第987話 チビッ子編 👻 神社の猫さん(3)一夜明けて

 どのくらい経っただろうか。体を揺すられ、怜と直は目を覚ました。

 目の前には、制服を着た警察官がおり、自分達を覗き込んでいた。

「ああ、よかった」

 何だかよくわからなかったが、言う事は決まっている。

「おはようございます」

「おはよう。どこか痛くない?気持ち悪くない?名前を言えるかな?」

「御崎 怜です!」

「町田 直です!」

 それで警察官はにこにこしながら、肩の無線で連絡し、

「家に帰ろうか。寒かっただろう?家族が心配してるよ?」

と言った。

 立ち上がり、怜は後ろを振り返った。

「大丈夫。大きい猫さんが――あれ?」

 直も、キョロキョロとする。

 大きい猫も子猫も巫女もいない。

「巫女さんも大きい猫さんも子猫もどこに行っちゃったのかな?」

 警察官は表情をやや引き締めた。

「猫?巫女さんもいたの?」

 誘拐犯が、猫を連れた女だと考えているらしい。

「子猫に連れて来てもらったら、大きい猫さんと巫女さんがいたんだよ」

「お供えのお饅頭を皆で分けて食べたんだよね」

「うん。夜も、大きい猫さんと猫さんがいて、暖かかったもんね」

「ねえ」

 警察官達はヒソヒソと、

「誘拐犯?」

「でも、埃に残った足跡は幼児2人分しか……」

「巫女って誰だ?ここの巫女さんか?」

「ここはハイキングの人がたまに寄って行く程度の無人の神社だぞ。誰も常駐してないはずだ」

「じゃあ、なんだよ。ホームレスか?」

「……先輩に聞いた事があるぞ。明治の初め、ここで巫女さんとお腹の大きかった猫が、逃げ込んだ強盗犯に殺されたって」

「……」

「まさか……」

「いやいやいや。待てって。それじゃあ、巫女さんと大きい猫さんと子猫ってのは、幽霊だとでも?」

「……」

と言い合い、その辺を探し回る怜と直を見た。

「いないねえ。お礼とバイバイ、言いたかったのになあ」

「楽しかったねえ」

 そして、笑い合う。

 警察官は、頷き合った。

「取り敢えず、保護した幼児を署に連れて帰ろう」

「そうだな」

 そうして怜と直は、警察官に連れられて警察署に行き、駆け付けて来た家族と会った。



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