01-2 インシデントも突然に

「先程お電話で一報いただいたCIA、赤坂です。所長の中野さんはいらっしゃいますか」


「雨の中、来てくれてすまないね。私が所長の中野だ。さあ、入って」

 と作業服に身を包んだ恰幅のよい中年の男性に言われて、今回のお客さんである中野工業の工場内の一角にある事務所に入る。

 赤坂さんに同行してたどり着いたのは、オフィスから山手線で半周ほどした上野駅に近い町工場。下町の町工場が密集している地域で、高熱の製品を扱っている会社もあるのだろうか、蒸気が勢いよく上がっているところもある。


 事務所内の来客スペースに案内されて、赤坂さんと私が横並びになって中野所長と対峙する。


「早速、状況から確認したいのですが」と、赤坂さんが啖呵たんかを切る。

「とりあえず、おたくの京ちゃんから指示されたLANケーブルの線抜きはやった。電源はそのまま入った状態にしてある。実際にその場にいた現場の者を1人同席しさせたいので、ちょっと待ってくれ。おーい、明夫。ちょっと来てくれ」

 京ちゃん?え、リーダーとどういう関係なの??と驚いたものの、顔には出さないようにしつつ待っていると、金髪でいかにも「アンチャン」風の若い人が姿を現した。

 開口一番、私は面喰う。


 「どうなってるんだよ!これじゃあ仕事になんねぇんだよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る