デーモンファイター千波耶
=== 押上魔技場編 ===
東京ドームの地下に闘技場がある。それはもはや公然の秘密と言っていい。
だが、東京スカイツリーの地下巨大熱交換システムの裏に隠されたもう一つの戦いの場――君たちは知っているだろうか。
その名を押上魔技場。一年に一度、全国の魔導士たちの甲子園とも言うべき呪われた大会が行われていることを。
出場資格は魔導士であること。使用する武器は自由だ。望むならば対戦車ミサイルですら持ち込み可能だが、魔技に頼らぬ輩はここで決して尊敬されることはない。
勝利すればよし、敗北してなお生存していれば、その者には二つの選択肢が与えられる。
・その場で処刑される。
・勝者の奴隷になる契約を交わす。これは生涯解消されることはない。
十回を数える今大会、優勝のその報酬はトリノの聖骸布――公開されている偽物などではない――隠された真の聖遺物。
準決勝に勝ち残ったのは四名、
・<
・<
・前回優勝者、<闇ドクター>
そして、
・驚異の新人、<
「さて盛り上がってきましたね、実況はわたくし<黒うさ>ことバニー大黒と、解説は――千の顔とあらゆる秘密が記された本を持つ地獄の侯爵、<知識の泉>ダンタリオン太郎さんでお送りします」
「どうも、よろしく」
「年に一度の魔道の宴、誰がいちばん強いか決めやがれ大会。今回の賞品は聖骸布ということですが」
「キリストが直接――死体であれ――触れたことが確実視されていますからねえ、崇めるにしろ呪うにしろ、使いでがありそうです」
「この大会は規定により優勝者以外は死ぬかそれに匹敵する扱いをうけますので、大会ごとに顔ぶれががらりと変わるのが新鮮ですね、ダンタリオンさん」
「しかし本命はやはり、前回優勝者の<闇ドクター>美蘭選手でしょう。賭けのオッズでも飛び抜けた人気を誇っています」
「対抗は風を操るという暴魔選手でしょうか。まだ隠し玉がありそうですが」
「いやいや、美蘭選手ももともとは悪魔召喚を得意としています。その技もぜひ見たいですねえ。それに値する敵がいない、ということでしょう」
「この二人が決勝を待たずして相まみえるのは少々もったいない気がしますね」
「事実上の決勝戦と言ってもいいでしょう」
控室に彼らはいた。
千波耶と、生ける蝙蝠傘、グク松。
「言われてるなあ、千波耶。お前、ブラックホール並みの大穴だぞ」
と、蝙蝠傘が笑った。角のある蛇のような頭が石突のあたりから生えている。
「言いたい奴には言わせておけばいいのよ。あたしが倒したいのはあの女だけなんだから」
千波耶の視線の先には美蘭の姿があった。大魔女にして医師。倫理もへったくれもない最低最悪の女。
「そりゃ、結局優勝するのと同じことだぜ。骨が折れるな――傘だけに。けけっ」
じろり、と千波耶が睨む。
千波耶は中肉中背、上下ジャージで髪を三つ編みにしている。その姿はまるで高校生の部活帰りのよう。
「まずはアイツに勝たねえとな。行こうぜ」
「アンタに言われなくてもね、あたしは行くし、勝つ!」
ぱしっと自分の両頬を叩く。
「その意気だ。粋に勝って、生きて帰ろう。けけっ」
「いい加減にしないと――」
「笑うも人生、泣くも人生。だったら笑ってた方が面白いに決まってる。そこらへんがわかってねえのがまだ青臭いというか乳臭いというか――」
ごん。
大理石造りの廊下に痛そうな音が響いた。
高い壁に囲まれた魔技場。石造りで古めかしく見えるが、実は内部にカーボンナノチューブと高度な魔術を組み合わせた超耐久結晶を使用しており、核爆弾の直撃にも耐えうる設計である。
千波耶ともう一人の対戦相手が中央に進み出る。
背後に重々しい音がした。両方の出入り口が三重の落とし扉で閉まったのだ。これで、ここから出るには相手を倒す他なくなった。
今までの戦いからすると、空間操作系の技を使うらしい。
