『魔族領』一
洞窟を進むこと数時間。
「んぅー! 長い洞窟だったわねっ!」
長かった洞窟を抜けると、少し開けた空間のある場所に出ました。
現在、私の隣に座っているのはナターリア。
先導係はアロエさん、アルダさん、リオンさんの三人です。
今が夜なせいでよく判りませんが、地面の色は紫色。
空は夜になっていて、星と月が力強く輝いています。
「おい、前方に明かりが見えるぞ!」
前の方を指差してそう言ったのは、アロエさん。
前方には確かに無数の灯りが見えています。
本体が通過した後だという事を考えれば、味方の仮設基地でしょう。
「シルヴィアさん」
「――ふんっ、安心しろ。連中は全員人類軍だ」
「ありがとうございます」
私達の部隊は味方の前線基地の手前にまで移動します。
「そこで止まれ!」
と、当然のように見張りに止められました。
見張りの男も疲れているのでしょう。
その表情は、どこか眠たげです。
「随分と遅いご到着ご苦労様。それで、あんたらは? 慰安部隊なら今日は要らないぜ」
女性ばかりのこの部隊。
その格好は確かに通常の部隊に比べれば、露出度が高めです。
見張りの者も私達一行が正規の部隊では無いと見抜いての言葉なのでしょう。
「違います。私は独立遊撃部隊の部隊長、オッサン。彼女らは――奴隷部隊です」
「……まぁ味方の戦力なら何だっていい。前線は常に人手不足だしな」
「状況は?」
「村の幾つかを制圧し、本体の殆どは散らばって休んでる」
「それは……大丈夫なのですか?」
「俺が知るか。ただ明日まで何事も無ければ、本体は進軍を再開するだろう」
「敵の位置は?」
「中隊を幾つか偵察に出してるから、明日の朝には何か情報があるはずだ」
「了解です。では待機場所まで案内して頂いてもよろしいですか?」
「人数は?」
「百ちょっと」
「あいよ。おい、コイツらを案内してやれ!」
見張りの男が近場のテントに呼び掛けると、テントから一人の男が出てきました。
格好は見張りの男と同じ格好をしています。
男に案内されて付いて行くことしばらく。
「この辺りを使ってくれ」
私達は複数のテントが立ち並んでいる場所に通されました。
「境界山の突破でみんな死ぬほど疲れてる。くれぐれも、静かに頼むぞ」
「わかりました」
奴隷部隊のリーダー格として動いている三人と話し合った結果……。
割り振りとしては各テントに五人ずつ。
私は他の四人と共に一つのテントに入りました。
同じテントになったのは、アロエさん、リオンさん、アルダさん、ナターリア。
自分以外にも男性が居てくれれば緊張しないで済んだでしょう。
が、今は贅沢の言える場面ではありません。
女性ばかりで緊張はしますが、ある意味ではこれも贅沢な悩みです。
「ふぅ、流石に少し疲れたなぁー。体くらい拭きたいね」
「今湯を沸かしているから、ちょっとだけ待ってて」
早々に鎧を外して薄い布の服一枚になったアルダさん。
いえ、服というよりは……チューブトップのブラ?
下は普通に白い無地の下着。
見せ下着でしょうか?
まぁ真相は判りませんが――嬉しいみ。
そんなアルダさんを細目で見ながら、湯を沸かしている、リンオさん。
アルダさんの肉体はナイスボディーで、鍛え上げられた筋肉が美しいです。
というか、もしかして私は、男扱いされていないのでしょうか。
――空気、今は空気になるのです。
「すぅーっ……うん、勇者様も体を拭いた方が良いわね。強めの汗の匂いがするわ!」
「わ、わかりました」
空気になった途端に吸われてしまいました。
人口密度の高いテントの中で、人一倍体を密着させてくるナターリア。
恥ずかしいので汗臭い私を嗅がないで頂きたいところです。
「ねぇ勇者様」
「はい?」
「下着が見たいの?」
「――ぶっ!!?」
――見たいです。
見目の麗しい女性達の下着姿。
見たいと思わない理由がありません。
「おー? アタイの下着姿に興奮したのか! ほらっ、見たけりャ見せてやるよ!」
――ッ!?
