3話その2 歯止めが利かない!?
今、目の前に立つ美波は自分のことを美波と名乗り、俺のことを『お兄ちゃん』と呼んだ。
それは、つまり……
「元に……戻ったのか……?」
テーブルで向かい合ったまま、見つめ合う俺と美波。
コクっと、美波は静かに頷いた。
長かった……。長かった入れ替わり生活もようやく終止符が打たれたのだ。
「……本当に……美波なんだな……?」
「うんっ……! 私だよっ……! み、美波……美波だよっ……!」
俺は立ち上がり、美波の方へ駆け寄る。美波も席から立ち、俺は美波を抱きしめた。
美波も俺を強く抱きしめ返す。
「おかえりっ……!」
「……た、ただいま」
俺はハッと、我に返って美波を離す。
……俺ってやっぱクソ野郎だな。
体が美波だと、理性が抑えられる。
「…………?」
美波は突然突き放されたことに、首を傾げる。
「そ、そうだ。千綾はどうなってるんだろ? ちょっと電話してみるわ」
千綾と美波の入れ替わりが発生してから、念のためと交換しておいた千綾の連絡先に、俺は電話を掛けた。
すると、俺の目の前から、着信音。
「あ、さっき千綾ちゃんと交換したんだった」
「なら、美波に電話を掛ければいいんだな?」
「うん……」
俺は美波のスマホに電話を掛ける。が、一向に出る気配がない。
「まあ、この入れ替わりが終わったんなら、アイツのことだ、すぐ飛んでくるよ」
「そうだね!」
美波は笑顔で答える。
「でも、なんで突然治ったんだ?」
「うーん。私は分かんない……。もしかしたら千綾ちゃんの方に何かあったのかも」
「千綾の方……? オムライス食ってただけなんだが……」
「そっか」
美波は首を傾げたが、瞬時に笑顔に戻る。
「でもよかった」
どうやら一瞬だけ考えて、分かんなかったからそれでいいや、と、そう思ったのだろう。実に美波らしい。
「本当によかったよ」
「うん」
そして美波は、美波は美波らしく、背伸びをして俺に唇を重ねた。
優しく、甘い、それでいて濃厚なキス。
舌を吸い上げられ、頭が真っ白になる。
糸を引きながら、美波は逃げるように唇を離す。
「ふぅ……」
「…………えっと……」
一切拒まない俺に、美波はニタァっと小悪魔的笑みを浮かべる。
「お兄ちゃん……やっぱり私のこと……好きなんでしょ?」
背伸びをして、俺の口元で喋る美波を、俺はただ見下ろすだけ。
「千綾じゃなくて……私を愛して……?」
上目遣いで俺の目をジッと見つめたまま離さない。
「この前の続き、しようよ?」
「前?」
「そう、入れ替わった次の日の……朝にしたお兄ちゃんとのキスが……忘れられない……。思い出すと……ここが、ムズムズするの……」
美波は下半身を手で押さえる。
ダメだ。俺と美波の歯止めはもうとっくに利かないところまで来てしまった。
「どうなっても知らねえからな?」
どうなっても知らない。今の美波と俺は、間に千綾も何も挟んでない。正真正銘の兄妹なのだ。
それでも、俺は……。
俺は美波の柔らかい頬を強引に掴むと、柔らかそうなその薄桃色の唇にかぶりつくようにキスをした。
「くちゅっ……ちゅっぱっ……」
糸を引く。美波の舌を吸い、舌を絡ませ、美波の唾液を味わうように、酷く荒々しく、時に優しく、記憶が飛ぶような、濃密で、歪んだキスをした。
「かはっ……ごほっ……」
美波は呼吸ができなくて、無理矢理俺から唇を離す。が、俺は美波を床に押し倒し、美波に呼吸させる暇を与えない。唇を再び覆い重ねる。
「んちゅっ……うっ……うっう……」
逃げ場を無くした美波はただされるがまま。
ツーっと。俺の太ももが生暖かく湿ってゆく。
俺はキスをやめ、下半身に目をやる。
美波の部屋着の股から、シミが広がってゆく。
「…………」
俺は美波の顔を見る。
目が合うと、美波は顔を真っ赤にし、両手で顔を隠す。
「と……とまんないよぉ……」
ツー。ツー。ツー。
