01-3 ヒアリング

「まぁ、落ち着けって。すまねぇな、ちょっとうるさいのが出てきて」と中野所長が申しわけなさそうな顔をする。

「いえ。簡単でよいので事象が起きたときの状況を教えてもらえますか」と赤坂さんが口に出すと、睨むように顔をしかめた明夫さんは事象発生当時の状況を語ってくれた。


***


 ・いつも使っている製造ラインのコンピューターの調子が午後になっておかしくなった。

 ・午前中はいつもどおりでなんともなかった。

 ・モニターで見る画面はいつもどおりで、不審な感じはしなかったが、製造で使っているソフトはうんともすんとも言わず固まっているようだった。

 ・単にエラーかなにかで止まっているのだと思い、再度ソフトを立ち上げようとしたが立ち上がってこなかった。

 ・しばらくして、モニターに見たことない画面が表示されて、上長と所長に連絡した。

 ・コンピューターが使えないと製造ラインの制御ができないので、稼働ができない。ライン自体は安全装置が働いたおかげで今は止まっているため、従業員への危険性はない。

 ・6月の納期前で早急に復旧して製品を作る必要がある。

 ・コンピューターに詳しくないから、工場内のコンピューターがどういう感じで繋がってるかはわからない。


***


 一通り状況を聞いたところで赤坂さんがそっと耳打ちする。

「何にせよ、現物確認して被害範囲含めて判断が必要そうだな。俺が中野所長と秘密保持などの契約回りを進めておくから綾瀬は現場確認頼む」

「わかりました!」


 と、勢いよく返事したものの、実際に単独で対応したことないのを思い出した。

 内心ドッキドキで、私の初陣の火蓋は切って落とされたのだ。






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