Episode:01-20 闇のなか

◇Rufeir

「もうこれでいいから。みんなご苦労さま」

 そうムアカ先生が言ったのは、もう時間も分からないほど手当てを続けた後だった。

「後はこっちで引き受けるから。あなたたちはもう、部屋へ帰って休みなさい」

「はい……」

 最後の回復魔法をかけ終えて、あたしは立ち上がった。

 ふらつく足元に力を入れて、どうにか歩き出す。

 頭が痛かった。それに吐き気がする。疲労が限界を超えているせいだろう。

「ルーフェイア、大丈夫か?」

 見かねたのか、シルファ先輩が声をかけてくれた。

「はい、大丈夫……です」

 やっとそれだけ答える。

 本当はここへ倒れてしまいたかった。でもそんなことをしたら、治療の邪魔になってしまう。

 出口までがひどく遠い。

「あ……」

 また足元がふらついて、手から太刀がすべり落ちる。

 態勢を立て直せない。

 ――倒れる。

 そう思ったとき、誰かがあたしの身体を支えた。

「シルファ、私とルーフェイアの武器を持ってくれませんか? 私はこの子を連れて行きますから」

 タシュア先輩が言いながら、あたしを抱き上げてくれる。

「すみません……」

 それだけ言うのが精一杯だった。

 意識が遠のく。

 必死に繋ぎとめようとしたけど、どうすることも出来なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る