美波から溢れ出る液体が、一つの湖を作るように床に広がる。
「あっ……はぁ……あぅ……」
それは、ようやく止まる。
顔を真っ赤にして、涙目で恥ずかしさを我慢する美波に、俺は思わず本音を零した。
「可愛い」
「ひどいよぅ……」
再び唇を重ねる。今度は軽く、触れる程度。
俺は起き上がる。
水溜りのように広がったそれの中心に、股を閉じて寝ころがる美波をお姫様抱っこっで抱え上げる。
「えっえっ!?」
突然、抱え上げられた美波は慌てる。
「汚しちゃったから洗わないと」
おれは美波を抱えてお風呂に向かった。
脱衣所に着くと、美波を下ろし、キスをしながら、美波の服を脱がせる。
柔そうな、モチモチとした白い肌。
ピンク色のブラジャーとショーツ。
かなり大きな胸は、上等なメロンぐらいの大きさ。
俺は美波の背中に手を回し、ブラのホックを慣れた手つきで片手で器用に外す。
「あっ、……」
美波は慌てて胸を隠す。
俺は気にせずしゃがみ、ピンク色の真ん中から浸みたショーツに手を掛ける。
「ほら、足上げて。転ぶなよ」
美波はぎゅっと目を瞑って、足を上げる。
俺は美波のショーツを下に下ろし、ショーツを外す。
美波は腕で股と胸を隠していた。俺は服を脱ぎ、お風呂の扉を開ける。
シャワーを流しながら、俺は手にボディソープを手に広げ、泡立てると、美波の体に塗った。
「ひぅっ……」
美波は胸と股を隠しながら、ジッとしている。
肩から腕を沿って、柔らかいお腹をなぞって、背中に触れて、足を下から上に撫でる……。そして指は、太ももで止まる。
「ほら、手どけて」
「……イヤ……は、恥ずかしい……」
「汚ねえままだろ」
「…………だって……」
「ほら」
「……あんまり……見ないでぇ……」
ゆっくりと、美波は手をどかす。
俺は美波の股に指を当てる。
「あぅっ……」
ビクン、と、美波は揺れる。腰が砕けるように、中腰になって、俺から離れる。
「ちゃんと洗えなかった」
「……ひどいよぉ……お、おにぃ……ちゃ……ん……」
俺は美波の股に再び手を伸ばす。
指を沿せ、薄く、生えかけのような陰部の毛。気にせず俺は股に指を挿れる。
「あっ……ぁあっ……」
カクカクと、美波は悶えだす。
ヨダレを垂らしながら、美波は虚ろな表情で、こちらを見てくる。
「ほら、流すよ」
シャワー美波に当て、美波の体を隠していた白い綿のような泡は、いとも簡単に流れ落ちる。
「はぁ……はぁ……お、お兄ちゃん……もう……我慢できないよぉ……」
美波は虚ろなまま言う。
「ここで……ここで…………しよぅ……?」
「お風呂で? 部屋まで我慢できない?」
美波は我慢できない小動物のように頷いた。
「じゃあ、目を瞑ってて」
美波はそっと目を閉じる。
俺はそんな美波にキスをして、美波を抱き抱え、お風呂を出た。
ビチョビチョのまま廊下を歩き、二階に上がり、俺の部屋に入り、美波をベッドに下ろす。
「きゃっ……」
ビチョビチョな美波に、俺は覆い被さる。
「いいよ、お兄ちゃん……」
美波は俺を求めてくる。
髪を撫でる。
実の妹とそういう行為をする。多分、人間の
何のために神は兄妹で結婚できない理由を作り、何のために神は俺と美波を兄妹にしたのだろう。そして、何のために神は千綾と美波を入れ替えたのだろうか。
まぁ、どうでもいいか。
だって、今の美波は…………。
「千綾は本当にそれでいいのか?」
すると、美波の悶々としていた表情が、瞬間にして素に戻る。
「……はぁ」
ため息を漏らした。
美波は起き上がり、布団を手に取り体かけ、体を隠す。
「いつから?」
酷く、冷静な声。
そういうことだ。
俺は部屋にあったタオルで体を拭き、パンツを履いた。
そして、俺は聞き返す。
「何が?」
「いつから私が千綾だって気付いてた?」
「『入れ替わった次の日の朝の続き』」