私の方に向き直って、腕を開いて全部を見せてきたアルダさん。
腹筋はしっかりと割れています。
女性的な肉体美と、生物としての肉体美。
その両方を兼ね備えている、スーパーなアルダさん。
「おいアルダ、流石に下品だぞ」
「言いだろ別に、減るモンでもないし。何なら今夜はアタイを抱いて、て、て……」
引き攣った表情で固まったアルダさん。
ナターリアの表情が怖いです。
物凄い殺気に、流石の私のマイサンも縮み上がってしまいました。
「流石は筋肉バカ。……はい、少し冷ましたタオル」
「あ、ありがとさん」
リオンさんに渡された濡れタオルで体を拭くアルダさん。
リュリュさんの時とは違って服を着たままという訳ではありません。
これは……色々と危険です。
私は目を瞑って、別の方向に顔を背けておく事にしました。
「あーしまったな」
「アロエさん?」
「私ら賞品剣闘士は鎧を脱ぐと、全員下着なんだ」
「……へっ? あれっ、上の下着は鎧姿でも少し見えてますよね?」
「ああ、そういう格好をさせられるのが賞品剣闘士なんだ」
「ぉぉぅ……」
「ちなみにだが、着替えは下着しか無い」
「つまり?」
「私らもアルダと同じで、下着姿になるしかないわけだ」
「み、見ない方がいいですよね?」
「別に? 見たいなら好きにしたらどうだ?」
――見たい。
「だ、大丈夫です」
「見たいなら言ってくれれば、わたしがいつでも見せてあげるのだけれど……」
小声でしたが、私の左腕に抱き着いているナターリアの声はよく聞こえました。
是非とも耳元でボソボソと囁き掛けて頂きたいところ。
ややあってナターリアが離れたかと思えば――。
誰かがゴソゴソと体を拭いている音が聞こえてきました。
自由になった体を動かして壁側に向き直りまます。
しかしこれは、一体何のプレイが始まったのでしょうか。
「…………」
これは音だけを聞き、心の目でエロを視ろという事なのでしょうか。
三人が下着姿で、ゴソゴソと……。
「コレ可愛くないからもう要らないのだけれど、欲しいヒトいる?」
「あっ、私欲しい」
「もう隠れる必要も無くなったから、可愛い格好をしていたいわ」
ナターリアの声と、リオンさんの声。
彼女は一体何を、リオンさんに渡したのでしょうか?
「……勇者様ぁ?」
ナターリアが耳元で、ボソボソと囁いてきました。
ゾクゾクが止まりません。
そんなゾクゾクと一緒に、背中に何かが覆いかぶさってきました。
腕が前までやってきて……
「っ?」
頬に当たるこの感触は――素肌そのもの。
ナターリアは赤のフード付きローブを着ていた筈です。
しかもその下には黒のゴシックドレス。
普通に考えたら腕の素肌が頬に当たるワケがありません。
というか、この背中に当たっている質感は……。
服越しですが――間違いありません。
「えっ……リア、もしかして今!!?」
「うふふっ。わたしも下着だけになって体を拭いたのっ! みたいぃ~?」
――見たい。
すごく見たいです、ナターリアの下着姿。
何度も見た事はありますが、それは間違いなく何度だって見たいもの。
平時の流れで見てしまうのは耐えられます。
しかしこの、エッチな気持ちでソレを見てしまえば……?
果たして私は、この衝動を抑えられるのでしょうか。
「勇者様の体……」
耳元でボソボソと囁き掛けてきたナターリア。
存在を確かめるようなそんな声に、エッチな気持ちが萎んできました。
そうです。
ナターリアは温もりを求めて抱き着いてきた訳で、エッチな行動ではありません。
それにエッチな気持ちを抱いてしまうというのは――。
「勇者様の体、わたしが拭いてあげるから……」
エッチな気持ち、再度膨れ上がってまいりました。
温かい濡れタオルとナターリアの手が襟首から入り込んできて――。
「おっ、おっ、おっ……!」
つい変な声が出てしまいました。
が、それも仕方ないのではないでしょうか?
服の中に入ってきたタオルが、私の胸の部分から。
お腹の下くらいまでをゴシゴシとしているのです。
服を捲って拭くのではなく、首を通す穴から侵入してきたナターリアの手。
圧倒的な密着感と、耳に掛かっているナターリアの吐息。
深い場所を拭く時なんかは……。
下着一枚であろうナターリアの柔らか二の腕が私の肌に直接触れています。
……ゴシゴシ、ゴシゴシと……。
「んっ、前は終わり」
そう言って抜き取られた、濡れタオルとナターリアの腕。
前は、という事は――。
「次はねぇ……うしろだよっ」
耳元でボソボソと囁くように言われた、『うしろだよっ』というその言葉。
これは間違いなく狙っています。
ラブボール、ストライクゾーンど真ん中。
これをキャッチできないキャッチャーはホモ以外に居ません。
「ごしごしっ、ごしごしっ……」
凄く狙っているのに、しっかりと綺麗にしてくれるナターリア。
彼女は一体どこまで――私を喜ばせれば、気が済むのでしょうか。
煩悩大臣達が脳内で駆け回り、ナターリアを押し倒せと結論を出しかけています。
このテントの中にナターリアと二人きりであったら、絶対に耐えられませんでした。
「うふふっ。勇者様ぁ、つぎは下も、やってあげるね……」
ボソボソ声で囁き続けるている、ナターリア。
見張りさんが言っていた静かにしろ、という言葉を守っているのでしょう。
ずっと耳元で囁きかけられているので、ゾクゾクが止まりません。
今の私は、全身に嬉しいチキン肌が立っています。
――ん? 次は下??
「ちょ、ちょっとまっ――あっ!」
……下だけは何とか、ギリギリ死守する事に成功しました。
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