第3話
『変態が現れた! リーチェの先制攻撃!』
「一刀両断、
ザシュ!?
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああっ!?」
『変態を倒した! ショウヤたちは20の経験値と変態の全財産を得た』
『変態が現れた! リーチェの先制攻撃!』
「煉獄の七連裂き!」
ザシュ×7!?
「あぎゃああああああああああああああああああああああああっ!?」
『変態を倒した! ショウヤたちは20の経験値と変態の全財産を得た』
『変態という名の紳士が現れた! リーチェの先制攻撃!』
「咲きほこれ暗黒の華!
ドドォーン!?
「うぎゃああああああああああああああああああああああああっ!?」
『変態という名の紳士を倒した! ショウヤたちは25の経験値と60ギルトを得た』
繰り返されるリーチェの必殺口上に変態の断末魔。
それに伴い降り注ぐ赤い雨。
それが俺の旅の道中に起きた出来事をそのまま表現したものだった。
次々と襲いかかってくる魔物(変態)を有無をいわさず派手な大技を使いリーチェが一掃し、ほぼ無双状態で俺は平原を進んでいく。
これぞ、作戦『リーチェにお任せ!』、だ!
って、いってる場合か。
俺の(拾った)ひの木の棒の出番はいつになったらくるんだよ!
もひとつついでにいっておく!
大層な技名叫んで繰り出されるリーチェの必殺技だけど、あれ全部巨大なカッターから繰り出されているからな‼
そこのところは忘れるなよ!
「というか……」
「うん、どうしたのショウ? そんな不満そうな顔して?」
「いい加減ス●イムとかド●キーとか初心者が戦うような最初の肝門的な魔物を出せよ! なんで道行く敵すべてがホモ系統で固定されてんだよ!」
「仕方ないよぉ~。ここらはあいつらの縄張りなんだから。むしろ『パンツ被り魔』や『俺の●●●をしゃぶれ』がエンカウントしないだけ運が良い方だよ」
「まだ種類がいるのか変態シリーズ。変態という名の紳士だけで既にお腹いっぱいだわ……」
旅立ちの拠点にいる奴らが対峙する魔物じゃねぇだろ。
っか、レベルが上がったとしても絶対あいつらとは戦いたくない!
「うん? さっきから経験値を得たとかなんとかいっているけど、なんだレベルアップでもするのか? そもそもどこから聞こえてくる声なんだあれ?」
なんとなくでスルーしていたけど、ふと疑問に思いリーチェに尋ねる。
「ショウ知らないの? じゃあこの私が説明してあげよ――」
『前科37犯の男が現れた! リーチェの先制攻撃!』
「光をも呑み込む闇の剣!
ズバッ!?
「ぷぎゃああああああああああああああああああああああああっ!?」
『前科37犯の男を倒した! ショウヤたちは32の経験値と50ギルトを得た』
「この私が教えてあげましょう」
「すげぇ、何事もなかったかのように会話を再開しやがったぞ」
『パパパパーン! レベルが上がったよ。レベルが上がったよ』
「んっ? なんだこの声?」
こんなパターンさっきまではなかったぞ。
「ちょうどショウもレベルアップしたところだし、ついでに教えちゃうよ。ショウ、スマホを出して」
「スマホ? そんなもんこの世界にあるのか?」
いいながらポケットを漁る。
……あったし。
中から俺の愛用していたスマホ(アップル8)がご登場。
実に半日振りの再会だ。
てか待てよ、俺はいままでこれをずっとポケットに放置していたのか!
「よく気づかなかったな、おいっ!」
自分の才能にびっくりだわ。
「うわっ、どうしたのショウ。そんなおっきな声出して」
「あぁ、わりぃ。ちょっと己の鈍感さを嘆いていたところだ。もう続けていいぞ」
「……? ショウがそういうなら続けるけど。このスマホにはね最初から冒険者ナビゲーション機能っていうものが付いていて、持ち主が魔物と戦う際に逐一状況を解説したり、入手したアイテムや経験値なんかを音声で案内してくれるんだよ」
「あの声はこいつから発信されていたのか!」
ちなみになぜこのファンタジー世界にスマホなんてツッコミはなしだ!
