Episode:02-02 出会い
◇The Girl
――困っちゃったな。
家族みんなが手が放せなくて、あたしが預け物の引き取りに来たのだけど……店の場所が分からない。
近くまで来てるのは間違いないけど、その先がさっぱり、だった。
この町は古くからあるせいかとても道が入り組んでて、おかげで一本路地を間違えると、ぜんぜん違う方へ出てしまう。
時計を見ると、もうかれこれ三十分くらい迷ってた。
ぜったい、母さんには言えない。こんなこと知られたら、それこそ何を言われるか……。
もう一度メモで番地を確かめて、顔を上げる。目標物から見てもこの周辺、そう思いながらあたりを見まわした。
首都のアヴァンシティに似て、落ち着いた石造りの街並み。
立ち並ぶ建物はさほど高さはないけど、窓辺が色とりどりの花で彩られてとってもきれいだ。
――こんな街で、すごしてみたいな。
なんとなくそう思った。
あたしは今まで、ひとつの場所に落ち着いて住んだことがない。長くても半年、短いと一週間そこら――もっとひどいと、毎日移動しながらだ。
だからいつも、こんな普通の暮らしに憧れてた。
普通に毎日を過ごして、みんなでテーブルを囲んで……それが出来たら、きっと楽しいだろう。
でもそれがムリなことも、十分わかってた。
一瞬泣きたくなって唇を噛む。
誰が悪いわけじゃない。だから諦めるしかない。けど、けど……。
その時あたしは視界の隅の、こっちへ来る男子に気がついた。
慌てて涙をぬぐう。
ダーティーブロンドの髪に、琥珀色の瞳。年はあたしと同じくらいか、もう少し年上だろう。ただあたしが普通より小柄なせいもあって、けっこう身長差がある。
まっすぐこっちを見てるのが印象に残った。
畏怖も何もない、ストレートなまなざし。
――こんな風に、あたしを見る人がいたんだ。
対等に、あたしを見てくれる人が……。
その彼が目の前まで来て、あたしはまたうつむいた。どうしていいかわからない。
けど、彼が先に声をかけてきてくれた。
「そんなに泣くほど――何困ってんだ?」
その声がなぜか信じられないほど胸に染みて、また涙がこぼれた。
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