本物の美波ならば今日の夕方の続きあるいはさっきの続きと、言うだろう。しかし、それを知らない美波は、それしか目撃してない千綾である。
「あっそ」
見破られた美波は、実に千綾らしい素っ気のない返事。
「じゃあつまり、貴方と美波ちゃんはあの時以外にもこういうことしていたわけね? 私の体で」
「それは謝る。けど、そんなことを突き止めるために美波のフリをしたのか?」
「もちろん、違うわ」
「じゃあ、なんで……?」
「いやいや。まずは約束を破った制裁を受けなきゃ、って言いたいところだけど、私も同じことしちゃったし」
美波は一呼吸置き、
「私は最後までするつもりだったわよ。知名君が満足するまで、ね」
「どういうつもりだ?」
「別に。一回美波ちゃんを抱けば、貴方の気持ちが冷めると思って」
☆☆☆
「別に。一回美波ちゃんを抱けば、貴方の気持ちが冷めると思って」
本当は、違った。
入れ替わりが起きてから、私は──遠藤千綾は、嘘しかついてない。
別に、知名君と美波ちゃんを引き離したいわけじゃない。ただ、知名君が、他の誰でもない私に取られるのが一番嫌なのだ。
だから、奪ってやりたかった。
私から。
知名君を。
……違う。
信じたかった。
知名君を。
──私の内面を好きでいてほしかった。
私の頬に一粒の雫が零れ落ちる。
「美波ちゃんが羨ましい……」
知名君と素直にお話しできるし。
知名君に愛されてるし。
知名君を好きでいられるし。
「あのさ? よく分かんねえんだけど、俺のこと嫌うのやめれば?」
胸が抉られるよう。
「それはムリ」
また、心にもないことを言ってしまった。
しかし、私の素直じゃない心を、そっと包み込むように、彼は言った。
「じゃあ、好かれるように努力するしかねぇな」
「…………えっ……?」
知名君は優しく、そっと私の頭を撫でた。
☆☆☆
「じゃあ、好かれるように努力するしかねぇな」
俺は優しく、美波の頭を撫でた。
「…………えっ……?」
美波は驚きの声を出して固まる。
なんか、分かんねえけど。千綾は今、泣くほど苦しんでいる。
俺と千綾の仲は拗れていた。それは昔からだと思っていた。
どうやら理由があるらしい。
これは小説じゃない。ドラマでもない。映画ですらない。
だから、必ずハッピーエンドってわけじゃないし、グチャグチャに拗れているわけでもない。
きっと、何か一つ、些細なことなんだと思う。
それを解くことはきっとできないのかもしれない。
けど、グチャグチャにもつれ合った先で、きっと俺と千綾はまた再び、繋がるはずだ。
「仲直りがしたい」
俺のベッドの上で、泣きじゃくる美波に向かって、俺は言う。
「俺に原因があるなら、謝る」
「…………ひっく……しっ……くっ」
「だから、俺は千綾と仲直りがしたい」
俺は美波に手を差し伸べた。
「…………私には……その手を握る価値なんてない。知名君にも……、美波ちゃんにも……酷いこといっぱいした……!」
「そんなことは考えなくていい。千綾はただ、俺の手を握り返せばいい。俺は絶対離さないから。だから、俺と千綾が得るはずだった思い出、失くしてきた思い出、これからいっぱいの思い出を作ろう? 俺と千綾で」
「…………ぅ、うんっ……!」
美波は泣きながら頷いて、俺の手を取った。
そして、俺と千綾は仲直りをした。
それから、数日、千綾と美波の入れ替わりは解決していない。
でも、俺と千綾と美波の日常は、以前よりも明るく、素直に、カラフルな日常になった。
──が、俺と千綾の関係は続いていた。
「お兄ちゃん、もっとキスしてぇ……」
千綾は舌をちょこんと出す。
綺麗で、女優のような女の子。
俺はその女の子の舌に吸い付いた。
「んちゅっ……」
俺と、美波は何一つ変わってない。
このことを、幼馴染はまだ、知らない──。
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