変態が大量発生している時点で、もはやここは常識外なファンタジー世界なんだ、 と受け入れる体制で臨んだ方が賢明なんだと悟った。
「ちなみに持ち主の経験値が一定以上溜まってレベルアップするとさっきみたいな特別な音声が流れるんだよ」
「特別な音声って……レベルが上がるたびにあの朝の目覚ましみたいな音声が流れるのはなんかイラっとくるな」
「それなら、レベルアップの音声を変更すれば?」
「カスタマイズできるのか⁉︎」
「設定のところにあるレベルアップ音声の変更をタップしてみて。そうすると下の欄にサンプル音がいっぱい出てくるから、自分のお好みの音声を選ぶだけだよ」
「へぇ〜色々あるんだな」
せっかくなので一番上にあった『向上心』という欄をタップしてみる。
予想通りというか、スマホの機能通りというのか。
設定を変更する前に試しで音声が流れてくる。
『ふはははは、レベルアップだ! だが、貴様はその程度で満足か? いまの貴様はゴミクズからクズに昇格した程度。俺様の領域に到達するまでには程遠い!』
「やる気無くすわ! なんだよこれ! 何様のつもりなんだこのスマホは‼」
「それ、M向けだよ」
「そんなコアなもんサンプル音の一番上の欄に入れるなよ!」
普通そういのは下の方に置くのが常識だろ!
「なんか、こう目覚まし以外でマシなやつはないのかよ」
タイトルだけではどんなのだか想像もつかないため、上から順番に聴いていく。
『ふふふ、レベルアップね。でもまだ私を悦ばせるには力不足のようね。ほぉら、もっと私を悦ばせるために経験値を稼いでみなさいっ、ビタンッ!』
『お兄ちゃん、レベルアップだよ。あのね、わたし、お兄ちゃんが強くなってくれるのすっごく嬉しいの! だからもっと一生懸命経験値を稼いでね』
『あぁんら、レベルアップね、うふふ。もうちょっとしたらあたし好みの良い男に育ってくれるかしら♡』
「だからマニアックすぎるわ!」
レベルアップの音声聴くだけでその人の性癖がわかるとか、どんな羞恥プレイだよ‼︎
「もうシンプルでいいから、なんかないのか?」
「私はこんなのを使ってるよ」
そういってリーチェが自らのレベルアップに使用している音声を流してくれる。
『レベルアップ、レベルアップ! 魔物討伐によりレベルアップ達成。至急ステータス画面を確認せよ』
「なぜにお店の業務放送みたいなやつ?」
「面白いから?」
もういいや……諦めて目覚ましにしておこう。
「あとスマホには自分の現在のステータスを確認する機能もついてるから、レベルアップするたびにどのくらい能力がアップしたのかとか確かめるといいよ」
「へぇ、スマホで自分のステータスが確認できるのか。それは便利だな」
早速俺は画面を操作して自分のステータスを表示する。
名前:有原晶也
レベル:2
職業:勇者
攻撃力:13
防御力:11
素早さ:12
知力:32
運の良さ:10
ツッコミ:46
習得スキル:なし
習得魔法:なし
なんか一項目だけおかしなものが混ざっているけど、スルーしておこうか。
それを抜きにして、まぁ初心者なら妥当なステータスだな。
職業の欄にきちんと勇者って書かれてるからリーチェにだけは見られないように気をつけないとな。
「ショウはどのくらいのレベルなの?」
「うわぁー!」
「きゃあ、いきなり叫んでどうしたの?」
注意した矢先に、リーチェが俺のスマホを覗こうとしていたためみっともない奇声をあげてしまった。
「い、いや、変な虫が目の前に現れて驚いただけだ」
「そうなんだ。ショウって以外と繊細なんだね」
「あはは、そうかもな」
とにかく話の矛先を俺のステータスから逸らさないと……。
「それよりも他の機能とかってなんかないのか?」
「あとはいままで入手した経験値の合計を確認できるのと、習得可能なスキルや魔法をナビゲートしてくれるくらいかなぁ?」
「ひとつ疑問に思ったんだけど、経験値っていうけど、具体的にどういう仕組みで俺たちは強くなっているんだ?」
「う〜ん、私もよく知らないんだけど、偉い学者さんがいうには、魔物を倒すと浄土へと消化した魂の一部が力となって人間の体内に宿るとかなんとかで、それが一定以上溜まると人間として新しいステージに昇れるらしいよ。それを人が見えるようなものとして数値化したのが経験値って話だよ」
要は解明不能なエネルギーってことか。
まぁ、なんにせよ魔物を倒すだけで自然と強くなれるんだから、理屈なんて追い求める必要はないか。
「ショウ! 村が見えてきたよ! 早くいこっーー」
『なんだかよくわからない変態が現れた! リーチェの先制攻撃!』
「闇より出でし冥府の雷!
「ぎびゃあああああああああああああっ⁉︎」
『なんだかよくわからない変態を倒した! ショウヤたちは36の経験値と20ギルドを得た』
「さぁ、早くいこっ、ショウ!」
「だから何事もなかったかのように再開するなっ、て!」
そういえば全然気にしなかったけど。
俺のスマホ、いつの間にかこの世界用に改造されてないか?
なんか知らないアプリとか大量にインストールされてる……。
一体誰の仕業なんだか。
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