千波耶は身長に似合わぬ紳士サイズの大きい蝙蝠傘、グク松を肩に背負った。
「いくよっ!」
「応!」
千波耶の足が大地を蹴った。
「さあ試合が始まりました、実況の<黒うさ>です。まずは武里選手が仕掛けます。どうも空手をベースにした動きのようですねえ」
「傘をそのまま多様な武器に変化させる、接近戦を得意とする選手のようです。羽切選手は空間操作系の魔術を使いますから、敵から少し距離を取りたいところ――ですが先手を取られた形です」
「おっと、羽切選手、左手に巨大な裁ちばさみを取り出しました。伊達に勝ち上がってきたわけではありません、闘い方は知っている、といったところでしょうか」
「<
バット状に変化した傘で四発、最後に巨大なハンマーで追い打つ技。
しかしダメージ源の五発めは空振りに終わった。
「消えた!?」
スピードで避けたのではない、身体ごと転移したかのように数メートル移動している。
「調子に乗らせると厄介なタイプのようだな。早めに片づけた方がよさそうだ――見るがいい、僕の
「何あれ、キモ……」
羽切の右腕が生体機械へと変化していた。
巨大なホチキスのような、携帯型ミシンのような――カタカタと不気味な音を立てている。
「まずはそのダサい服。我慢ならないね」
何も掴まれていない筈なのに、千波耶の右腕が前へ引っ張られる。
「えっ、何っ!?」
裁ちばさみが右腕のジャージを切り裂いた。
「まだ傷つけるつもりはないよ。それはまた後だ。じっくり絶望してもらいたいからね」
羽切が目を光らせる。
「やば、マジもんの変態だわこいつ……」
何をされたのかわからなければ反撃のしようがない。
今わかっているのは、羽切の右腕が音を立てた後、空間を操作しているらしいということだけ――。
「出ましたね、羽切選手の
「つまり空間そのものを特殊な糸で縫い付けてしまうわけですね。その際に空間が歪曲されるので、それを利用して瞬間移動に近いことをしたり、遠くのものを引き寄せたりできるわけです」
「ちなみにお客様にはすでにお判りかとは思いますが、この放送は戦闘中の試合会場には流れていません。選手のネタバレにはならないわけですぅ」
「ここまで一方的ですねえ」
「武里選手、全身の服が切り刻まれていきます。しかしまだ宣言通り、肌には傷一つついておりません。羽切選手のこだわりを感じさせます」
「グク松、雷撃!」
開いた傘の中に隠れる千波耶。角の生えた蛇のような頭と大きな二枚の翼が広がる。角に火花が走り、バチバチッという大きな音とともに眩い雷が羽切を襲う。
「ふん、無駄だ」
空間を湾曲させ、雷そのものの進路をねじ曲げる。羽切本人には届かない。
「さて、きみには美しく死んでもらおう」
羽切が初めて積極的に動いてきた。千波耶は回し蹴りで応戦、しかし軌道が途中で変えられるのを感じる。
「痛っ!!」
剥き出しの太腿に白い布が張り付いていた。ぽつぽつと紅い点が広がっていく。
「それがきみの
肌に直接縫い付けられたというのか。戦闘中にドレスを仕立てる<
「まあいい。だいたいわかった」
千波耶は下着姿で立ち上がった。
「わかったって何がだい?」
「空間を歪曲させてるだけってことが、よ」
「しかしそれでも僕には攻撃できていないね?」
千波耶は縫い付けられた布を引きちぎった。赤い血が筋になって落ちる。手のひらで自らの血を地面になすりつけた。
「いくよ」
正拳突きを放つ、と見せかけて高速で背後に回る。姿勢を低く落として足払い。
「無駄だというのが――」
千波耶を追って振り向いた羽切、足払いをブロック、その直後。
羽切の踏んだ地面が爆発した。
「何いっ!!」
羽切が爆風にあおられ、バランスを崩した。すかさず傘の柄でひっかけられ、強引に引き寄せられたところで強烈な千波耶の飛び膝蹴り――。
「これはどういうことですか、ダンタリオンさん」
