第5話
「きゃああああああ“““ーーッッ!!!!」
もう駄目だ。
あの鈴はどこから鳴ったんだろう。本当にタイミングが悪すぎる。鈴もカメラみたくどこからともなく出てきたのだろうか?
なんでこのタイミングで?
だがもうそんな事はどうでもいい。
私は地面に座り込む。どこに行っても逃げ場はないのだ。
もう諦めよう。
そして、観念して上を仰いだ
その時だった。
誰か上に居る。上のフロアからこちらを覗き込んでいるのだ。
「たーーすーーけーーてえええええええーーーーッッッッッッ!!!」
喉がはち切れんばかりに叫んだが、普通に考えてこんな化け物を倒すなんて不可能だ。あの人はきっと気づくだろうがどうする事も出来ない。
逃げての方が良かったかな…
そんな事をふと思った
獣がこちらに飛びかかる。
またシャッターを切る?もう効かないかも
ああ、死んだ。
………………………。
…死んだ?
反動で瞑った目を恐る恐る開けると、上に居たであろう人が獣に剣のような物を立てている。
男の人だろうか…?
でも長い髪を後ろに束ねている。
きっと女の人だ。
顔はよく見えない。私は慌ててお礼を口にした
「あ、ありがとうございます!!!本当に助かりました!!す、凄いですね!!」
出した声は震えている上にとてつもなく上ずっり完全にテンパっている。まぁ仕方がないけれど。
するとその人はこっちに近づいたかと思うと、すぐ私の手を引っ張った。しかし、私は立ち上がったが生まれたての小鹿のように脚が震えていた。
「…」
私が立ち上がると、その人は何か言った様だがあまりに小さ過ぎて聞こえない。
「すみません、なんておっしゃってるのか…??聞こえなくって…」
恐る恐る聞いてみる。するとその人は
「まだ死んでない。逃げるよ」
「えっ」
するとその人は私の手を掴んだまま猛スピードで走り出す。
「うわうわうわぁああ!!」
怪物の前を横切ってエレベーターをとんでもないスピードで駆け上がる。
電気が入ってたかったはずのエレベーターは何故か動き出し、途中で何度も転びそうになった。
エレベーターを登って少し走ると景色が見えるが、その前は大きな自動ドアがある。
あそこを抜ければ外に出れる!
そう思ったのも束の間。さっき居たフロアからあの怪物が這い上がって来た。壁をつたってのぼっているようで、物凄い脚力だ。
でも感心している場合じゃない。
「あ、あの!!後ろから来ます!!」
私は手を引く彼女に大声で叫んだ。彼女はこちらを振り返らずに更にぎゅっと私の手を握った
絶対安心なんか出来ない状況なのは分かってる。怪物が私達に追いついたら容赦なく襲いかかって殺すだろう。次に襲いかかって来る時に彼女は獣に勝てるだろうか。
いや、勝てない。
私も彼女も丸腰だ。
私は死ぬのだろう顔も見た事がない彼女と一緒に。
けれども
だけれども
私の手を強く握ってくれているその背中は、
気のせいかもしれないが、こんな怪物すら薙ぎ倒してしまいそうな、そんな気がする。
私は彼女を
とても強い人のように
感じた、
安心した
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