙げにくいんじゃ…あ、いた」


このみんな手挙げててわいわいしてるところに自信持って手なんて…と思ったら普通にいたわ。二人だけ。


「すみません。今手を挙げている人、そのまま挙げておいてください。そちらにマイク運びますからね」


言いつつ舞台上のテーブルにある機械を操作する。ボタンをいくつか押して空中移動遠隔操作装置くうちゅういどうえんかくそうさそうち、通称ソラソくんを動かす。


「知らない人に説明しておくと、このソラソくん。簡単に言うとドローン?ロボットです。手の挙がってる空中に物があると、それに反応してそこまで動いてくれるんですね。だからマイクをクリパ不参加リスナーのところまで運べるというわけです。以上、咲澄日結花の解説コーナーでした」


あたしの説明中にもソラソくんはすいすい移動して、リスナーの元へ飛んでいく。小さな灯りがぴかぴかしていて妙に可愛らしい。


「はい一人目の方。クリスマスパーティーに参加しない理由を述べてください」

『えぇ!?』


ほんとに"ええ!?"よ。

ごめんなさい知らないリスナーさん。でもこれが"あおさき"なの。許してね。


『こ、これもうマイクがっ…』

「入っていますよ。どうぞ好きにお話してくださいね」

『好きにと言われても…あの、実はお…僕の彼女がアメリカで仕事をしていまして。31日に帰ってくるんです』


わー結構あっさり喋り始めちゃったー。


「ふむ、それで?」

『は、はい。彼女はあんまり騒がしいのが好きじゃないので、僕が一人で歓迎しようかと考えていまして』

「そう…。それから?」

『な、なので年末まで実家に挨拶しに行ったり家の掃除したりをするぐらいです。彼女がいないのにケーキを食べるのもあれですから…はい』

「…そう、結構よ。ありがとう。マイクを返してもらって構わないわ」

『は、はい。ありがとうございました…』


……。


「なんていうか、あれね。普通に良い話だったわね。本人がいる前で感想言うのもなんだけど、彼女思いのいい人じゃない」

「そうね。私の予想していたものとは大きく違ったわ。少しだけ残念よ」

「ちなみにその予想って…いやいい。やっぱ言わなくていいから」


顔見たら聞きたくなくなった。すっごく嬉しそうに言おうとするんだもの。絶対一人寂しいクリスマスで~とかなんとか言おうとしてたわよ、この子。


「そう?聞きたくないならいいわ。それよりもう一人の方…マイクは届いたようね。もう喋っても大丈夫ですよ」

『…私は、妻に先立たれまして』


わー!今度は重たい話ー!


「そう…。それはお悔やみ申し上げるわ」

『というのは冗談ですが』

「…言いたいことはそれだけかしら?」


あ、知宵怒ってる。口元むっとしてるからすぐわかったわ。どうでもいいけど知宵って可愛い怒り方するのよね。


『続きをいいですか?』


やけに図々しいお爺さんね。ここからだとスーツっぽい服装しか見えないしなんとも言えないけど、声もしっかりしてるから紳士っぽい感じはするのに…。


「どうぞ」

『先立たれたわけではありませんが、クリスマスに事故にあったというのは本当でして。それからクリスマスに祝いの席を設けることをしなくなったのですよ。そのぶん年越しを二倍楽しんではいますがね、ははは』

「そうでしたか…」


…そこまで重くはない、かな。ちょこっとくらい?知宵の不機嫌も直って…微妙?イラッとしたのはなくなったみたいだけど、まだ許してないような雰囲気あるかも。


「ではおやすみなさい」

「あー…ええっと、と、とりあえずマイク戻しまーす」


知宵がさくっと"力"流して眠らせちゃったので、話を戻すためにも場を取り持つ。

フリートークっていっつもこんなんだし…これを楽しんでるリスナーってやっぱりみんなどこかおかしいわ。



「はいはーい、普通のお便りのコーナーでーす」

「今日のお便りは今朝みなさんが書いたお手紙です。早速読みますね。まずはこれを…はい、"ゆうしゃあおくん"からいただきました」

「「ありがとうございます」」

「"青美さん、咲澄さん、おはようございます」

「おはよー」

「"今日はクリスマスイブですが、お二人はいかがお過ごしでしょうか?"」

「…いや、普通に"ラストショー28"やってるから。書いたときもう会場にいたでしょ」

「"僕はお二人のトークショーを見て、帰って家族でチキンとケーキのパーティーです。すごく楽しみです"」

「楽しそうねー。あたしもパーティーするわよ。知宵とも一緒にね」

「…やけに相槌入れるわね。どうかしたの?」

「え、別に?なんとなく?」

「それならいいけれど…。続き読むわね。"何かクリスマスにまつわるお話ありますか?"だそうよ」

「また唐突な切り方…。クリスマスって、だいたいさっき話しちゃったじゃない」

「ええ。何か…例えばサンタクロースについての話はあるかしら?」

「あたし?サンタって…んー、あたしのうちってサンタ二人いたのよ」

「二人?」

「うん。ママとパパ。プレゼントはクリスマスツリーの靴下に入れておいてくれたんだけど、朝とか普通にサンタの格好してご飯作ってたわ」

「…あの人たち、昔から変わらないのね」

「ふふ、そうなのよ。楽しいからいいんだけどね。知宵はどうだったの?」

「私は…お父さんがサンタ役をやってくれていたわ。私に気づかれないように小細工をよくしてきたわ。実際気づいたのは小学校でサンタが両親だと同級生から話を聞いてからだったもの」