「ああ、血を媒介として爆発物に変化させたんですね。同様の術を行う魔導士は多いです。ときどき失敗して人体発火しちゃうお茶目な奴とかもいますね」
「なるほど、空間湾曲を自分で見える範囲でしか操作できないとみて足元をすくったわけですね。これは武里選手の見切り、お見事です」
「武里選手、単純な格闘馬鹿かと思っていましたが、意外に基本魔術も知っていますねえ。感心しました」
「油断したでしょ」
「このクソガキ……」
ようやく起き上がった羽切の懐に素早く潜り込むと、両の掌底を密着させた。
「<
羽切の腹部で爆発。
長躯が膝から崩れ落ちた。
「羽切選手、動きません! 勝者、武里選手――っ!!」
「これは番狂わせですねえ。低級魔術と力技で押し切りました。おっと羽切選手、まだ息があるようです」
「では放送を切り替えます、エスエス聞こえますか? 羽切選手、武里選手に下りますかぁ?」
「あんなクソガキの下僕になるくらいなら死んだ方がマシだ」
「あのさ、そのクソガキが聞きたいことあるんだけど」
下着姿の千波耶が蝙蝠傘を背負って近づく。
「なんで<
「僕の花嫁たちを見たいか?」
そういうと羽切はスマホを見せた。そこに映っていたのは純白の花嫁衣装を着た
「どうだ、美しいだろう?」
「うわぁ、キモっ」
「武里選手、ちゃっちゃととどめ刺しちゃってくださーい」
「グク松!」
フォーク状に蝙蝠傘が変化する。悪魔が持つような、四本の鋭い爪。
羽切の胸に振り下ろす。
「いいねいいねいいねぇーっ! 生きのいいコは好きよ。内蔵切り刻んでぶちまけたいわあ」
「貴様の相手は拙者のはずだが」
「そんなに死にたいんなら、電車にでも突っ込めば手っ取り早いのに。迷惑だけど」
「強い者が勝つのではない。勝った者が強いのだ。拙者は確かに貴様より弱いのかもしれん、だが勝負は下駄をはくまでわからぬぞ」
「下駄なんか一生
美蘭は9センチのピンヒールを見せびらかした。
「自分が一番強いと思ってないヤツが一番になれるわけないじゃなーい」
「おおーっと、すでに舌戦が始まっているぞ-っ!! 暴魔選手、美蘭選手、入場してくださぁい」
「どんな戦いが繰り広げられるのか、楽しみです」
「美蘭選手は指輪一つに一匹の悪魔と契約していると聞きます。両手の指十本の多彩な召喚術に加え、本人の技の冴えも超人レベル。果たして勝てる選手はこの世に存在するのか!?」
「あの世を加えても存在するかどうかわかりませんねえ」
エナメルの9センチハイヒール、網タイツにブランドのスカート、白衣ならぬ黒衣をまとい、美しい顔には毒々しいまでに赤い唇。笑みは邪悪さと残酷さを垣間見せる。ゆるくウェーブのかかった長い髪に逆十字架型のピアスが揺れ、両手の指にそれぞれ
対するは
鋭く光る眼。全身を忍び装束で覆い、電子機器を
「せっかくだからハンデをあげるわよ。これから10分、アタシは悪魔召喚を行わない。チャーンスターイムってわけよ。少しは盛り上がるんじゃない?」
「しないというのは貴様の自由。拙者はただ闘うのみ」
暴魔、スラリと背中の忍び刀<
「あら、思ったよりクール。そのやせ我慢、続けなさいな。息のある限り」
「<瞬即斬>!」
ふっと暴魔の姿が揺らめいたと思ったら、金属音がし、美蘭の背後数十メートルに現れる。
「あ、らあ?」
美蘭が振り返る。笑みがその顔に張り付いたままだ。手には注射器を持っていた。
暴魔は驚愕していた。
「拙者の刀を注射針で受けただと!?」
「いやあ速すぎて見えませんでしたね、ダンタリオンさん」
「さすが両者の実力です。スローで見てみましょう」
会場の特設ビジョンにビデオ画像が流れる。
