『再会』一
声を掛けてきたニコラさんを尻目に、シルヴィアさんが攻撃を開始します。
「【
シルヴィアさんお得意の氷の棺攻撃。
メイド二人は瞬く間に氷の棺に閉じ込められてしまいました。
が――いけません。
相手に死傷者を出してしまうと談合に持ち込めなくなってしまいます。
シルヴィアさんなら解ってくれると思っていた私が甘かっ――
「「はっ!」」
メイド服の二人は、いとも容易く氷の棺からの脱出を成功させました。
私は氷の棺からの脱出に成功した人物を、タクミ以外に知りません。
ライゼリックの上位プレイヤーとは、やはり桁違いに強いのでしょう。
メイドの二人は両手にフレイルを持っています。
そして、その内の一つを――シルヴィアさんに向けて投げました。
「ふんっ、当たるワケが無いだろう」
風を切る音と共に飛んできたフレイルを軽々と避けたシルヴィアさん。
空に飛んでいるというアドバンテージを存分に生かしています。
「タケル様、今の攻撃が私達以外に命中したら、その人物は死亡します」
「お二人のステータスでは即死です」
「なにぃいいいいいいいいい! それじゃあ、どうすればいいんだぁああああああ!!?」
「ヘイタケル、ヘイタケル! 逃げるのかタケル!!」
「俺はぁああああああああ! ――人々を見捨てて逃げられる程、器用じゃあない」
「そうだな! ここで逃げられるのなら、こっちの世界には来ていない!」
突然真面目な雰囲気を纏いだした、タケルさんとタケシさんのお二人。
お二人も両手にフレイルといった奇抜な戦闘スタイルです。
「タケル様、今の攻撃で私達だけを狙ったという事は、殺傷の意志は無いのかと」
「タケシ様、空を飛ばれていなければ拘束は可能です」
その言葉で固くなっていた空気が和らぎました。
「なにぃいいいいいいいいいいい! じゃあどうすればいいんだぁああああああああ!!」
「ヘイタケル、ヘイタケル! これは困ったなヘイタケル!」
そんな二人を腕組みしながら見下ろしているシルヴィアさん。
他の場所では戦闘が続いています。
が、ライゼリックのプレイヤー組が足止めされているのが大きいのでしょう。
若干押されながらも、かなり拮抗してきています。
「ニコラさん、彼らはニコラさん達の手引きなのですか?」
「ううん、違うよ。ボク等は地下奴隷都市に潜入して人を探す依頼を受けてるんだ」
「それじゃあ彼らは……」
「全くの別件。ちなみに向こうの黒い全身鎧がヨウ君ね」
視線の先を見てみると、上手く立ち回って襲撃者を無力化している黒騎士が。
「危なくなったらボクも飛び出すけど、今は様子見かなぁ」
「なるほど……」
ニコラさんと話をしていると、シルヴィさんが足を組み直しながら口を開きました。
「ふんっ、お願いしてみたらどうだ?」
何処かで聞いた事のあるフレーズです。
「お願いだとぉおおおおおおおおおおおおおおお!?」
「ククッ、そうだ。地面すれすれで戦って下さい、と誠心誠意お願いしたら考えてやる」
とびきりのS顔をして襲撃者一行を見下ろしているシルヴィアさん。
一体どこでそんな技術を学んだのでしょうか。
私には見当もつきません。
「うぉおおおおおおおお! お願いせずにはいられなぃいいいいいいいいいいいいい!!」
「ヘイ美少女様、へい美少女様!! 土下座してお願いするぜ美少女様!」
「お願いします美少女様ぁあああああ! 地面スレスレで戦って下さいぃいいいいいいい!!」
地面に額を擦り付けてお願いをしているお二人。
メイドさん二人は、そのお二人の背中に跨って馬乗りにしていました。
メイドの鏡のような行動です。
――羨ましいみ。
「ライゼリックというゲームには変態しか居ないのですか?」
「え、キミがそれ言うのかなぁ? ヨウ君はまともだよ。アレよりは……タブン……」
そうこう話している間に地面スレスレまで高度を下げたシルヴィアさん。
「ふんっ。良いだろう、ただし条件が二つある」
「タケル様に変わって問います。何ですか?」
「タケシ様が変態なので問います。何でしょうか?」
「こちら側に極力死傷者を出さないで欲しい。潜入作戦に支障が出るらしいからな」
「「「「――ッ!!?」」」」
「それと男のニンゲン二人、戦闘後にハグをさせて欲しい」
――殺人予告!!?
「うおぉおおおおおお――ッ! モテ期が来たのかぁああああああああああああああ!!」
「タケル様は重要な部分の情報が抜け落ちてしまったわ」
「タケシ様も顔が緩みっぱなしだわ」
「要求を全面的に受け入れるぞぉおおおおおおおおおおおおおおお――ッッ!!」
「ヘイタケル、ヘイタケル、ヘイタケルゥゥゥゥゥゥ!!」
「「それでは、戦闘を続行します」」
「ふんっ。手加減してやるから掛かってこい」
そんなやり取りをして戦闘を再開したシルヴィアさん達。
自由になったタケルさんとタケシさんのお二人は――。
他のメンバーを瞬く間に鎮圧していっています。
流石は対人ランキングの一位と二位。
言うだけあって実力は本物です。
隊長、副隊長クラスの戦闘能力は余裕であるかもしれません。
◆
二十分も経過すると……。
シルヴィアさんは拘束され、残っているのは黒騎士の格好をしているヨウさんだけ。
タケシさんとタケルさんも乱戦に加わっています。
が、巧みに敵を利用して立ち回るヨウさんに、お二人は手こずっている模様。
「くそがぁあああああ! この立ち回りには体覚えがあるぞぉおおおおおおおお!!」
「ヘイタケル、ヘイタケル! 仲間が敵に利用されてるぜ、ヘイタケル!!」
黙って観戦していたニコラさんが手近な場所に落ちていた大剣を拾い上げました。
ゆっくりと乱戦の側へと歩いていきます。
「ボクも混ざろうかな。……いひっ……アハッ、アハハハハハハハハハ――!!」
「――ッ! タケル様! ニコラ、ニコラです!!」
「ぬわぁにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!?」
「対人ランキング三位のパートナーキャラクター、ニコラが向かっています!!」
「ヘイタケル、ヘイタケル! まさかとは思うが――」
「この商隊――PKKが居ます!!」
「美少女様、冷気ダメージも痛いので拘束を解除して助けに行ってもいいですか?」
「馬鹿言え。流石に自由にされたら動かないワケにはいかないぞ」
「「ですよね」」
「という事は、この黒騎士はぁああああああああああああああああ!!」
「ヘイヨウ、ヘイヨウ! もしかしてアンタは、ヨウなのかYO!」
「――正解だ! 折角だ、ニコラ! 二人で暴れるぞ!!」
「うん!!」
「全員散れぇええええ! コイツ等対複数人は、八割が狩られるぞぉおおおおおお!!」
「ヘイヨウ、ヘイヨウ! タイマン勝負にしないか、ヨウ!」
「――だが断る!」
それから十五分程戦闘は続き――。
襲撃者の数が半数以下になった辺りで、タケルさんとタケシさんがノックアウト。
それまで押され気味だったヨウさんとニコラさんの二人は攻勢一転。
残りの襲撃者を全員蹴散らして戦闘はひと段落しました。
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