「へー、小細工ってどんなの?」

「例えば、外の雪にそりで後を付けたり、フィンランドのサンタクロースにメッセージを送ってもらったり、トナカイの足跡を作るために木工ミニトナカイを作ったりと色々よ」

「…そっか。知宵の家って石川だから雪とか結構すごかったのね」

「ええ。それは東京と比較にならないわ」

「…ん、サンタクロースのお話、というかクリスマスのお話はこんなところかな。じゃあ次ー」

「はいこれ。今度は日結花が読みなさい」

「おっけー」



「"あぁ、どうしてわからなかったの?"」

「"唐突なのね"」

「"ええ、突然。すべてわかってしまったのよ"」

「"何がわかってしまったの?"」

「"それは愛っ"」

「"愛?"」

「"そう愛!私が気づいていなかっただけ…"」

「"ようやくなのね。ずっと前から…私は知っていたわ"」

「"それもわかったわ。ごめんなさい"」

「"いいえ、私が欲しい言葉は"」

「「"ありがとう"」」


……。


「久しぶりにいきなりお歌コーナーやったわねー。はー楽しかったっ」

「内容はともかく、あなた本当に慣れているわね…」


やだもー、真面目なトーンで褒めないでよね。照れちゃうわっ。


「ふふん、あたしだもの。だてにRIMINEYでお姫様やってないわよ」

「その点は私と大違いね。私には即興で歌に入る真似はできないわ」

「そう?知宵も結構綺麗にできてたと思うけど?」

「私のは青美知宵自身でしかないのよ。あなたはきっちり一種の役柄になりきれているわ。言ってしまえば声だけというより、全身でキャラクターを演じていることに近いのね。…日結花、あなた舞台の方が向いているのじゃない?」

「…うーん」


ここまで真剣に言われると思わなかったなぁ。この子、今がイベント中だってわかってるのかな。フリートークだけどイベントはイベントよ?


「…舞台はRIMINEYのイベントでかなりやっちゃってるから」

「あぁ。私は見たことないけれど、有名な話ね」

「うん。それに…ただでさえ忙しいのにこれ以上お仕事増やすのはちょっと…いやかなり面倒かも」

「…それもそうね」


口を結んでゆっくりと頷いた。

おそらく、あたし以上に面倒くさがりな知宵には今伝えたことで十分なはず。表情だけでも嫌そうなのわかったし。


「でも、いつかママみたいな元気いっぱい超人になれたら色々やってみるかもしれないわ」

「それは無理よ」

「ふふ、だから希望的観測ってやつ?」

「なるほど…。ええ、なら始めるときは言いなさい。私はいつでも応援しているから」

「ふふ、ありがと」


嬉しいこと言ってくれるわね。あたしも同じ気持ちだし、やっぱり親友っていいものだわ。大勢の前で恥ずかしげもなくこんなやり取りできるのは知宵ぐらいしかいないもの。


「よーし、じゃあ今度は知宵の歌でも聞きましょうか!みんなー!知宵の歌、聞きたいわよねー!!」

『聞きたいー!!!』


"聞きたいですー!""やったー!最高ー!""これだから"あおさき"は好きなんだっ!""どうせなら"力"も流してくださーい!!"

とかなんとか、聞こえたり聞こえなかったり。どさくさに紛れて僕も私もクリスマスパーティー行きたいって叫んだ人は帰りなさい。帰って自分で開きなさいな。


「はぁ…仕方ないわね。本気で歌ってあげるわよ。"拡歌"として"力"を込めて歌ってあげるわ」

「え!そこまでやるの!?」

『やったぁぁ!!』

「ふふ、歌を歌うなら"力"を入れないと損でしょう?」

「そ、そうかしら…」


ちょっとあたしにはわかんない感覚。


「でも、やりたいならやっちゃって?抑えならあたしでもできるし、そっちは任せてちょうだい」

「ええ、任せたわ。なら、もう始めるわよ」

「はいはい。いつでもどうぞー」


時間は無限にあるわけでもないので、今決めたことをぱぱっと始める。行き当たりばったりな"あおさきれでぃお"の"フィオーレラストショー28"はずっとこの調子。

最初から最後までほんとにこんな感じ…このあたし予想は外れないわね。だって"あおさき"だもの。とりあえず今は、知宵が"力"入れてみんなが上がり過ぎないようにときどき声出ししていかないと…。下手したらこれが今日一番に大変なことかもしれないわね。頑張らなくちゃ。


『メリークリスマス!!!』




――――――――――

あとがき


クリスマスパーティーについては…むしろ本当はそちらがこのSSの本編みたいなものの予定でしたが、12/24の日付的に時間的余裕がなくなったのでここで止めました。

続きはほんの少しなら書くかもしれません。主に日結花と郁弥の絡み部分のみ抜粋のような形で…。それでは、メリークリスマス。


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