ティーカップ

@10-

夜、そしていつもの日常

ふと、視線を斜め上に向け下駄箱の上を見る。

そこにティーカップがティーバックの入った状態で放置されている。

食堂では使われていない、白い磁器のカップである。

不思議に思いながらもそこに手を伸ばすこともせず下駄箱の前を通り過ぎる。

深夜の出来事であったため深く考えずに、ベッドにもぐりこみ天井を見上げる。

疲れている体には夜というのは一瞬で過ぎていくものである。


いつも通り、目覚ましの音で重い瞼をやっとの思いであけ食堂へ向かう。また寝ようとする体を起こそうと、体にカフェインを入れようとカップを手に取る。毎朝カップについては意識しないのだが、今日はなぜだか気になって手元を眺める。手元にはカップはあるのだが何かが違う。そんな気がした。今日も昨日と同じ、加熱してしばらくたったであろう食パンとみそ汁を取って、先に朝食をとっていた友人の正面に腰を下ろす。

「今日から、飲み物を入れるカップって変わったのか?」

とバターを塗りながら話しかける

「そんなことはないと思うぜ。そんなことより、朝にみそ汁しか置かないのセンスがないよな。パン食にはスープだろ。みそ汁なんてあうわけがないだろう。」

どうやら友人はみそ汁が気に食わないようだ。確かに食パンにみそ汁はあわないと思いながら腹に朝食を押し込む。時計を見て少し急ぎながらカップを所定の位置に置く。

「割れやすいカップを食堂で使うなよ」

そう愚痴りながら食堂をあとにする。


午前の授業を終え、食堂へまた向かう。

配膳を待つ長い列の後ろにつき、順番を待つ。昼の食堂というのは、人の多さに酔って食欲がなくなるのがいつものことである。腹は減っているというのに。

配膳された飯を取り、スープを椀に注ぐ。朝の友人の言葉を思い出しながらその友人の隣に座る。友人は食べるのが速いので置いて行かれるのではあるが。


授業というのは眠いものである。我慢というのは体に悪い。そう言い聞かせながら眠りにつく。


首を回しながら伸びをする。机で寝るのは体力がいる、やはり学校というのは疲れるのである。帰るのが面倒くさい。下駄箱に靴を押し込み、自室に戻る。友人が少ないのも面倒くささを冗長しているのではないだろうか、そう問題提起して荷物を置き、食堂へ夕食をとりに行く。


昼食と違って夕食というのはすいている。山盛りの白米をよそって、食堂の端で手を合わせる。白米の甘みを感じながら腹を満たす。

食堂を出たらあとはルーティーンワークである。

風呂に入り、授業の課題をし、眠くなるまで作業をする。大体は課題をするだけで時間は無くなるのではあるが。


眠気に耐えながら課題をこなす。普段から深夜まで作業をしているのだが課題をしていると眠くなってしまうのである。眠気を覚ますために重い腰を上げる。下駄箱の前を通り自販機の前に行きカフェインを手に入れる。


昨日と同じ時間だろうか、ふと視線を斜め上に向け下駄箱の上を見る。

やはり、そこにティーカップがティーバックの入った状態で放置されている。

「誰も気づいていないのか」そっと呟いて自室に戻る。


また、目覚ましの音で目を覚まし食堂へ向かう。眠気を覚ますためにカップを手に取ろうとする。

そこには、プラスチックの黄色いカップが

所狭しと並んでいる。


そしてまた一日が始まる。

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