しあわせも運びたい
HaやCa
第1話
ちょっとしたことで喧嘩になって、そっぽを向いてしまう。それが悪い癖だ。
「はぁ」
ため息は知らずに落ち、歩道橋のタラップを駆け上る。見上げる欄干にあの子の後ろ姿が見えた。わたしは視線を下ろすと、呼吸を整える。これから謝りに行くのだ。
「大丈夫! ごめんなさいって言えばいいだけ! 言ったら秒で帰る!」
バシバシ頬を叩くわたしを、歩行者は訝しい目で見ている。こんな野暮な目はちっとも気にならないのに、いつもあの子の言葉や視線に嫉妬している。
いつからこんなバカになったのだろう。階段を一歩一歩踏みしめ考えた。答えなんて一生出ないと思っていたのに、計算違いだったのか、わたしは階段を上り切ったその先でそれを知った。
「どしたの? 驚いた顔して? あたしがいること知ってて来たんじゃないの?」
「そうだけど……」
歯切れの悪い言葉に、あの子は呆れた声をかけてきた。
「黙ってるんなら帰るよ」
「待って! あぁ、その……」
背を向けたあの子の足が止まる。その短い髪が優しく映る。
けれど、それは目の錯覚だったのかもしれない。ただあの子が許してくれる、と信じたかった。
「結局何がいいたいの? 言わなきゃわからない。もういいよ、じゃあね」
スニーカーが地面をたたいている、その音はひどく強がっていた。
しあわせも運びたい HaやCa @aiueoaiueo0098
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます