課題1 おっぱいを揉め
「化け物じゃねぇ、俺は疫病神だ」
疫病神は化け物らしい声の低さで述べ、不気味に微笑んだ
「や、疫病神?」
僕は目の前にいる見慣れない化け物に、まだ驚きを隠せないでいた。こういうのはアニメや漫画でしかないと思っていたのに、今それが現実になっている
夢じゃないよね?てかなんで僕の前に?
僕はお尻を片手で抑えながら立ち上がった。
「そうだ、今日から俺はお前に取り憑くことになったわけだ」
「取り憑くって...なんで急に?」
「ぐへへ、お前は夏川 有紗にまんまとハメられたんだよ」
疫病神が気色悪い笑い方をした。
「は、ハメられた?なんでそーなるの?」
僕は疫病神の言うことをまるで理解出来なかった。
「お前手紙貰って告られると思ってここにきただろ?」
僕は渋々頷いた。
「夏川は別にお前のことを好きでキスをしたんじゃない、ただ俺をお前になすりつけるためにしたことなんだよ」
「な...」
僕は開いた口が塞がらなかった。
浮かれていた分、かなりショックを受けた。当然だ、夏川さんはてっきり僕のことが好きでここに呼び出したのかと思っていた。でも違った。なんらかの理由で僕をはめたのだ。おそらくその理由はこの疫病神が言う『僕に疫病神をなすりつけるため』だろう。
「ショックか?ぐへへ、愉快愉快、俺は人が不幸のどん底に落ちた顔が三度の飯より好きでね」
「そんな...」
僕は膝から崩れ落ち、片手で地面を叩いた。
涙が勝手にこぼれ始め、地面のアスファルトに落ち染みができる。
「んじゃ、説明するから聞け」
僕は疫病神の言葉に返事をせず、ただずっと泣いていた。
「さっきも言ったが俺は疫病神、人の不幸が大好きでね、毎日1つお前に課題を与える」
「か、課題?」
俺は頬に涙を流しながらも、顔を上げた。
「ああ、お前にとっては苦しい課題だろう。なぜなら俺はそいつにとって無理難題の課題を出すからな、ちなみに夏川の場合は羞恥系が多かったな」
「羞恥系?」
そう言えばこの疫病神は元々は夏川さんにとりついていたんだ。ということは、夏川さんは今までこの疫病神と一緒で、その課題とやらを実行していたことになる。
「ああそうだ、思い出してみろ、この2週間くらい夏川は時に変な行動をしていただろ?」
僕は思い出してみた。確かにここ最近夏川さんはたまに妙な行動を取っていた。例えば昨日授業中、夏川さんはいきなり手を挙げ立ち上がり「先生、おしっこ行ってきます」と大声で言ったのだ。さすがにあの時はクラスのみんながドン引きしていたのを覚えている。僕はドン引きとまでとは行かなかったけど、少し心配になった。
他にもいろいろあったが、思い出すのがなんだか嫌になり僕はやめた。
「っでその課題だが、どんなに難しくても1日以内にクリアしないとダメだ」
「1日以内にクリアしなかったら?」
「死ぬ」
「えっ?」
僕は思わず間抜けな声を漏らした。まさか急にそんな怖いことを言うとは思わなかったからだ。
「あと、俺のことを誰かに言っても死ぬ」
正体をバラしてはいけないのか。
「疫病神を追い払う方法は?」
それが一番気になった。人生このままずっと疫病神と共に過ごすことになったら...考えただけでも最悪だった。
「1ヶ月たったら俺は自然とお前の前から消える、まぁでも1ヶ月耐えたやつは今まで誰1人といなかったがな、ぐへへ」
「ひ、1人も!?」
1人も1ヶ月耐えることができなかった疫病神の課題はどんなに辛いのか。僕はかなり不安になってきた。
「それか誰かになすりつけろ、夏川がお前にしたようにな」
夏川さんが僕に疫病神を押し付けたことは、少し悲しかった。
「でもなすりつけるってどうやって?」
「思い出してみろ、夏川はお前に何をした?」
僕は屋上に来てからの記憶を思い出した。そして1つだけ納得出来る夏川さんが僕にした行動はあった。でもそれを僕が出来るかというと、多分無理だ。
「き、キス?」
「その通りだ、でもただのキスじゃだめだ、条件がある。それはなすりつける相手が自分のことを恋愛の意味で好きでないといけない、その上でキスをすると相手に俺をなすりつけることができる」
え、まって...それって夏川さんも誰かから疫病神をなすりつけられたんだよね?つまり夏川さんにも好きな人がいてその人が夏川さんに疫病神を...
