One more time,One more chance

 僕たちは突然終わってしまった。永遠に。

 朝起きるたびにこれは嘘だ、と思う。

 けれどやっぱり空虚な日常が僕を圧倒してしまう。


 やりきれなさに僕は街に出る。

 きみの通った道。あの頃、登下校でよくきみを見た。幻像を探して歩く。


 校門の前で事故にあったんだったね。

 そこに居あわせた訳ではないけれど、その瞬間の光景はありありと瞼の裏に描ける。


 誰かが花を供えていた。

 かなりの数。


 ああ、そうか。きみはこんなにも愛されていたんだ。


 何も持参していないことに、今更ながら気がついた。

 ちょうど近くに花屋があった。

 せめて僕も、きみに花を贈ろう。

 僕ときみとの思い出のために。


 花を買って店を出ようとした時、店員がひそひそ話しているのが聞こえた。

「また来たね。……ってやつ?」

「たかがアニメなのに」 


 言いたければ言うがいい。劇場版の新作まで待てば、もう一度きみに会える。

 それからは……。本当に……。






                    終


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る