暴魔の下半身がブレはじめ――スロー再生ですら――超ダッシュからフェイントを交えて刀ですれ違いざまに斬りかかる。美蘭はほとんど動かず、どこからか取り出した注射器二本を片手の中でクロスさせるように持ち、襲い来る刃を受けた。火花が飛ぶ。そのまま暴魔は走り去って距離を取る。巻き起こる風で美蘭の髪と黒衣が揺れた。
「美蘭選手もちゃんと見えていて、ほら、あれですね。しっかりと対応している、ということですよ」
「注射針の太さは0.6ミリ。それで斬撃を受けきる、まさに<魔技>ですねえ」
「カメラ戻しまーす」
「<乱・瞬即斬>!!」
星の形に連続して<瞬即斬>を行う乱舞技も、通用しない。タングステン系の鋼の刃が溶けてボロボロになってしまった。あの注射器に入っていた薬品の効果に違いない。
「<
薄い強化ガラス製の手裏剣は投げると視覚でとらえるのは恐ろしく困難だ。もちろん致命傷狙いというよりは牽制の技だが、ことごとく
「飽きてきちゃった。チャーンスターイムもそろそろ終わるわよ、いいのーかっなー? あ、あと、骨までドロドロに溶かされて死にたい? 石になってそこらへんに飾られるのがいい?」
耳元で囁かれる。暴魔は飛び退った。体術とスピードでは暴魔が勝っているはず、しかしことごとく容易に接近されてしまう。
「何故だ!?」
「何故でしょう、ダンタリオンさん」
「おそらく全身の筋肉の力み具合から次の行動を予測しているのだと思われます。超スピードではなく超予測力という訳です」
「しかし暴魔選手は忍び装束。外側からは観察しづらいと思われますが」
「なにせ美蘭選手ですからねえ。常識では測れません」
「なるほど。暴魔選手、息が上がってきました。かなり体力を消耗しているようです」
「強い、な」
「今頃気づくの――? だから雑魚とはやってらんないわ」
「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前。降臨せよ、風の龍!!」
九字を切り、暴魔が召喚した。東洋の龍は神獣であり、そこらの魔物とは比較にならない霊格を誇る。風を操るとはこのことか、暴魔風神。
「……へぇ」
「龍よ、咆哮せよ!」
龍の
美蘭の顔から笑みが消える。魔法円が書かれたクリップボードを前にかざし瞬時に防御結界を展開。
空気の槍はほとんど散らされたが、凄まじい突風が美蘭を襲う。
本能的に首を傾けたのが幸いした。不可視の手裏剣がうなりを上げて通過する。
頬に一筋、浅い傷。じわりと血がにじみ出る。彼女も血は赤かった――噂では黒だとか紫だとか言われていたが。
不可視の凶器は乱流によってさらに軌道が読めなくなる。
暴魔が言った。
「自身の痛みを思い出したか?」
「アタシの肌に傷……嘘でしょ、顔に? ……このクソまみれのチンタラ雑魚がぁ――っ!!」
右の人差し指の指輪を外し、手のひらに握り込む。
「アポリオン、<暗黒の太陽>、出てきな!」
「緊急事態、緊急事態、スタッフ、換気口今すぐ全部、封鎖してくださぁい! 魔技場とつながっているところ全部閉めて! 換気系統切り替えます、防護フィルター、結界フィルター共に機能全開! 急いでください! 全面封鎖です!」
「美蘭選手、キレましたねー」
地獄の底から現れた真に黒い球体。しかし底無しの闇ではなく、黒く輝いていると感じるのが不思議だ。
「何だあれは……」
あっけにとられた暴魔が呟く。
水が入った袋のように黒い球体が破れた。中からあふれ出てきたのはもちろん水ではなく、無数の
「悶えて骨になるまで食われろ、腐ったゴミども!!」
美蘭が怒鳴る。
神獣といえど降臨して受肉している間は実体――肉体がある。それを食いつくす気なのだろうか。
「巨大な本体を狙え、龍よ! 統率する個体かもしれん」
暴魔の声が震える。いかに体術に優れようと、風を操ろうと、魔技場を埋め尽くす虫の大軍をどれだけ防げるか。空気の槍が大きな虫の頭を吹き飛ばす。しかし、見る間に他の小さな虫が寄り集まり、再生してしまった。女王蜂のような中央集権型ではなく、完全な群体なのだ。
「ガアァ――ァッ!!」
全身にまとわりつかれ苦悶の雄叫びを上げる風の龍。転がって潰そうと、振り払おうと、圧倒的な数の暴力は止まらない。足の一部はすでに骨が見えている。暴魔の全身にも食いちぎられる激痛が走っていた。
「こ、降参する。命だけは――」
「アポリオン、集まれ」
逆回転のように虫たちが引いていく。美蘭は暴魔の顔をわしづかみにし、高く持ち上げた。
「地獄で後悔しな」
空中に放り投げる。いつのまにか握られたメスが
球体が消え、龍の白骨だけが残されている。
静寂が辺りを包みこむ。どこからか観客席に侵入した蝗が数十人を食い殺していた。空気が重い。
「実況! 判定は!?」
「もちりん、いやもちろん美蘭選手の勝利です! いや、圧巻でした!!」
「無敵ですねえ」
「美蘭選手、決勝戦の前に30分のインターバルが与えられますが――」
「いらない。このままやる。何か文句ある?」
「そ、そうですか、では武里選手、入場してください」
隔壁が上がり、中に通じる扉が開いた。
千波耶は新しいジャージに蝙蝠傘グク松を手に入ってきた。
美蘭の顔に笑みが戻った。
「ようこそ
「バレてんなあ。千波耶、奴の顔の傷がもうないぞ。どういう体してんだアイツ」
グク松が囁く。
「少なくともダメージを与えられることはわかったわ。それでいいじゃない」
グク松のため息もそっちのけで、千波耶が意気込む。
「美蘭。今こそ母の仇、きっちり取ってやる」
「殺した相手なんて多すぎて覚えてないわよ。武里……ああ、これかな」
美蘭は何かを取り出した。それはひとの顔の皮を平らになめし、魂を封じ込めた恐怖のカード。変わり果てた母、武里幸は千波耶を見ると涙を流し、かすれた精一杯の声で警告した。
「だめ……千波耶、逃げて……」
「うるさいよ、勝手にしゃべるな」
美蘭はそれを地面に投げ捨て、ヒールで踏みにじった。
「あああぁぁぁ――っ!!!」
千波耶が叫んだ。感情の揺れに呼応してグク松が真の姿を現す。
ククルカン、またの名をケツァルコアトル。翼ある蛇の姿を持ち、人型に化身した時には無類の怪力を誇る太陽神。龍が神獣とすればこちらは神話級の化け物である。
千波耶の全身が光を放つ。グク松が力と共に千波耶の中に入り込み、人ならぬものに変身する――。
一瞬で十年も成長したように見えた。プロポーションも体格も別人だ。けれど千波耶は千波耶だった。三つ編みが自然にほどけ、美蘭を睨みつける。それは敵を倒そうという確固たる意思だ。
「馬鹿な……神話級の化け物と融合して人の精神がもつわけがない――」
美蘭が無意識に危険を察知し、横に動いた。千波耶の前蹴りが通り過ぎる。数十メートル後方の壁にあり得ない衝撃音が響いた。
母のカードを取り返し、千波耶は美蘭を指差した。
「美蘭、お前を倒す!!」
「はっはっはあっ!」
聞くものの全ての体毛が逆立つ笑い声をあげ、美蘭は右親指の指輪を外す。
「<
次元を超えて奇妙な悪魔が出現した。長方形の手術台に、包帯でぐるぐる巻きにした頭と手足がついている。その頭には嘲笑するかの如く大きく裂けた口。手術台の部分にはグロテスクな内蔵のようなものが脈打っている。美蘭の契約する悪魔の中で、最も古くからの、そして最も強力なもの。千波耶に負けない魔力のオーラが感じられる。
「ああこの感じ、久しぶり――本当に久しぶりに気合の入った
「決勝戦、開始します。ファイト!!!」
決勝戦の決着はどうなる!? 千波耶は、美蘭は!?
あたしたちの戦いはこれからだっ!!!!!
長い間ご愛読ありがとうございました!!!
連野純也先生の次回作にご期待ください!!!
「打ち切りENDかよ……」
終
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