ああ...
僕はもう既に失恋した気分だった。夏川さんにも好きな人がいたなんて...でも誰なんだろう。一瞬夏川さんの気持ちを利用したその男に腹を立てたが、僕が怒ることではないと思った。
夏川さんも今の僕と同じ気持ちを味わったのだろうか...もしかしたら夏川さんを騙した男も...
ずっとずっとこれが続いてきたというのか。
でももしかしたらこの連鎖を僕は止めれるかもしれないと思った。
なぜなら僕を好きな女子なんて絶対いないと思ったからだ。こんなチビで臆病で頼りない男を誰が好むだろう。
夏川さんも結局僕のことを好きではなかったし、疫病神を僕に擦り付けてきた。
でも夏川さんはさっき疫病神が言うように、2週間は課題をクリアし続けてきて、それでも1ヶ月もたなかったということは、それほど課題が鬼畜だったのだろうか。それとも途中で僕が夏川さんのことが好きということを知り、すぐに擦り付けてきたのか。
てか、どっちにしろ慎二の言う通り、夏川さんは僕が好きだということを知っていたということになる。
なんだかそれに恥ずかしさを覚えた。
あとこれで、夏川さんのさっきの謎の謝罪と涙の意味も説明できる。夏川さん自身悪いことをしたと自覚していたのだ。
よし、これで夏川さんの分からなかった言動は解決した。いや、もうひとつあった。
「まって、なんで夏川さんはキスをした後、記憶が飛んだの?」
夏川さんは僕にキスをした後、僕を屋上に呼び出したことや、キスをしていたことも忘れていたようだった。
「そりゃあ俺のこと覚えられていたら困るからな、1ヶ月経った後と、俺を擦り付けた後は俺に関する記憶を全て消している、課題に関してはその行動を取ったことは覚えているが、なぜそんなことをしたのかは覚えていないってことだ」
なるほど、これで納得だ。
「確認だけど、疫病神はほかの人には見えてないんだよね?」
僕は夏川さんからキスをされる前、この疫病神を見えなかったので多分そうだ。
「ああ、それは安心しろ姿、声ともお前以外には聞こえない。」
「他にも聞きたいことはあるんだけど、もし僕が課題に1ヶ月耐えたとしたら疫病神はどうなるの?」
さっきは僕の前から姿を消すと言っていたが、具体的にどうなるのか気になった。
「俺が死ぬことになる、まあ俺はもともと死んでんだけど完全に魂引っこ抜かれて消えてなくなる」
まだ、たくさん気になることはある。こういうのは完全に知っておかないも気が収まらない口だ。
「今まで疫病神は何人にとりついてきたの?」
「そんなの数え切れねーよ、江戸時代くらいから疫病神してるからな、あとちなみにお前が課題をクリア出来なかった、又は俺のことを誰かに話して死んだ時はお前が代わりに疫病神になる、姿も豹変してな、疫病神はこうやって引き継ぎられてきたんだ」
死んだら疫病神...?
それに江戸時代から疫病神してるってことは、みんな1ヶ月耐えることはなく、好きな人に擦り付けてきたってことだ。
でも僕はそれをしたくてもできない。必ず1ヶ月間耐えて、この疫病神の歴史に終止符をうってやる。
「んじゃ早速お前に初の課題を与える」
僕は思わずつばを飲み込んだ。
「女子のおっぱいを揉んでこい」
「...」
えええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!
チャイムがなり、1時間目の授業は終わった。
授業中考えていたが、疫病神はその人にとっての無理難題の課題を出すといった。夏川さんの場合は羞恥、僕の場合はハレンチなことだった。
僕は別に性というものに興味がないわけではない。ただほかの男子より積極性がなくチキンなのだ。つまり世間一般で言われる草食系男子というわけだ。現に僕は夏川さんが好きでも告白する勇気はなかった。
それでも疫病神の課題『女子のおっぱいを揉め』はやりすぎだと思った。しかも制限時間は今日の午前0時。
僕に積極性があるにせよ犯罪じゃないか、セクハラだ。どっちみちクリアしたらしたで社会的に死んでしまう。僕の場合これは、社会的に死ぬか、身体的に死ぬかの2つを選ぶようなものだった。
「無理でしょ...」
「何が無理なんだよ」
僕は反射的に後ろを振り向いた。そこには壁にもたれてかかって紙パックのコーヒーをストローですする無表情の明久 慎二がいた。
「い、いつの間に!?」
つい心の声が漏れてしまって慎二に聞かれてしまった。
「いや、ずっといたけど、てか1時間目は遅れきたけど何してたんだ?しかも何故か夏川は先帰ってくるし」
慎二の言う通り、僕は疫病神との話の夢中でチャイムがなったことに気づかなくて遅刻してしまった。遅れて教室に入った時は、夏川さんと目が合ったが彼女は別になにかあったわけでもなさそうな普通の顔だった。そりゃあそうだ、記憶がないのだから。
「加世堂 真人、わかってるな?俺のことを話すとすぐここで死ぬことになる」
慎二の右横には疫病神がいた。さっき人が疫病神にぶつかりそうになったが透けて通っていった。
こうして2人が横に並んでいるとさすがに違和感がある。
体はもちろん疫病神の方がでかい。
「わかってるよ」
僕は思わず疫病神に言葉を返してしまった。
「なにがわかってんだよ」
慎二の質問に食い違う答え方をした感じになって、慎二は不審がっていそうだった。無表情と抑揚のない声のせいで正確にそうかはわからないが。
「あーなんでもないなんでもない、気にしないで、ね?ね?それよりなんだっけ?あーそうそう、ちょっと色々あってね」
やばい
完全に動揺を隠しきれていなかった、僕の悪い癖だ。
疫病神の顔もかなり引きつっていた。
「お前なんか隠して...」
「ふたりともぉぉぉ!!!そこでなんの話してるの!?」
慎二の言葉を遮って大きな声でこちらにやってきたのは、クラスメイトかつ同じ読書部の朝倉 結花(あさくら ゆいか)だった。
「あっ、朝倉さんおはよう、別に大した話してないよ」
よかった、あの慎二の言いかけた言葉を遮ってくれて助かった。完全に慎二は怪しんでいた。
「朝倉、お前制服反対だぞ」
「えっ!?」
慎二の無愛想な指摘に、朝倉さんは瞬時に自分の上半身を見回した。
制服が反対ってことが分かると、朝倉さんの頬は髪色に似て赤く染まった。髪色は赤色というわけではないが、明るめのオレンジといったところだ。髪型はふさふさとしている。
「あっほんとだ!恥ずかし!しんちゃんありがと〜」
朝倉さんは恥ずかしさで笑いながら、ブレザーを着直した。
朝倉さんはかなりの天然だった。
制服が反対なのも今日に限ってではない。
男子からして天然という女子のステータスは最高らしい。美少女に限るらしいが、朝倉さんは結構クラスの男子からは人気だ。最高ステータスである天然、身長も低くて可愛い、そして男子から人気である理由のもう1つ、朝倉さんは身長に似合わず巨乳だった。
なんでも、天然と巨乳が合体した時、もうすごいことになるらしい。
っとクラスの男子が話しているのを僕は耳にしたことがある。
っ!?
巨乳と言えば思い出した。僕には課題があった、『女子のおっぱいを揉め』という。
僕は思わず席に座りながら、目の前の巨乳をガン見してしまった。
「ちょ、ちょっと...真人...どこみてるの?」
朝倉さんは赤面になりながら両手で自分の体を隠すようにして、体を捻った。
「あ、ちがっ...これはそのー、変な意味はないんだよ?」
やばい、ついガン見してしまった。
「じゃあどういう意味?」
朝倉さんは赤くなりながらムスッとする。
「研究してたというか...」
やばい、僕は何を言ってるんだ。
「研究!?真人って大人しそうな顔しといて意外とむっつりスケベなんだね」
「いや違うよ!僕は最近本気で研究してるんだ!」
何故か自分でもよく分からない単語が口から出てしまった。
おっぱいを研究って...
完全に僕はやばいやつになっている。
いや、まてよ?もしかしたらこのままうまい具合に朝倉さんのおっぱいを研究させてもらって揉めるんじゃないだろうか。
そもそも揉んでいいのか?いやダメに決まっている、セクハラだ。でもそうしないと僕は疫病神に殺されてしまう。
「え、ちょっと真人、本気でどうしたの?」
完全に朝倉さんはひいていた。
当たり前だ、おっぱいを本気で研究してるなんて言われたらひくにきまっている。
でもここでひいていいのか?僕のおっぱいへの熱情を語ったら揉ませてくれるかもしれない。いや、本当はおっぱいに熱情なんて感じていないのだけれど、これは生きるための試練なのだ。
僕は前に進むことを決めた。
「実は最近人間の身体について興味を持ち始めたんだ。体はどういう構造、なにからできているのか調べるようになってね。将来は人間の身体についての専門家になろうとも考えているんだ。だから朝倉さん、僕の夢への第1歩として協力してくれないか!」
僕は必死に嘘の夢を語り、朝倉さんの両肩に手を置いた。
「え、ちょっ」
肩に手を置かれたのが恥ずかしいのか朝倉さんはまた頬を赤らめた。
僕は必死さを伝えるため真剣な眼差しで朝倉さんを見つめた。
「そ、そんなに見つめないでよ...てか本気なの?人間の体に興味持ち始めたって」
「本気だよ」
「でも真人文系じゃない、生物の授業とか取ってないでしょ?」
しまった、僕は文系だった。いや、まだいける
「言ったでしょ?最近興味を持ち始めたって、だからお願い、力を貸してくれないか」
「ねぇしんちゃん、真人どうしたの?」
朝倉さんが慎二に助け舟を求めた。
「知らん」
慎二はストローでコーヒーを啜りながら、相変わらずのトーンで言った。
「ぐ、具体的にはどうすればいいの?」
「ここでは言えない」
「言えないってなに!?怖いよ!?」
朝倉さんの声が大きくなり不安気な顔を見せた。
慎二とは違い表情変化は豊かだった。
「とりあえず部活で詳しく話すよ」
そこでチャイムがなって話は終わった。
強引だったけど、なんとかこの課題はいけるかもしれない。何故だかそんな自信が湧いたきた。
放課後になり、僕と朝倉さん二人で読書部の部室に向かった。いや、正確にはもう1人、人と数えていいのか分からないが疫病神もついてきている。
慎二は部活に入っておらず、そのまま家に帰った。
そのまま歩いていると、いつの間にか隣に朝倉さんがいないことに気づいた。
「あれ?ちょ...」
僕は後ろを向くと、理科室と書かれた教室のドアを開けようとしていた。
「朝倉さん!そこ理科室だよ!部室はこっちこっち」
僕が呼びかけると、朝倉さんは『え?』みたいな顔をして理科室だということが本人もわかると、顔が赤くなった。
「えへへ、間違えちゃった」
朝倉さんは照れるように笑った。
「朝倉さん、相変わらず天然だなぁ〜」
部室の前に着くと、僕はドアを横に音を立てながら開けた。
「まだ誰も来てないね」
朝倉さんが僕の脇の下から部室の中を覗いた。
「そうみたいだね」
これはチャンスだった。2人だけなら課題をクリアしやすいからだ。
ちなみにあと部員は3人いた。1人は同期で残りふたりは、2年生と3年生だった。
僕達は部室に入り電気をつけると、朝倉さんが先に真ん中の椅子に座った。
中央には長方形の机があり、それを囲むように周りに椅子が並べられている。
僕は朝倉さんの横に座った。
いつもは朝倉さんの横には座らないのだが、今日は特別だ。
それで朝倉さんは少し動揺しているようだった。クーラーはついているがまだ暑いのか顔は少し赤い。
「あっこれ前貸してくれた本、ありがとうね、主人公渚の推理がすごくて面白かった!」
朝倉さんは鞄から1冊の本を取り出し、僕に返した。
「でしょ!?僕も渚の推理力に魅了されちゃってさ、次また面白い本持ってくるよ」
「うん!ありがと!」
それから数分間、僕達はなにも話さずただ読書をしていた。
ちなみに今疫病神は部屋の隅っこに座り夕焼けに黄昏ていた。
僕は読書と言ったが、実は読むふりをしているだけでずっとどうやっておっぱいの話を持ち出すか考えていた。
早くしないと他の部員が来てしまう。
「あの、朝倉さん」
「ん?どうしたの?」
朝倉さんはこっちを見ず、読書に夢中になりながら応えた。
「今朝話した研究のことなんだけど」
それを聞くと、ピクっと朝倉さんが動いたのがわかった。
「あ、あーそれねそれね!っで...なんの研究だっけ」
明らかに朝倉さんが動揺しているのがわかった。きっと本当は分かっているのだろう。
「か、身体について」
「そう!身体ね身体!っで私はど、どーすればいいのかな?」
朝倉さんが本を閉じ、顔はこっちを向いているが、目は泳いでいた。
「そ、そのー...お、お、お、お、お...」
「お、お?」
「お、お、お、お、おぱおぱおっおっおっ...」
「おぱおぱ?」
「お、おっぱ、おっぱいを...揉ませてくれませんか...」
人生で一番恥ずかしかった。顔中が火で焼かれてる感覚に陥った。
それは僕だけではないようで、朝倉さんも目を見開き、かなり紅潮していた。
朝倉さんは数秒間そのまんまだった。
沈黙が続く度に、僕の心臓が矢で貫かれそうだった。
「ま、真人って...その...やっぱりエッチなんだね...」
朝倉さんが目を逸らして赤面のまま言った。
「ち、違うよ!さっきも言ったけどこれは研究で!」
「嘘だよ!そんな研究絶対嘘だ!私のおっぱい揉みたいからそう言ってるだけだよね!?」
朝倉さんは怒って顔は赤いが、それは恥ずかしさによるものだった。
「違う!これはちゃんとした身体についての研究で!」
僕は必死に下心がないのを伝えようとした。
朝倉さんが好きな男でもないやつに、おっぱいを揉まれるなど嫌なのは分かっているつもりだ、申し訳ないと本気で思っている。
「じゃあちゃんと説明してよ、おっぱいを揉むことがどんな研究か」
やばい、それはなにも考えてなかった。早く答えないと下心があると思われてしまう。はやく!なんか、なんかないか!
「乳がん...そう乳がん!僕は普通のおっぱいを揉むことによりシコリがないおっぱいがどんなものか知りたいんだ。こんなことを頼めるのは朝倉さん、君にしかいないんだ」
言ってることはめちゃくちゃだと自分でも分かっているが、これしか思いつかなかった。
あと実際にこんなことを頼める、いや朝倉さんにも頼むのはかなり恥ずかしかったが一番女子の中で仲がいいのは朝倉さんだ。
夏川さんとはほとんど喋ったことはない。
朝倉さんはずっと顔を赤くして目をそらしている。
「つ、つつくだけ...それならいいよ?」
朝倉さんは拳の内側を口元に当てながら言った。
つつく?それってありなの?課題では『女子のおっぱいを揉む』だ。つつくはどうなんだろ?
僕は隅っこに座る疫病神を見た。
「つつくのはだめだ。しっかりと揉まなきゃ課題クリアにはなれない」
疫病神は黄昏ながらそういった。
やっぱりそうだよね、そんな甘くないと分かっていたよ。
「だ、ダメだ、つついてもシコリはわからないよ。一瞬、一瞬でいいんだ、片手でする!だから揉むませてくれないかな?」
朝倉さんは黙り込み考えた。
そしてやがてゆっくりと頷いた。
「ほ、ほんとに!?ほんとに揉ませてくれるの!?」
僕は舞い上がってしまい立ち上がった。
「うん...ほんとに一瞬だけだからね?」
朝倉さんは力強く目を瞑った。
緊張しているのが分かる。もちろん僕も緊張している。
女子のおっぱい、しかも巨乳を揉むなんて初めてだ。
僕はもう一度椅子に座り、片手を広げ、それをゆっくりと朝倉さんの右胸に近づける。
「は、はやく...」
「う、うん」
ごめん、ごめんよ朝倉さん、これも生きるための課題、疫病神を消すために必要なことなんだ。
そして、右手がついに朝倉の胸に触れた。
「ひゃっ」
朝倉さんは小さな悲鳴をあげた。
「あっごめん!大丈夫?」
僕は胸に右手を添えながら謝った。
「う、うん、いいからはやく...」
僕はコクっと頷き、朝倉さんの右胸を鷲掴みにしていく。
う、うわわわわわ、なんだこれ...こ、こんなにも柔らかいの?
まるでそう、空気を揉んでいるかのような、それくらい柔らかかった。
その時だった。
ガラガラという音が後ろの扉から聞こえてきた。
「ういーす、2人とも早いね...って...」
扉を開けたのは2年の先輩の神城 鶫(しんじょう つぐみ)さんだった。
神城先輩の手から鞄が落ちた。
僕は朝倉さんの胸を揉みながら、神城先輩と目があう。
「せ、先輩違います、これは研究で...」
「て、てめぇ加世堂、そんな大人しい顔しといてなにしてんじゃぁぁぁぁ!!!」
神城先輩はこちらに走ってきて飛び蹴りをしてきた。
「だから違いますってばぁぁぁ!!!」
僕は盛大に神城先輩の飛び蹴りをくらい、椅子から吹っ飛んだ。
神城先輩は元女子空手部ということもあり、かなり強烈の一蹴りだった。
「ま、真人!大丈夫!?」
「いたたたたた...」
僕はしかめっ面で片手で頭を抱えながら、朝倉さんに心配の声をかける神城先輩を一瞥し、その後隅っこにいる疫病神を見た。
「加世堂 真人、課題1はクリアだ」
疫病神の顔は夕日の光で見えなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます